卯月のバスケ
卯月春香ー通称青いの。バスケ部ということとショートカット、馬鹿で小麦色の肌という理由でそう呼ばれるようになった。
弥生葉月ー通称黒いの。ただ、相方というだけで呼ばれるようになった。半年同盟で唯一のまとも……もとい普通の人間である。あと、卑屈設定など気にしない。
そんな二人のバスケット小話である。
それはある日の紅白試合のことである。
「まだ、負けていない。○○《ピー》ナイト・パス改!」
勢いよくボールが弾丸のように発射される。
「おいおい、同じ手が二度も通用するかよー。あまり失望させるなよ、葉月」
弾丸のようなパスは卯月の手に吸い込まれていった。卯月は手を見つめなてからベンチに戻ろうとする。ただゆっくりと遊び疲れた子供が帰っていくようにとぼとぼとベンチに向かう。
「おい!卯月、まだ練習中だぞ」
「わたしに勝てるのはわたしだけだ」
そう言い残し、顧問である下村の声など気にも留めず歩いていく。
「ちょっと待て、たしかにこの中じゃずば抜けてうまいが全国にはもっとうまいやつがいてだな」
顧問の説得に顔をしかめて少し考えてから「先生……」とつぶやいた。
その場にいる全員が息を飲む。
下村はおそるおそる「なんだ」と問いかける。
「突き指した。手、めっちゃ痛い」
「「へっ?」」
「だから、ボールさっき取った時に突き指した」
「はあ!?いやいやいや、そりゃああんな取り方したらしたらそうなるだろ。っていうか、なにさっきの『わたしに勝てるのはわたしだけ』だよ。思いっきり葉月のパスに負けてるじゃねぇか」
「わたしは別にボールに負けただけで葉月に負けたわけではないのだがね」
キメ顔でそういった。
「いや、なんでキメ顔なの。名誉の負傷とかじゃないからただの馬鹿なミスだから」
「まさか、トロイア戦争において大英雄の投てきさえ防いだアイアスを突き破るとは…まさか葉月が○○《ピー》・フーリンだったとは…」
「どこかくしてんだよ。伝説の槍の使い手が放送できない何かの使い手みたいじゃねえか。いいんだよ、キャラクター名じゃないから隠さなくても」
「なるほど!つまり、さっきの技名も隠さなくていいのか。だからさっきのやつも
ゲイー」
「いやそっちは隠せよ」
「先生、隠せとか隠すなとかさっきからなんですか。セクハラですか」
「違うわ!ああ、もうなんでこういう時に限ってのってくんだよ」
「ああ、そうですね。どうせ、わたし程度がボケにのっていい権利なんてないんですよ」
「嫌そうじゃなくて、お願いだからいきなりネガティブにならないで、高低差が激しすぎてついていけないから。その前に、卯月は保健室行ってこい!」
「ええ、もう痛くないよ」
「いいから行ってこい!」




