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小説コーナーで

 ということで、ついに最終地点である文芸・新書・文庫コーナー。いつも思うけど一番数が多そうなのにかためられてるんだよな。


 まあ、そんな話はどうでもいいんだけどね。


「そう言えばサクラは最初からここに来たいって言ってたよな。何買うの?」

 と、何気なく聞いてみた。


「えーっとねえ……『君がいるから』を全巻かな」


「いや待って、あれってものすごく古い本のわりに二十数巻あるやつだよね」


「そうだけどなにか?」


 なにか?じゃねえよ。どう考えてもお前が持てない重さだろ。パンケーキプレート六枚でヒーヒー言っ

てる人が持てる重さじゃないだろ。


 こいつ、俺に持たせる気だったな。


「というかその前に、なんでいまさらなんだよ。アニメのリメイクも去年だっただろ、しかも発売にいたっては俺らが生まれる前だぞ」


「いやあー、やっぱり流行ってる時に買って古参に『ミーハーが』と思われるのも嫌だし名前だけ知ってる人が『あの人流行りにのって本買うんだ』って思われるのもしゃくだし」


「……」

 いやわかるけど、別に誰も直接言ってこないでしょ。いきなり他人にそんなこと言いだすやつがいたらそれはやばいやつだから、気にしちゃダメなやつだから。


「そもそも、生駒先輩が持ってるじゃないか」


「いやいや、借りるのはちょっと……」


「大丈夫だって、今聞いてみたらいけるかもしれないよ。ねえ、生駒先輩」


「別に貸してもいいけど、全部初版だからコーヒーのシミ一滴でもつけたら殺すわよ。ねっ八伏」


 チラッと八伏先輩のほうを見る。


「はい、その節は大変申し訳ございませんでした」


 きれいな90度のお辞儀だった。


「それぐらいのことなんですか!」


「それぐらい?」


「いえっ、それは別に本に対してではなく決心がいるのかという話で、その」


「まあ、いいわ。そういうことにしておきましょう」


 怖い!怖すぎる。さっきから笑顔なのに目は笑ってないし声のトーンも落ち着きすぎてて怖い。


「買いましょうか」とさくらが言った。


「お荷物お持ちします」


 カゴに本を入れていく。


「あっ…」


「なに?」


「十三巻が欠けてる」


「ああ、本当だ」


「ちょっと下がって」


 「いいけど何するの?」と聞く前に本棚の下の棚に手をかける。


「いや、待って。それダメなやつだから」


「在庫確認は客の権利よ」


「いくら何でも横暴すぎる」


「黙れ、ナカポン」


「いきなり人を古いあだ名で呼ぶな。俺はそれが嫌いなんだ」


「そんなことどうでもいいから離しなさい」


「離したら絶対下の引き出し開けるでしょ」


「うん」


 うん、じゃねえ。


「店員さーん!!」


「呼ばなくても中にあれば一緒でしょうが」


「一緒じゃないよ、店員さんの仕事のしやすさが変わるよきっと」


 この後、すぐに店員さんがきて下の引き出しではないどこかから本を持ってきてくれましたとさ。

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