ごんぎつね
まず始めに児童書コーナーを訪れた。
「ねぇ、何で児童書コーナーなの絵本と図鑑しかないじゃない」
「いやいや、それがいいんだろ。しかも、今や絵本ブームだってきつつあるんだから。たかが本と侮ってると損するぞ」
「ブームねぇ、そういうミーハーな考え方あんまり好きじゃないのよね」
「そんな中学二年生みたいに人と違うことをしたい衝動みたいなこというなよ」
「誰が中二病って」
いやいや、そんなこと一言もいってませんけど。俺は中学二年生とは言ったけど黒歴史を彷彿させる中二病とは言ってない、まぁ時期的には被ってるんだけど。でも言ってない。
「あっ、懐かしい。『ごんぎつね』だ。小学校の時毎回読むたびに泣いてたなぁ」
「まあ、泣くかは置いといていい話だよなぁ」
「えーっ、これで泣かないとか心が死んでるんじゃない」
酷い言いようだな。
「まぁ、でも現代的ではないからわかりづらいのよね。お歯黒とか馴染みないし。虫歯予防の効果もあったらしいから現代風にいうと既婚者限定のフッ素塗布よね。歯を白く、きれいにみたいな」
なんか妥当な線をいっているとは思うけどなんか急に雰囲気ぶち壊しなんだよな。嫌だよ、歯医者行くたびに「フッ素塗布で」って女性が頼んだら「おめでとうございます」みたいな光景見るの。
「でも、名作ってみんなが知ってるからパロディーとか二次創作しやすいのよね。伝わりやすいから微妙なフォローとかしなくていいし」
「なにそれ、前回のじゃんけんのこといってんの」
「大丈夫、今日はいつもよりも多めにパロディーするって神様のお告げがあったから」
「神様!?」
「そうよ。私レベルになると神との通信すら可能なのよ」
「交信ではなく通信なのか!!」
「L〇NEに連絡が来るの」
「わりと現実的だな。というか、お前サクラじゃないな」
「あら、よくわかったわね。はじめましてパロディがはらです」
「パロディどころの騒ぎじゃねぇ」
ダメだ、このままだと自分本来のキャラがおかしくなってしまう。
「まあ、冗談だけどね」
「逆にマジだったら困るよ」
本当に。
「まあ、二次創作しやすいってところは間違いないわね。実際、書籍化されているもののモチーフが童話ってことも少なからずあるわけだし」
「いやでも、原作があるからこそやりづらいことってあるだろ」
「いやいや、だからこそうまく変えてオリジナルにすればいいのよ。例えば……『ガンぎつね』から『ゲンギツネ』まで作って『人生ギリギリアウトぐらいがちょうどいい』って言わせるとか」
「それパクってるよね間違いないよね」
「パクッてるとは人聞きが悪い。完全にオリジナルですー」
いやいや、そんなわけないよね。俺にはヘッドホンしているアイドルが盗み聞きしているシーンしか見えないんだけど。
「ちなみに、ガンギツネは泥棒と間違えてキツネを撃っちゃうって話ね」
そこは微妙に違うんだ。
「そしてラストはこんな感じ」
村の仲間と最近家に誰か侵入している可能性があると話した兵十は仲間と家をみはることに。
そこに運悪く表れたごん。
兵十は一瞬しっぽが見えた気がしてキツネなのではと思っている状況でのシーン。
「あれは餌を届けてくれているかも知れない」
「そんなわけあるか、撃て兵十。可能性に殺されるぞ!!そんなものぉぉぉ!!捨てちまえー!」
いや、やっぱりあいつは……。
「撃てませぇーん!!」
ズドゥーン
みたいな。
「ねぇ、それ絶対パクってるよね」
「いやいや、そんなことないって」
「いや、もう兵十が白い角付きのロボットにしか見えないよ。その後間違いなく黒いやつくるよね、村仲間変形するよね、それしか考えられないよね」
「ひどい。人が思いつきで考えた作品を全否定するなんて」
思いつきなのかよ。ひどいのはお前だよ。ネットだからって何でもありってわけじゃないから。無名作家が何してもいいわけじゃないから。
「あと『ぎんぎつね』は…」
「もういいよ!」




