ショートショート3 どうでもいい話
ある日の休日に私とおじさんがゴロゴロしていた時の話。
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「どうでもいい話していい?」
「いいよ」
「テントウムシって点の数で種類が分かれるらしいよ」
「へー。でもそれって今言わないといけないこと?」
「いいや」
お互いが読んでいる本のページをめくる音がする。
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「どうでもいい話していい?」
「いいよ」
「塗り絵ってメンタルヘルスにもボケ防止にもいいらしいよ」
「へー。でもそれって今言わないといけないこと?」
「いいや」
また、本をめくる音がする。
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「どうでもいい話していい?」
「いいよ」
「イザナキとイザナミって兄妹らしいよ」
「へー。でもそれって今言わないといけないこと?」
「いいや」
おじさんが本を読み終えたのかパタンッと本を閉じる音がする。
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「どうでもいい話していい?」
「いいよ」
「今、2時だよね」
「うん。でもそれって今言わないといけないこと?」
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「ご飯食べてないよね」
「おばあさん、朝ごはんは食べたでしょ」
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「私が言ってるのはお昼ご飯の話なのですが」
「そだね」
「……」
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「お腹がすいたのだけど」
「いいよ」
「なにが?」
「何か食べても」
「作ってくれないの」
「いいや」
「ふーん」
とりあえず冷蔵庫に何かないかを確認しに行く。
「ねえねえ、おじさん」
「ん?」
「冷凍のチャーハンが二袋あるけど」
「お願いします」
「へー。でもそれっていまさら言うこと?」
「いいや」
おじさんが次の本を手に取ったのか本をめくる音がし出した。
「ねえねえ、メイさんメイさん」
「ん?」
「どうでもいい話していい?」
「いいよ」
「チンしてくれたらこの前のカフェの代金チャラにしてもいいよ」
「全力で取り掛かりましょう」
おいしくいただきました。




