戦いに勝って勝負にもかつ
最後に小さくつぶやいた。
「いいセンスだ……」
ってなるかーっ!こんな卑怯な手には負けない。
「よしっ!私の勝ち!」
「いや、俺の勝ちだ」
俺は、腹の痛みを我慢して踏みとどまる。そして、さっきから出しているパーをより強調してサクラに見せる。
「どうして、今ので立っていられるの」
「なぜかって?簡単だ。ただ半歩分後ろに飛んだだけだ」
まあ、正直偶然出したパーが若干クッションになっただけだけど玄人感をだしておけばいいだろう。親指がめっちゃ痛いけど。
「仕方ないわね。最終兵器を使っても負けたんだから」
「なあ、あれって誰に教えてもらったんだ?」
純粋に気になったから聞いてみた。あんな物騒な方法を教えるやつは正気の沙汰じゃない。
「ああ、それはメイちゃんに教えてもらったよ」
えっ、今なんと。なんか、姪の名前が聞こえてきたようなそんな気が…。
「でっ、しかもそれを教えてくれたのがヒカリちゃん?って子なんだって」
ああ、そうですか。殿ですか。それは……なんか納得。
あの人ならチョキではさみとかでてきそうだ。
「ねえ、本当に全階見るの?」
「もちろん」
間髪入れず答える。
「いまさら聞いても遅いと思うけど、今日は何を買おうと思ってるの」
ポッケトから一枚のメモ用紙を取り出して読み上げる。
「えーっ…烏シリーズの新刊でしょ、カクカワコミックの新刊でしょ、やせ料シリーズ作り置き、ニーチェ読本、5時間でわかる日本の歴史、口語訳版日本書紀、ブラックな心理学、ドイツ語文法、グ〇と〇ラあとは…」
「ちょっと待って!あなたはどこに向かおうとしているの」
「いや別に本屋だけど」
「いや、そういう意味じゃなくて。というか、それ買おうと思ったら全階周らないといけないじゃない」
「そうだけど?」
「じゃあ、私勝っても意味ないんじゃ」
「ああ、よく気づいたな」
念のために全階周れるようリストを作っておいた。別に、じゃんけんに負けるつもりはなかったし、結果的にはいらなかったわけだけど。保険はかけておくべきだ。
「なら最初から意味ないっていえばいいでしょ!バーカ、あーほ」
子供かよと思いつつも猛スピードで入店する彼女を追いかけるしかない。
「冗談だって、専門書の階と学習参考書の階は行かないから」
「そんな間の階飛ばされたってあんま変わんないでしょ」
「じゃあ、実用書と文芸、それからマンガの合計三階ならいいだろう」
ふうーっと息を吐いてから立ち止まった。
「いい。全部行きましょう。今日ぐらいは付き合ってあげる」
「おお、いいならいいんだけど」
まあ、本人がいいって言うならそれでいいか。




