レクリエーション
うーん…どう考えたってついてきているよな。勘違いとかではないよな。
「葉月さんは帰ったみたいだけど…」
「ん?何か言った?」
「いや、なにも」と言ってできる限り笑顔で返してみた。
姫は「あっそ」と言って何事もなかったかのように歩いていく。
たぶん、ばれたよな。間違いなく笑顔が引きつってた。だって、えくぼのあたりピクピクなってたって。けいれん起こしたのかっていうぐらい震えてたって。
それよりも、どうして忍と卯月さんがついてきてるんだ?しかも、隠れてないんだよな顔が電柱からはみ出してるというよりも顔以外を隠しているし、通行人が通るたびにいちいち驚くから気づかないわけないんだよな。
うーん、どうしようか。走って逃げてもいいんだけど、体力バカ二人に勝てる気がしないよな。
「ねえ、なつき君。せっかく、鬼が二人もいるんだし鬼ごっこしようよ」
姫が突然目の前に立ってそう言った。
「鬼って、あの二人のこと」
二人が隠れているだいたいの位置を振り向かずに親指で指す。
「そう、面白そうでしょ」
「それは、面白そうだけど一緒に走ってもあの二人ならすぐに追いつかれちゃいますよ」
「大丈夫大丈夫。さすがに、荷物ありとなしじゃこっちに分があるでしょ」
たしかに、さっきお店によらせてもらったときに荷物は置かせてもらったけど、本当に大丈夫か?
ただ、姫はこっちの不安をよそにやる気満々のようだ。
「よし、じゃあ…決まり!二人とも巻いたらサクラさんの喫茶店の横の運動公園に」
「はあー、わかりました。じゃあ、次の十字路左右に別れればいいんですよね」
「話が早くてとても助かる。ほめてつかわしましょう」
もう、ただでさえぐっちゃぐちゃの姫のキャラに陛下キャラが加わったみたいだ。
「1、2の3、はい!」
姫の号令とともに同時に走り始めた。
後ろの方で「ああっ!!」という声が聞こえた気がした。
せっかくだ、楽しんでいこう。




