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ノンレストガール

 僕の中学校校区で唯一の激坂の見上げた先に彼女がいて中腹に僕がいる。

「遅ーい!」

「いや、そんなこと言われても姫が速すぎますよ」

「言い訳なんて聞きたくないよーだ」

 と、いいながらあっかんべーをする。

 姫だから許すけど、違う人なら間違いなくぶん殴ってる。

 でも、そんなことどうでもいいぐらい辛い。これなら、バドミントン、続けておけばよかった。いまさら、後悔しても遅いんだけど……。

 それに、思っていたよりも体力が落ちていたことにショックを隠せない。

「ほら、もう少し。がんばれー!」

 昼間の激坂には車1つは知っていなくて僕と姫しかいない。

 だから、声が坂中に響きわたる。

「よいしょっと」といいながら、最後の一歩を踏み出す。

「はあ、はあ。やっと…追い……ついた」

「お疲れさま。ほら、顔上げてみてよ」

「えっ、なにが」

「ほらほら、前見て前!」

 僕はうながされるままに顔を上げた。

「うわあ……」

 思わず声がもれた。

 目の前には町が広がっている。

 僕たちがいる場所が小高い丘ということもあって、町を一望できるほどの高さではないけれどそれでもある程度は見下ろすことができる。

「きれいでしょ」

 姫が自慢げに笑う。

 でも、そういう気持ちになるのもわかる。

 もちろん、世界の絶景には劣るだろうし、坂の美しさランキングみたいなものがあってもランクインどころか選ばれることもないだろうけどでも…

 きれいだ。

「さあ、今日の目的地はあれです」

 姫が指さした先には最近できたばかりのショッピングモールがあった。

「えっ、もしかして徒歩でいくの」

「もちろん!歩いて行けるところは無駄にお金を使わないことも大切だから」

「ほらっ、行くよ」と言って坂を猛スピードで下っていく。

 まだ、走れるのか。

 ああ、でもきれいだなあ。

 映画のヒロインみたいだ。

 目的地に向かって、ただひたすらまっすぐ駆けていく。

 髪が乱れようがシャツがびしょびしょになろうが関係ない。

 観客をハラハラさせてでも、どうにかなるんじゃないかという期待も持たせて駆けていくヒロインみたいだ。

 それなら、僕はなんだろう。

 モブだろうか、それとも主人公?

 もしかしたら、名前はあるけどただ一緒にいるだけのやつかもしれない。

 まあ、それでも疲れを知らない彼女のそばでいられるならそれでいいや。

 そのためにも、まずは彼女を追いかけないと

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