どうしてこうなった
「どうしてこうなったんだっけ?」
「そんなの覚えてないです」
ツッキーこと月花もすでにへとへとである。
「ぶつぶつ言ってないで早く勉強する」
と、生駒さんはノートで私の頭を小突く。そんなに力はこもっていないが思わず「いたっ」と声が出る。
「教育的指導とはいえ、体罰だ」と言いたかったけど、それよりも勉強しなくちゃいけなかった。
「別にいいのよ、あっちに交じっても」
「いえ、こっちでいいです。あっちは、なんかこう修羅場な気がするので」
「よろしい」といってすぐに離れていく。マチちゃんに国語を教えるためだ。
絶対に隣には混じりたくない。すでに、卯月が死にそうになっている。
「ほら、卯月。そこの公式をここにいれて、xでくくって。そうそう」
「監督、できました」
「残念、ここの一次のところ計算ミス。はい、もう一問」
「ええっ!そういって、五問も解いてるじゃないですか」
卯月が唇をとがらせながら文句を言う。
ただ、それに慣れているのか監督は動じない。
「こっちだって、ずっとお前に付き合っていたくないんだ。それに、こっちは本業の社会を教えずにやらないといけないんだから早く終わらせてくれ。五問連続不正解はやばいって」
卯月、それは確かにやばいって。
「いやあ、でもびっくりしたなあ。まさか、下村君が先生やってて。しかも、この子たちの担任だったなんて」
「ええ、おれもびっくりです。中仁のやつ、わざとだな。おかしいと思ったんだよ。生駒先輩を迎えに行ってから来いなんて」
そうだ、こうなったのは生駒先輩ともう一人バスケ部の監督で担任の下村先生が来たからだ。




