どうして殿?
「えーっと…これはどういう状況?」
「いつも勉強をしてないから教科書を開いただけでだめだったみたいです」
教科書を開いただけで意気消沈とは…。
「まだ、三十分も経ってないじゃないか」
しかも、勉強をはじめてからではなく、うちに来てからだ。これは、明後日のテストも絶望的だろう。
ああ、また姉さんに怒られるのか。
トホホッ。
「まあ、あいつらはしょうがないな。コーヒー入れるけど飲む?えーっと…名前なんだっけ」
「長月なつきです」
おれの直感がすぐに教えてくる。絶対この子、僕っ子系女子キャラで中身は男だな。
どうやらおれは謎のキャラ識別スキルを得たらしい。
「なつき君はコーヒー飲める?」
「いま、なつき君って言いました」
「言ったけど、いやだった?」
「いえ。うれしすぎて僕涙がでそうです。今まで初対面の人に男だと思われたことがなくて…だから、感激です!!」
なつき君は目を潤ませながら俺の顔をじっと見つめる。
やっぱり、同盟参加者の心の闇は深いようだ。
「そっ、そうか。コーヒーどうする」
「ああ、そうでした。ミルク多めで砂糖も多めでお願いします」
すぐに言われたとおりに準備をする。手早い理由は慣れているからではなくインスタントだからだ。
本音を言うと豆を買ってコーヒーミルで豆を挽いてコーヒーを入れたいのだがお金と時間ががない。
「はい」
コーヒをなつき君の前に置く。彼は「どうも」といってすぐにコーヒーに口をつける。
三対七でコーヒーとミルクを入れて角砂糖も一つ入れてみたのだがどうやら、苦かったようだ。
なつき君の顔が少しゆがんでいるのがその証拠だ。
「砂糖たそうか」
「いえ、大丈夫です」
そこは遠慮しなくてもいいのに…。まあ、本人がそういうなら仕方ないか。
「いつも、あいつらどうテスト勉強してるんだろう?」
「いつもは、殿が何とかしているみたいですよ」
「殿?」
「如月さんのことです」
かの有名なヒカリ様ですか。
「どうして、殿なの?」
「僕も武将を詳しく知っているわけではないんですけど、残虐性が高いところとか似てるかなって…」
ああ、なるほど。
鳴かぬなら
殺してしまえ
ホトトギス
てきなね。




