殿
「―ということで、おじさんの身辺調査をしようと思います」
「おー!」
一同手をおげて参加を表明する。
「あのぉ…」
会話に水を差した本人の顔を全員でみる。
「どうして、僕らが呼ばれたんですか。姫」
「ごめん。忘れてた。みんなに紹介しないと」
そういって、私は二人をみんなの前に並ばせる。
「今回、身辺調査をするにあたって斥候と情報処理担当を配置することになりました」
「つまり、この二人をうまく使いながらやっていくわけですね」
「さすがヒカリちゃん!!話しが早い」
「身辺調査って、そんなこと勝手にやっても大丈夫なんですか」
一人が不安そうに聞いてくる。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。親戚のおじさんだし問題ないって」
「でも親戚のおじさんと言っても、勝手に調べるのはいけないんじゃ…」
「長月君」
「はっ、はい」
ヒカリちゃんがぐっと顔を近づける。しかも、満面の笑みでだ。これは、仕掛けるつもりだ。
「文月さんはやる気満々ですよ」
「それは彼女は忍者気質でやりたがりだから面白そうなことに食いつきますけど。僕は怪しいことには首を突っ込まないと決めているんです」
「そうですか…。もし頑張ってくれたなら、長月君は『男らしいところがある』ってみんなに広めようと思っていたのに…」
「それは…た、たしかに魅力的ですけど。それでも、僕の信念は揺らぎません!」
長月君の必死の抵抗である。まあ、ヒカリちゃんの前では無意味だけど。
「そうですか…。では残念ですが、これをクラス中にばらまくしかありませんね」
そういって、二枚の写真サイズの紙を取り出す。
「ひっ!」
長月君の顔がどんどん青ざめていく。
「如月さん、どうしてこれを……」
「それは、企業秘密です。もちろん協力していただけますよね」
「えっと…それは…」
「きょ・う・りょ・く。してもらえますよね」
さらにヒカリちゃんは顔を近づけていく。
「はっ、はい。ぜひともやらせていただきます。殿」
「まあ、殿だなんて。では、これは見られないようにしておきますね。忠義を期待していますよ」
そういって、プリントを胸ポケットにしまう。
「じゃあ、二人の協力も取り付けたことだし。今日から調査開始!!」
「おーっ」
絶対におじさんとあの人との関係を暴いてやるんだから。




