北風と太陽
「どうもー北風と太陽ですー。よろしくお願いしますー」
「お願いします」
「いやー最近ね。仕事を頑張る人のドラマにはまってるんです」
「町工場がロケットのエンジン作るやつとかね。いいですよね」
「あとね。大河ドラマとかもいいですよね」
「いいですよね。昔の男の生きざまみたいな話とか困難に立ち向かう姿はかっこいいじゃないですか」
「それでね。一回でいいから主人公になりたいなーと思ってね。一緒にやってくれへんか」
「ええよ」
時は平成。
舞台は大阪。 彼らは地方から訪れていた。
「おお、いい感じや。こっからドラマが始まって町工場を立て直すわけですね」
そして、彼らはまず難波を訪れた。
「おお、まずは製品の販売状況を確認して対策を考えるわけですか」
そこで、彼らの目に飛び込んできたのは……。
大量の外国人だった。
「なんでやねん!」
「まずは、こう一見関係なさそうなシーンから入って後から伏線を回収するんですよ」
「なるほどね、このシーンが後のどんでん返しにつながるわけね」
そして次に彼らはたこ焼きを食べた。
「観光に来てるやないか」
「たこ焼きを……食べた」
「なんで二回言ったん。しかも、ちょっとためて」
「大事なことなので」
「大事なことやないねん。おっさんが観光してるだけやん」
「違うわ。このたこ焼きにもヒントがあんねん」
「ほんまに大丈夫か。さっきからおっさんしか出てきてないし、ぜんぜんピンチな感じもないけど」
「大丈夫や。まあ、黙って見限っといてくれ」
「そこは見といてくれやろ。お前、ほんまに大丈夫か」
「大丈夫、大丈夫」
そして、彼らはたこ焼きを食べながらこういった。「ここはどこだ」
「やばいやばい!おっさん、たこ焼き食ってんのに『ここはどこだ』ってあるか?大阪でしかないやん。『じゃあ、また明日』って言って誰だっけ?なるぐらいやばいで」
「これにはちゃんと理由があるんですよ」
「理由があんのね。たこ焼き食って難波に来てるのにここどこ?っていうのには理由があんのね」
「というのも、町の様子が変わってるからびっくりしてんねん」
「なるほどね。納得しました、続きを聞きましょう」
そして、彼らはたこ焼きを食べながらこういった。
『ここはどこだ』
『ここは俺らの知っている大阪なんか。こんなん、俺らの知ってる大阪ちゃう』
「町が様変わりしてますからね」
『もう、大阪は変わったんや。俺らの知ってる、小汚いけど都会の大阪はもうないんや』
『なんでや、グーグルマップの地図情報もあってんのに、なんでや』
『革命や。明治維新以降大阪で革命が……平成維新が起こったんや。俺らの知ってる食い倒れの町はない。ここは京都とどっこいで奈良よりは上な観光地に生まれ変わったんや』
『そんなぁぁぁぁぁ!!』
「ちょっと待って」
「なになに」
「いやいや、おかしいやん。なに、そのグーグルマップでは同じやに変わってしまった大阪ってフォークソングの歌詞か。あとなに?その奈良には勝ちました見たいなアピール」
「いや、やっぱり京都とはどっこいぐらいやけど奈良には勝ったなって。」
「やめろ、脚本家のの大阪びいきがひどいねん。結局、タイトルはなんやねん」
「がんばれ、地方観光案内所」
「もうええわ」




