暇だ
「ああー、暇だー」
床に突っ伏しながらサクラがそうつぶやいた。
なんか、有名な画家の書いた時計に似ている。なんかこうぐでーとした感じが。なんだろう、このけん玉とかがものすごくできそうな感じに既視感が。
「最近ちょこちょこ暇ですね」
「そうだねー、町内会の人たちが最近公民館で集まるようになったからね」
「それでも、若い人もいつも以上に少ないような」
「ああ、それは駅前に呪文でおなじみのコーヒーチェーン店ができたからだよ」
「ああ、なるほどよくわかりました」と言いながらおもむろにスマホを取り出した。
「えーっと…ゆうちゃん?何をしているのかな」
「決まっているじゃないですか。次のバイト探しですよ」と満面の笑みで。
「いやいや、待ってまだつぶれるって決まったわけじゃないから」
「決まってないかもしれませんけどもう詰みかけてるのは間違いないじゃないですか」
「大丈夫だよ。町内会の集まりがない日は来てくれてるから」
「何言ってるんですか、そういうところから徐々に人が離れていって「まだいけるいける」って言ってる間に取り返しのつかないことになるんですよ」
「いや、たしかにそうかもしれないけどさすがに大丈夫だよ」
「いや、わかってない。わかってないですよ」
ゆうちゃんは片手で目を覆いながら少し上を向いて行った。
「もうすぐ、駅前にショッピングモールができるんですよ。さらにチェーン店。これがどういうことかわかりますか」
「えーっと…便利になる?」
「違います。駅前の再開発が行われるということはここら辺一帯のお客さんが数か月ないしは一年間は減るということです」
「それはまずいね」
「まずい?そんなぬるいものではないですよ。これはもう戦争です。向こうは大量仕入れによる地域最安値という戦略兵器を持ってる上にSNSという情報戦において必要なものまで持ってるんですよ」
「つまり、どういうこと?」
「つまりショッピングモールはヒューマンオブディストラクションと呼ぶにふさわしい、地域の産業を根絶やしにする破壊兵器なんです」
「なっ、なんだってー!」
「まあ、一年ほどたてば日常遣いはこっちで家族で買い物の時はあっちってなると思いますけど」
「なるほどねー」
「ということで、私は一年後ぐらいに帰ってきます」
「いやいや、ちょっと待ってなんでそうなるの」
「だってそれまで持つかどうか分からないじゃないですか」
「じゃあ、うちのメイに会えなくなっていいんだな」
「うっ……」
ゆうちゃんは少し考えてからこういった。
「わかりました。残りましょう、その代り次にきたときはモフモフさせてください」
うん、それで残ってくれるならいいや。




