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裁判×ふた恋

「では、これより裁判を始めます。被告人、前へ!!」

 ヒカリ裁判長の前に二人が並べられる。

「では、被告人。氏名を言いなさい。

「神田メイです」

「長月なつきです」

「被告人、本件の罪状はここ最近のストーリー作りの雑さについてです。間違いありませんね」

「そっち!?」

「被告人、発言は挙手してからにしなさい」

「はっ、はい」

 まあ、それならそれでいいか。聞かれても特に話題もないし助かったけど。

「裁判長、少しよろしいでしょうか」

「なんでしょう、卯月弁護人」

 弁護人、卯月さんなのか…終わった。

「ほんけんはストーリーの雑さではなく付き合っているかどうかです」

 切り込んだー!!

 さすが、学校一の天才ドリブラーキレッキレだぜ。これは、もしかしたらいけるかもしれない。

「弁護人、本件とまったくのかかわりのない発言は控えるように。それと…その話をするならあなたがどんな形で惨敗したかの話をしますよ」

 卯月弁護人は静かに席について「続きをどうぞ」と静かに言った。

 止められたー!本当に部活の先輩となにがあったの?逆に気になるって。

「では、話を進めます。先日、某人気マンガの影響を受けてタイトルを変えたいと発言しましたね。間違いありませんか」

「はい」

「どうして、そう思ったのかを答えなさい」

「いやー、ぶっちゃけ中二病ってキャラ付けしやすいっていうか。まあ、私の場合職業中二病なんですけど、それでも痛いこと言ってると愛嬌があるというか。実際、キャラ投票やったら間違いなく私一位間違いないし、一応はヒロインなんで。ここ最近のギャグパートでのはっちゃけぷりが恋愛パートの私が好きな人に申し訳ないです、はい」

 ぶっちゃけたー。

 大丈夫なの、これもう腹割って話すじゃなくて切腹レベルだよ。

「被告人、長月なつき。何か言うことはありますか」

 言うことがないわけじゃない。

「正直、最初は大人しくて優しい男の子で女の子いっぱいでおいしいポジションだなって思ってたんですけど、実際には脅される日々だし。気がついたら、中仁さんの下位互換みたいになってるし。はあ、ほんとやになる」

 同じくぶっちゃけてみた。

 「そっ、そうですか」とあきらかに顔を引きつらせながらそう答えた。

「しかし、そういうところの雑さがストーリーに影響しているとして被告人を有罪として3話分の休みを命じます」

「異議あり!!」

「なんでしょう被告人。このままいけば、あなたたちは休みはもらえて私たちは出番が回ってくる。まさにwinwinではないでしょうか」

 そうかえってくると思っていた。おそらく、それを見越しての展開だろうと。だが、告げなくてはならない。もしそうなった場合にどうなるかを。

「それは…」

「それは?」

「それは違うよ。だって、僕らが休みになったところでみんなに出番は回ってこないよ」

 いつもより声を少し鼻声にしてそういった。

「それはいったいどういうことでしょうか」

「落ち着いて考えてほしい。この物語の主人公を」

「この物語の主人公……まさか!」

「そうだよ。主人公ははじめから二人なんだ。つまり、僕らが休みをもらった時点で話は向こうに行くだけなんだ」

「まさか、前回の話は…」

「予想通りだよ。つまりこのままいけば、前回のネタが伏線となってしまうんだ」

「そんな…まさか…」

 ヒカリさんの絶望的な表情はいかに自分たちが踊らされていたかを物語っていた。


 一方、そのころ喫茶店では

「前から気になってたんだけど×ってどういう意味なんだろうね」

 と、サクラがふと思い出したように聞いてきた。

「攻め×受けだったかな。というか、そういうのってガッツリじゃなくても女子は一度でも通る道じゃないの?」

「いや、そんなことはないでしょ。統計取ったことはないけど。私はどちらかというと推しキャラとの恋を夢見る夢見る女の子なの」

「その人種はなんかたちが悪そう」

「そう?」

「キャラに彼女ができた瞬間に公式に文句とか言いそう」

「さすがにそんな人いないでしょう」

「さすがにいないよね」

「もし仮にそんな夢見る女の子が告白して来たら惚れる?」

「ないわー」

「ですよねー」

 その後、伏線が回収されることはなかったとさ めでたしめでたし

次回!!二人の恋は始まらない

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