パーフェクトディバイド 誤植編
「もう、なによこれ。中仁に文句言ってやる」
すぐにトークアプリで電話をかける。中仁はすぐに電話に出た。
「はい、もしもし」
「読んだわよ、今週更新の小説。ひどすぎるわ」
「ひどいってなに?自分の感性が?」
「ぐへー」
絶対今度会ったらぶっ殺す。
私は心でそう決めた。ただ今はそれどころではない、ちゃんと教えてあげなくては。
「ちがう、誤植よ誤植、文章が間違ってるのよ」
「どこどこなん行目?」
「そんなピンポイントな言い方できるわけないでしょ。ルミが『圧倒的な格差ーパアーフェクトディバイドが存在する』っていう絶望感あふれるシーンが」
〈圧倒的な格差ーパーフェクトボディーが存在する〉
「あっ、ほんとだ間違ってる。ハッハッハッ」
「何でいきなり、主人公が肉体改造にあこがれを抱いてんのよ」
「ごめん、ケインのモノマネ動画検索しまくってたから予測変換でついうかっり。やっちゃった」
やっちゃたってレベルじゃないと思うけど。それよりももっとひどい会話がある。
「まだ、誤植あるのよ」
「えー、どこどこ」
「元クラスメイトのミキに『初めましてルミさん』って他人行儀に接する冷徹なシーンが」
〈初めましてシミさん〉
「いくら落ちぶれたからってひどすぎるでしょ。というか、問題はその後よ。ルミが『ええ、初めましてルミです』って地味にやり返すシーンよ」
「そんなところあったかな」
あるから言ってるんでしょうが。
〈ええ、初めましてカミです〉
「何でいきなり、GOD宣言してるのよ」
「いやそこ合ってるから」
「えっ?」
「その前のミキの独白のシーンで『その日から神童と呼ばれた姿はなかった』って過去には神の子とまで呼ばれたほどの才能があったってことを示唆していて、改めて自己紹介することになったから『あなたが求めている才能あふれる人間がここにいますよ』ってアピールしてるんだよ」
ええい、ややこしい。
「じゃあ、そこはいいとして、最後の「はああああああああっ!」って技を叩き込むシーンよ」
「そんなところ間違えるかな?」
「地味に間違ってるのよ」
〈はいやーあ〉
「なんでいきなり馬に乗り始めてるのよ。もう意味わかんないし。しかも、最後の後書きなにこれ?」
〈上手に書けましたー(笑)〉
「小学生か!」
ラーララ、ララララー、ララララララララー、ラーララ、ララララ♪




