アンチ王道くんは馬鹿力です。
アンチ王道のとあるシーンがこうだったらどうだろうという話。
よくある王道学園に、よくいるアンチな王道くんがやってきました。
人の話は聞かない、自分が言うことが正しい、思い通りにならないものはすべて悪である。
外見は頭モジャモジャに、瓶底めがね。
『外見で判断するなんて最低だ!』
と言うわりに、イケメン代表の生徒会をはべらかす。
『偽物の笑顔なんてやめろよ』
『セフレなんてよくない!』
『俺はお前の言いたいことわかるよ』
等々の魔法の呪文を駆使したり、双子の恒例“どっちでしょうゲーム”もあっさりクリアしたためだ。
そしてよくある感じにやんちゃしてた王道くん。
親衛隊の呼び出しなんてへっちゃらです。
へっちゃらだけどめんどくさいってんで王道くんは、どうやらスケープゴートを見つけたようです。
それは隣の席の平凡くんでした。
ところにより脇役平凡、だけど実は非凡、なんてこともありますが。
果たしてこの学園の平凡くんはいかに?
王道くんは早速平凡くんに親友宣言しております。
平凡くんの顔は血の気が失せた土気色をしています。
平凡くんはやんわり断っているようですが、王道くんに遠回しな表現など通じません。
なぜなら、直接的に言っても通じないからです。
努力のかいなく腕を捕まれてひっぱられる平凡くん。
まさに気分はドナドナ。
両足で踏ん張ってもすべるばかりで、王道くんの歩みをとめることなど不可能なのです。
が、ここで平凡くんはなんと引っ張られていない方の手でドアを掴みます。
ちなみに引き戸です。
そしてなんとか足も引っ掻けて耐える!
ぶっちゃけ反対側に引っ張られたらアウトなわけですが、そこはアホな王道くんですから思いあたりもしません。
それは大変白熱した戦いでした。
両者とも一歩もひきません。
どうしても連れていきたい王道くんVSどうしても行きたくない平凡くん
ほとんどの戦いではあっさりと負けてしまう平凡くん。
ここでは是非とも勝っていただきたいものであります。
片手で引っ張っていた王道くんが両手になり、さらなる地からをいれたとき、それは起きたのです。
ドアが外れそうなぐらいの軋む音をたてたかと思うと、次の瞬間!
平凡くんの腕が抜け落ちました。
肘の上辺りからボロッと。
反動で二人とも尻餅をつきます。
あたりは一瞬静まって。
王道くんは自分が持っている腕と、平凡くんの腕を何度か交互に見たあと、叫んで腕を投げ捨てました。
「おっ俺は悪くないからなっ!言うこと聞かないからバチがあたったんだ!お前がわるいんだぞ!」
王道くんが平凡くんに文句を言います。
どうみても王道くんが無理にひっぱったせいなのですが、王道くんが認めるわけがありません。
平凡くんは反論するでもなく徐に立ち上がり自分の取れた腕をもう片方の無事な方の手で拾いあげると。
「あーあまた取れちゃった。やっと綺麗にひっついたとこだったのに。」
そう言いながら恨みがましい目で王道くんを見ます。
王道くんは怯えながら喚いています。
「お前なんなんだよ!なんで腕がとれるんだよ?意味わかんない気持ち悪い!」
王道くんは周囲を見回して同意を求めましたが、それは無駄なことでした。
王道くんは知らなかったのです。
「意味わかんないって俺ゾンビだからパーツもげやすいんだよ」
なんと平凡くんはゾンビだったのです。
そしてそれは周知の事実。
まわりからは
ーまたかよお前ー
ーちょっと取れやすすぎない?
ーとりま保健室いって縫合してもらってこいよ
等と軽い声がかかります。
怯えるものなどおらず、その場は和やかムードに満ちています。
王道くんだけが混乱し続けています。
「なんだよおかしいだろゾンビって」
いいえ、おかしくありません。
だってこの学園は
「ここはモンスターのための学園だよ。ここにいる人間は君だけだ」
いつのまにやらやってきていた会長が王道くんに語りかけます。
それと同時にその完璧な擬態を解いてモンスターの本性を現します。
それを合図に周囲の生徒たちも全員擬態を解いていきます。
「手違いがあったらしくて本来なら人間はここに入れないはずだったんだけど。君はどうやらモンスターだと判断されてしまったようでね。帰してあげたいんだけど、そうもいかなくて」
そう言いながら会長が王道くんに手をのばした。
その行為で恐怖が限界に達したのか、王道くんは叫びながら一目散に逃げていった。
あっという間だった。
「ああどうしよう記憶を消さなくちゃいけなかったのに。」
会長がやっちまったぜ、とばかりに額に手をおく。
「大丈夫でしょう。あれの言うことを真に受ける人間なんていないでしょうから」
「それもそうか。」
そう言って解散とばかりに手を二回ならしつつ、擬態した姿に戻る。
生徒たちもそれに倣って擬態した姿に戻り、それぞれの目的地へ向かい出す。
ちなみに生徒会の人達は王道くんが気に入っていたわけではなく、出会ってすぐ人間だとわかったため、それとなく監視するために近くにいただけのようだ。
これがこの学園のアンチ王道くんの顛末なのだけど、いかがだっただろうか?
少しでも面白く感じてもらえたなら幸いです。
ああそうそうちなみに、王道くんの代名詞たる“マリモ”だけど。
忘れていたわけではないんだ。
だってマリモに失礼だもの。
本当に困ったものだよ、とんだ風評被害だ。
僕のようなマリモの化身にとってはね。
ちなみに
副会長は笑顔を指摘されて擬態に不安を感じて
会計は元気そうだから精気いっぱいもらっちゃお
書記は人間に自分の言葉がどれだけ通じるか気になる
双子は物珍しさ
といった理由から近づいてたのもあり
あと会長は
あれ?人間だ…人間…?…人間か!
みたいな感じで迷ってた(笑)
思ったより長くなった。
腕がもげるシーンと最後の落ちをうまく書きたかったんだけど
うまい言い回しが右から左へ消えていった。