第1話 その後の日奈は・・・・
オリンピック代表に選出された後の日奈の人気は大したものだった。特に小・中学生のバドミントン女子からの人気が凄い。
団体戦には混合ダブルスはないのだが、日本リーグの残り試合に東城トランスポートの一員として随行すれば、行く先々で「日奈さん」とか時には「日奈ちゃん」と声を掛ける女の子たちが大勢いた。報道関係者も「現役女子高生、オリンピックへ!」と非常に分かりやすく、万人に受けやすいヒロインの登場を喜び、大いに取り上げてくれた。それに、ペアを組んでいるのが、萱場という職人気質のおじさんであることがより一層受けた。これが若手のイケメン男子選手とのペアだったらあまりにも現実離れしていて、ここまで人気は出なかっただろう。
しかし、代表が決まってからの練習は日奈にとっては過酷を極めた。
特に、同じくオリンピック代表に選ばれたもう一つのペア・・・決勝を戦い抜いた「高瀬・小林ペア」との実戦練習は毎回日奈にとっては精魂使い果たすものだった。高瀬は練習と言えども、渾身の力でプレーし、駆け引きも一切手を抜かなかった。
16歳という年齢がそれを受け入れるため、根性の全てをもってしないと日奈は立ち向かえなかった。余りにも激しい練習の後、日奈は‘戻す’ことが度々だった。萱場は何度かその様子を目撃していた。日奈が、体育館横の水場で‘うっ・・・’と胃液を苦しそうに出しているのを見て、背中をさすってやることもできず、落ち着いたのを見計らって、冷たい飲み物を差し出してやった。
「少しならいいぞ」
と、普段は飲ませていない炭酸飲料を清涼感を与えるために渡してやったこともある。
しかし、日奈の実力は見る間に上がる。代表選考後僅か2週間で高瀬を恐れることもまったくなくなり、逆に高瀬に脅しのフェイントをかけ、のけ反らせる場面もあった。
オリンピックまで後8カ月。




