1.旅立ち
仏像が好きなんです。
「仏像じゃなくて、仏さまだよ」って叱る方もいらっしゃいますが、ここでは「仏像」でご容赦ください。
何せ、神社でも柏手を打ち、お寺では手を合わせ、クリスマスもケーキを食すという節操の無い俗物なんです。
たびたび奈良や京都に出かけます。
同じお寺でも京都は庭、奈良は仏像という思い込みがあって、どうしても奈良が主目的になります。
もちろん京都にも魅力的な仏像がたくさんあって、東寺の仏像曼荼羅やら広隆寺のほほえみやら、三十三間堂の並びに並んだ仏像の前に立つのも大好きです。
我が住まいから奈良まで行こうとすると、これが面倒なことになります。
何せ、秋も深まると「熊よけの鈴」を腰につけ、小学生がシャンシャン鳴らしながら集団登下校する、
我が家の玄関にタヌキが訪ねてきて、「まあるいお尻が見える」、猿が畑のジャガイモをほじくって・・・。
ああ、田舎自慢は止しにしましょう。
さて、出かけるのです。
まず高速バスに乗ります。朝早く起き出して、高速道のバス停駐車場までマイカーで行って、バス待ちで
す。これが、必ず(必ずです)30分程度遅れてきます。時刻表を修正しろって言いたくなる・・。
でも遅れを予測して行く勇気が無いので、いらいらしながらバス停で待ちます。
これもが旅の一部です。「待つ時間もデートの時間:By あだち充」派です。
運転手さんも高速道に入ると、それなりに飛ばして(内緒らしいです。あくまでそれなりです。)
15分程度の遅延で、バスターミナルへ到着。
ここまで、自宅から約3時間と少し。
名古屋から近鉄線を利用する方法もありますが、気が急く(せく)もんですから、新幹線で京都まで行き
ます。所要40分弱、指定席券を購入します。
時間とお腹の都合で、名古屋のホームの「きしめん」か、近鉄京都駅の売店で「柿の葉鮓」とお茶買って
特急の車内でモグモグかの二択です。
「名古屋駅のきしめんは、東京方面行きのホームの中央口をあがったところの・・・」どこそこが一番美味しいなどと議論があるようですが、私はそこまではわかりません。基本的に「美味しくいただく」ようにしています。
「柿の葉鮓のばら売り」ってのは、近鉄京都駅の売店ではじめて知りました。
で、並んでいる全種類一個ずつ・・・なんてしますと、明らかに食べきれないので、4,5個買ってモグモグします。
土瓶に入ったお茶、フタの上におちょこが伏せてあって、それが茶碗代わりだった時代を知ってる方って生き残って・・・、いや、あきらじいじは話に聞いて・・・、いや、親に買って貰って・・・、はい、認めます。
自分でちゃんと買ったのを覚えています。今は、ペットボトルのあったかいお茶買って、「風情が・・・」なんて、ぶつぶつ言いながらモグモグするのです。
切符売り場の駅員さんは、「先発する急行の方が早く着きますよ。」とか「橿原神宮行きの特急に乗って、西大寺で乗り換えれば20分早く・・」って親切に教えてくれます。
でも、せっかくの旅ですから、進行方向に向かって座って、地下にある近鉄奈良駅まで しゅうっ と行きたいじゃないですか、おまけにまだ喫煙車両もあるんですよぅ。
「奈良行きの特急でお願いします」ときっぱり言うのです。
「あれ、さっき急くって言ったじゃないか」ってご指摘は甘んじて受けます。
もちろんJRも奈良までの路線を持っているんですが、田舎者はあのスピード感と揺れが恐いんです。これは、大阪-京都間のJR、新宿―横浜間のJRから受ける印象に通じます。
数年前に大きな事故がありましたね。
「必死で走ってる感」が半端ないのです。
で、近鉄特急が 西大寺駅を過ぎて、平城京跡地に復元された南大門を見るあたりになると、
「さあ 来たぞ。もう少しだ。行くから 待ってろよ!」
なんて高揚して来るのです。
「待ってろよ」の対象は、仏像であったり、鹿であったりします。特に今回の旅の重点目標があれば、それも対象となります。鹿と○○○○(後で出てくる)は、定番・固定の対象になるのです。
( ならぁ ならぁ お忘れ物の無いように! )