フォーチュンインバート
なんかデスゲー物読んでたらこの設定だけ思い浮かんだんだ………。
【MPK】PKをBLにぶっこむスレ【要注意】
6 :この名無しがすごい!
また出たんだけど、辻フォーチュンインバート。
あれ地味にウザイ
9 :この名無しがすごい!
>>6 何その微妙にカッコよさげな名前?
10 :この名無しがすごい!
かっこよいとか言ってる場合じゃねえし。
略してFIって呼ぶけど、こいつのユニークスキルマジMPKレベル。
しかも即死系のスキル持ってる奴と対峙してるときに出てくるから洒落にならない。
ほんとBLに入れとけ
23:9
>>10
ユニークスキルの詳細Plz
24:この名無しがすごい!
9は今までどこにいたのか。
フォーチュンインバートってその名の通り、幸運関係のスキルらしい。
つーかかけられると幸運0になる。
回避系にとっては天敵。
25 :9
>>24
はぁ? 回避とかそういう問題じゃなくね?
幸運0で即死系スキル食らったら100パー即死じゃねーの? 幸運値判定だろ?
え? 馬鹿なの?
MPKじゃなくてPKだろそれ。
26 :10
>>24
だからそう言ってんだろwww
今頃重要さに気付いたか!
27 :9
え、ってかマジなの?
おい、ここデスゲーム中だぞ?
なんでそんなのが『警察』に捕まらんの。
28 :この名無しがすごい!
それが不思議な事に、死者は出てない。
29 :9
>>28
はぁ?
32 :この名無しがすごい!
>>29
いや、なんでか知らんけど幸運0にされて攻撃ばしばし当たるようにはなるんだけど運がいいのか悪いのか死なないんだよね。
辻スキルでアタックしてるからイエローネームの筈だけど、直接はやってないみたいで赤ネームにはなってない。
このゲーム赤ネームじゃない限り名前隠せるしなぁ。
よって捕まえれないうちに辻スキル→隠密されて逃げられる。
かけられた方はデススキル食らう前に敵が倒されて、結果評判だけ残る。
34 :9
>>32
ええー???
なんだそれは。
インバートさん運悪いwww デスしたいのにされないとかwww
37 :10
インバートってそもそも意味合いが『反転』だしな。
自分の運も吸い取られてんじゃね?w
40 :9
南無www
しかし殺伐としたこのスレで和んじまったなあ。
まぁ危険な事にはかわりねーし、即死系スキル持ってる敵に対する時は注意か。
デス系のスキル持ってる奴って幸運値みたしてれば経験値美味しい敵だから、狩場の制限は難しいだろうしねー。
―――
君は自分がデスゲームに関係者だったら、どう行動していた?
僕は目の前の男にそう言いたかった。
そんな勇気は全くないけれど。
「……」
僕はひっそりと、攻略組の後ろを隠密で歩く。
大分評判になってしまっているみたいだから、今日は特に全員警戒しているようで隙がないのはわかっている。
わかってはいるけれど、放置するのも忍びなくて僕はすんごく後ろの方からちまちま追いかけている。
一応、攻略組の中にフレンドリストに入ってる彼がいるから実は後を辿れるんだ。
相手は僕がMPK掲示板で有名になっている相手だとは思ってもいないだろうし、今もちゃんとオンラインで場所公開してる。
僕は隠密常時発動なので、相手に気取られる心配はない。
だからゆっくり追いかける事も出来るけれど、それで取り返しがつかなくなったら困るので、ある一定の距離を保って動いている。
即死系のスキルを持ったボスを倒そうとする、その集団が見える位置に。
――
話は数か月前にさかのぼる。
僕は大学生ながら、デバッガーの仕事をしていた。
と言っても大したものではなく、本当にバグ取りくらいの軽いものである。
要はテストプレイヤーみたいなものだ。
だからこのゲームがデスゲームになった時にもゲーム内にいたし、なった当時は本当に混乱した。
まさか、本当に?
僕の頭の中を締めていたのはその言葉だけだった。
実を言うと、その傾向はあったと言わざるを得ない。
実際問題デスゲームに近いVRMMOジャックの犯罪は、決して少ない物ではなかったし。
僕がバグ処理をしていた時にも、生命維持とか色々、まさかね? と思いつつも心当たりに反応するような出来事はそこそこあった。
それでも最近はデスゲーム化したところですぐに警察が動くし、ゲームスクリプト上でも警察が出回れるようになっているので、そういった犯罪は沈静化していたし軽い通報でなんとかなる、筈だった。
でも中にはやっぱり天才はいるというか。
発想の転換を行える人も、いる。
このゲーム、警察は排除されていない。
それは単純にログアウトを封じる、それだけであれば実は警察の強制ログアウト機能を利用することでゲームを出られることを意味する。
強制ログアウトは文字通りゲームから放り出されることを意味し、この強制ログアウトはゲーム管理者でも止めることが出来ない。ゲーム作成時点で土台に組むプログラムである(組み込まないと販売できない)。
しかしその安心を逆手に取るとは誰も思っていなかったに違いない。
強制ログアウト機能を使うには、ある程度の犯罪を犯さなくてはならない。一発でログアウト対象になるのがゲームルール外のPKなのだが、それに対しての対策が酷いものだったのだ。
強制ログアウトをさせないために、ゲーム内の死亡・殺人被害者に対し、相手の思考回路を壊してしまう、そんなプログラムをこのゲームは付与されていた。
質の悪い事に、壊されるのは死亡した相手だけ。
まるで殺人を犯せと言わんばかりの悪趣味さに、当時は大混乱したものだ。
モンスターによる死亡も同様で、デスゲームになった当初は大変だった。
あえて警察プログラムを排除しないことで、ログアウト機能封鎖をゲーム管理者のみに権限を取られており、対処する事が出来なかった。
そして、同じような犯罪が"外で"相次いぎ、そちらは即死亡するような難易度の高いゲームが多く、危険度の高いモノが多かったため、このゲームは中からのクリアを推奨された。
中での難易度がさほど高くなく、PKされなければ滅多に死ぬ事もない、そうわかったからだ。初心者向けのぬるげーというやつである。
単純だけに、条件以外を満たすと全員死亡する可能性もあるが、緊急性が低い。
そう判断され、俺たちは放置された。
犯罪を犯すか。
中でクリアを目指すか。
ゲームを好きな人が集まっているだけに、殆どの人が後者を選んだ。
殺人と分かっていて殺人を犯せば、どう考えたってお先真っ暗だからな。それなら多少のリスクを抱えたとしても、クリアして出ようとする人間がいるのは当然と言えた。
中にはMPK等を楽しむ人もいたが、そういう奴は警察に通報することである程度の拘留等も出来るようになっており、存外治安も悪くなかった。
まあ、中にいる警察ってぶっちゃけAIだからね。
AIに従っての動きしか出来ないから、当然抜け穴もあるし、確実に殺人を犯していないと排除もされないが、ある程度の抑止力は働いていたのだった。
で、まあなんでこんな説明をするかと言うと。
絶賛僕自身がイエローネーム……つまり、MPKを行っている、もしくは素行の悪いプレイヤーとこのゲームに認識されているからだ。
分かっていてやった身とは言え、ホントこの立場辛い。
うん。。。
僕は今現在、ひたすら回避を上げまくり、隠密と回避を駆使してデススキルのあるエリアを出歩いている。
なんでそんなのしてるの? って思うだろう。
本当にそれには、深いわけがある。
うん。
端的に言うと、このゲーム、致命的なバグがあるのだ。
『幸運値0の場合、絶対に確率系スキルがかからない』
という。
はぁなんだそれ? って思う人はいるかもしれない。
まあ、落ち着いて聞いて欲しい。
ある敵の死亡系スキルに、30の幸運値でかからなくなるとする。
現在の数値が20なら、足りないのは10。30の内の10足りないので、かかる確率は33%になる。
計算式おかしい?
僕に言わないでくれ、たまたまバグ取りにもらったユニークスキルが幸運値の反転というものだったので、気付けただけのホント微妙なバグなんだから。
まァなんかそういう内部計算らしく、僕は幸運関係のステにバグがないかオープン後のスキル初動確認中に、幸運値0でデスゲームに突っ込まれたのだ。
当然このスキルはそのまま手に入っていたし、初期ステがおかしい事になっていた。
まあ、そしてその場で試したところ気付いた。
マヒとか毒とか、幸運値の0の自分が全くかからない事に。
さすがに死んでしまうので即死系スキルに関しては怖くて試せなかったが、プログラム段階で計算式が一緒になる事は知っていたので、おそらくデス系にも対応する、と言う事も知った。
と言うかまあ、そもそも判定がおかしい。
スキルが幸運値判定の時は「Miss」表示。
幸運値0の時は「Fumble」だったりする。見えているのは攻撃を食らっている僕だけかもしれないが。
つまり最初の段階で、測定できる幸運がないと強制でスキルが発動しなくなるのだ。
これに気付いた時、僕はどうしようかと迷った。
考えてみれば状態異常がまったくかからなくなるわけで、回避数値が減ると言うデメリットはあっても恐らく強いスキルである。
本来なら攻略組に事情を話して入っておくべきだったのだ。
だが。
なんと言うか僕は。
戦闘系のスキルが全くなかった……………。
それどころか製造でもない。
スキルだけ幅広く取っていて、ステータスは回避ばっかり。
製造スキルはなし。
そしていくらプレイヤースキルは多少あるといえども、戦闘スキルがない戦闘職とかどうすればいいのさ……。
結果ソロでうろうろしつつ、回避系じゃなさそうな人にこそっと状態異常がかからないように、とかけてみればMPK扱いされる始末……。
イヤ、すぐに気付いたよ。
幸運がないって事は、色々問題があるって事には。
気付いたけど毒かかりまくってるのみたら解除してかけたくなるじゃない!
あわよくば仲間にしてくれないかなとか思うじゃない!
――――うん、すげぇ酷い扱いを受けた。
味方だと思ったらとんだ悪者だと、その場で糾弾された。
僕は幸運値を0にした事だけは事実であり、反論する術を持たなかった。
以後、僕は引き籠った。
ひたすらに引きこもった。
1回でイエローネームになってしまったのでPTも組めないし、する事がなかったからだ。
だがデスゲームが数カ月にもおよび、死者がだんだん増えてくるようになると辛くなってきた。
皆戦っているのに。
バグ処理したくらいの知識しかないけど、確実に関係者だからボスとかの情報とかも持っているのに。
そう気付いた僕は、掲示板で情報を流し、どんなことを言われても死ぬ人を減らそうとデススキルを持つ狩場をうろつくようになった。
ソロ活動なので隠密を取り。
やる事はひたすらユニークスキルの発動。
死にたくなかったし、元々回避・速度だけ馬鹿高いので(主に攻撃手とかの数の関係で)それ以外はすることなく。
結果どう言う行動かと言うと、回避と耐久にごく振りして回避しながらものすごくちまちま叩いてレベル上げする隠密……。
まあ当然のことながらレベルは殆ど上がらなかったけど。
敵を倒さなくてもスキルレベルは上がるので、ベース低いのにスキルレベルだけおかしい、という状態になった。
そうしてまた数カ月。
まさに今、このゲームは終わろうとしていた。
――
「後少しだ! みんな頑張れ!」
「無理しないでね! カウンターに気をつけて!!」
目の前にいるのは、攻略組の精鋭たち。
そして唯一の、僕のフレンドリストの相手がこの彼――攻略組の、ギルドマスターだった。
フレンドリストに入った理由はなんてことはない。
単純に同級生で、たまたま始めた直後に出会ったからだ。
それ以外の接点もないし、ハーレムレベルの取り巻きを持っている彼にとって、僕の存在はただの一同級生、それだけだった。
――彼は知らない。
この最後のボスが持っている、悪趣味な呪いを。
――彼は知らない。
僕がこのボスの、最終調整をしたのだと言う事を。
――彼は知らない。
カウンタースキルに対しては「耐性アクセサリー」がすべて無効になっている、と言う事を。
「あと1割! 決めるぞ!」
「了解っ!」
最後の決め手、とばかりに彼が大技をふりかぶる。
僕はその瞬間に飛び出した。
「え?」
「ちょ!?」
「まさかFI!?」
かけるスキルは、言わずと知れたユニークスキル。
完全に虚をつかれた後衛陣の脇をくぐり抜け、僕はフレンドである彼にスキルを投げる。
「死にさらせえええ!!!!」
「フォーチュン・インバート!」
『カウンター・デス!』
魔王へ挑みかかり叫ぶ彼と一直線にスキルをかける僕。
死亡と同時にカウンターで即死スキルを発動する魔王。
一斉に僕へ攻撃する後衛たち。
―――Fumbleの文字が見えた事に、安心しながら僕は目を閉じた。
『――魔王の死亡には、生贄が必要だと思わないかい? ねぇ、迷える羊たち』
―――
「――『勇者を殺した気分はどうだい?』か」
「死んでないよねぇ」
「死んでないなぁ」
死んじゃうと思ってたんだけどねぇ。
そう呟いて、僕は弱り切った手を翳す。
同級生と言う事でぶち込まれたその部屋には、僕と彼しかいなかった。
「いや、面白かったぞ? 幸運値インバートって、俺とお前の数値が反転するスキルだったのな」
「君幸運値高かったんだね……」
「おう。100にして臨んだぞ?」
MPKだと思われている僕は後衛に当然攻撃されるだろうと踏んでいたので、攻撃されて当然と死ぬつもりで臨んでいた。
だから何をされても回避行動を取るつもりはなかった。
だが、勇者……というか、彼の幸運値はブチ抜いていて、回避だけ馬鹿みたいに高い僕にとって、反転したことでもたらされた幸運100の判定は、ほぼ攻撃が当たらないと同義だったのだ。
結果、魔王が我の生贄がどうたら言っている横で、死なずに笑う彼と攻撃を全回避した僕が出来上がった。
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。
もうね、ポカーンってする後衛全員と。
悲壮感漂う音楽が流れる間に、虚ろに木霊する魔王アナウンス。
一瞬ののち、理解して大爆笑する同級生。
『ちょ、避けすぎだから!! 後何このメッセージ。幸運値が足りません。即死攻撃が受け取れませんとか出てるんだけどなんだよこれ、ひでえ、ははははははは!! 受け取れませんとか! 失敗しましたじゃないとか!』
次々とログアウトして行く中で、最後まで残った僕らは顔を見合わせ、お互い笑うしかなかった。
「まぁ、助けてくれてありがとうな?」
「……いや、幸運値100でも多分問題なかったよ…」
100ってマックスだからきっと絶対回避だったよねー…0じゃなくても100で十分だよねー…。
幸運100だったらそもそもデススキルかからず、まともに終わったんじゃないかなーとか。
うわぁぁぁぁぁ穴があったら入りたいいいいぃぃぃ!!!
「まあ、いきろ」
「うわぁぁぁぁん!!!!」
―――こうして僕のデスゲームは、とても黒歴史で閉じのであった。
ちなみにプログラムで死亡扱いになるって言うのも実は嘘で、殺人にはならなくて死んでも普通に出てこれたらしい。
倫理的に相手を殺して出てくると言うのはどうか、って意味合いでクリア推奨になったんだって。でもデスゲームって言わないとクリアに必死にならないのと、ぶっちゃけ他の対処に忙しくて後回しになってたのをゲーム内で誤解されてただけなんだって……。
もう生き恥だよ馬鹿……。
――
我に返る悲壮感漂う厨ニ病の図。
補足。
回避100+幸運100=絶対回避
インバートはInvert。動詞。使い方? 造語です。
ファンブルはTRPG用語から大失敗の意味で取ったけど使い方があってるのかは不明。
ホントはもっと誤解に誤解を重ねつつ勇者(?)と交流を深め、イイハナシダナーってするべきなんですが、そもそもデスゲー書けないので、ラストシーンだけ抜きだしてみました。
後気付いた人は気付いたかもしれませんが、このゲームで死ぬ予定だったのは「ひとり」です。誰も死んでませんけどね。




