プロローグ0
「聖霊術」
世界のあらゆる物質に宿ると言われる精霊の言葉を聞き、その力を行使する術。
森羅万象あらゆる物体は、その精霊の影響を知らず知らずの内にでも受けているとまで言われている。
大昔の日本の百鬼夜行も、神隠しも、元をただせば精霊が関係しているという説もある。
百鬼夜行は、精霊が人々の悪しき思いを具現化し、悪霊や妖魔と言った物に変化した姿とも言われている説もある。
しかし、勘違いしてはいけないのが、精霊自体には明確な善悪は無いという事。
昔から人々の隣人となり、悪霊や妖魔を聖霊術の力の源となって活躍してきたのもまた、同じ精霊なのだ。
更に一部の優秀な術者になれば、生活の中の様々な物に精霊を宿らせることの出来る付与師と呼ばれる者も存在し、術の行使の苦手な術者にも悪霊に対抗する術を与える事の出来る者もいる。
そして、極稀にではあるが精霊を宿した装飾品を武器として、悪霊や妖魔と戦う専門家も少なからずいる。
その装飾品を総称して「SA(スピリチュアル・アーマー」や「SW」と呼ぶ。
しかし、その制作者は殆どいない。
他にも、同じく精霊の力を借りはするものの、突然変異の様に自らの肉体から特殊な力を放出できる者も存在する。
それが、「魔術」「呪術」と呼ばれる物。
ただし、この二つには明確な違いがある。
「魔術」は言うなれば生活に則した便利な、力を持つ者なら誰でも使える(使える者自体はそれ程多くないが)術だ。
対して、「呪術」は言うなれば悪しき心を持つ者が使う術。
人を憎む心が強ければ強い程、その力を増していく。
このように、万物において、光と闇が表裏一体であるように、精霊にも「聖霊」と「悪霊」が強い結びつきを持っている。
そして、強い聖の光の傍には必ず強い悪の闇が存在するという事も、必然である。
これは、普段微笑ましい家庭の中にも例外なく存在する事だ。