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結菜、小四の秋

 えーまず、この話は短編用に書いたものを三分割にしました。連載となっていますが、ざっくりした話の進み方になります。

 作者の書きたいと思った要素をこれでもか!と詰め込んだ設定です。

 なのでよくわからん展開になるかもしれませんが気にせずスルーしていただけると嬉しいです。

 因みに恋愛要素はちらっとだけしか出ませんよ!


 では、それでも良い方はどうぞお読み下さいませ!

 私の家の隣にはすっごく可愛い子が住んでいる。しかも周りでは密かに“和風美少女”って呼ばれてる。

 その“和風美少女”は私が小学校四年生の秋頃に隣へ越してきた。まあ厳密には越してきた、というか暮らし始めた、だけど。

 私が住んでいるところは田舎ではないけど都会でもないという微妙な場所にある普通の住宅街。唯一普通じゃないとすれば私の隣にある昔ながらの~、な大きな日本家屋があることくらいかな。すんごい立派。

 それまでその家にはお婆さんと数人のお手伝いさんしか住んでいなかったけど、お婆さんの孫にあたる“和風美少女”が何かよく分からない事情により期間限定で移り住むことになったと聞いた。確かー、小学校卒業までだったかな?

 ……全体的にぼやっとしているのには突っ込まないでっ……! その時の私は今よりも子供らしい子供だったし、両親というかご近所にも詳しい話は知らないみたいだから仕方ないのっ!

 ……まあ、お隣さんからの挨拶で初めて会った時別の衝撃で話を聞いてなかったっていうのもあるけどね。



*****



 あの日はいつものようにカラッとした秋晴れの空だった。

 家のインターホンが鳴り、誰だろうと玄関を開ければそこには優しそうな顔をしたお隣りのお婆さん、と――

「こんにちは。休みの日にごめんなさいね。お父さんかお母さんはいらっしゃるかしら?」

 お婆さんの後ろにいる何かを見る前に話し掛けられたので、慌てて視線をお婆さんに向ける。

「あ、こんにちはっ。えっと、ちょっと待っててください。二人共いるので今呼んできますね!」

 お婆さんが来るなんて珍しいなあと思いつつ両親を呼びに行く。そうして玄関へやって来た両親がお婆さんにまず挨拶をしてから「どうかされました?」と尋ねた。

 お婆さんは皺を深くして微笑むと、

「突然にすみません。今日から可愛い孫と一緒に住むことになりまして、確かこちらのお嬢さんと同い年だったと思うので顔合わせも兼ねて挨拶に伺わせていただきました」

 お婆さんがそう言うと、さっきから気になっていた後ろの陰がスッとお婆さんの前へと出た。

「今日から隣で暮らすことになりました水無月みなづき琴音ことねです。宜しくお願いします」

 薄い桜色の着物を着たその女の子は可愛らしい声で挨拶し綺麗なお辞儀をした。

 私は思わず目を見開いて固まる。

 その子は平均よりも高めな身長の私から見てもかなり低く、けれどツヤツヤした黒髪は腰下までと長い。小さい顔にくりっとした瞳は黒曜石のごとき綺麗な黒。鼻梁はスラッとしていて、ぷるぷるとした小さい唇。

 まさに完璧。

(……――――っっっ和風な美少女キタァァァ!!)

 私は心の中で全力でガッツポーズをとった。私は可笑しくないと思う。

(何この子。可愛い。やばい。芸能人も真っ青だわ!)

 でも固まっていたのは正味一秒くらいだと思う。失礼だからね。すぐににこっと笑顔を返す。心の中ではまだ叫んでいたけれど。

 普段から表情と心の中で温度差があるなあとは思っていたけれど有難いと思ったのは初めてだった。

「私は武里たけさと結菜ゆいな。小学四年だよ。宜しくね」

 と右手を出す。第一印象は大事だもんね。

 けれど右手は握り返されない。というかビックリしてるような顔でじっと顔を見て来て私の右手には気が付いていないようだ。

(……穴が開きそう。私が美少女を見るのはともかく、美少女にこの平凡顔を見られるのはなあ……。何だろう、ベタだけど顔に何かついてるのかな?)

 空いてる左手で顔を確かめるなんてことはしなかったけれど首は傾げていた。

 その私の動きにハッと気が付くと、私の差し出している右手を見てやっと「宜しく」と笑顔で握り返してきてくれた。

 私はそれに笑顔を返したが、心の中ではさっきの反応について考えていた。

(……何だろう今の。本当に私の顔に何か…………、んん? あれ、れ?)

 それもすぐに頭によぎったで事のせいで忘れてしまったけれど。

 頭の中では疑問符だらけだけどそれを微塵も出さず、取り敢えず表面上はにこにことお互いに笑い合う。お婆さんは私達を見て顔を綻ばせた。

(何か若々しいお婆さんだなあ。というか笑うと目尻がこの子そっくりだわ)

 いや美少女がお祖母さんに似てるんだけどさ、と一人ツッコミしてるとお婆さんが弾んだ声で言ってきた。

「ああやっぱりこの子と同じだわ! 良かったわ。結菜ちゃん、この子と仲良くしてあげてね」

「はいっ」

 私は迷わず即答した。可愛いモノは正義、という心情により。

(そう、可愛いモノは正義。愛でるもの。それがたとえ……――)

 下ろした手をこっそりとにぎにぎ開いたり閉じたりする。握手したときの琴音の手は結菜よりも少し大きいけれど白くてスベスベとしていた。


(……――ビックリするほどすんごい美少女のような男の子(・・・)であってもだ)


 断言出来るような根拠も自信もない。けれど何故か握手をしたとき私はそう感じた。それが今までの短い人生の経験からなのか何か訳の解らないお告げからなのかは判らない。あー若しくはオンナのカンね。

 ちろっと職業が整体師の両親を盗み見る。が。

(気付いてないっぽいなあ……)

 和やかにお婆さんと話している両親の顔には特に違和感を感じているようには見えない。

(うーん……やっぱりアレかな? 漫画でよくある“旧家のシキタリ”とかゆーやつ。子供のときは女の子の格好をしないと死んじゃうー、とかなんとか)

 私は最近友達に貸してもらった漫画の内容を(因みに有りがちでイマイチと思った)思い出しながら特に問題も無く会話をする。話してるそばから内容が右耳から脳を経由して左耳から出て行ったけれど。

 何はともあれこれからよろしくという挨拶が終わると二人は帰った。



 二人の姿が見えなくなったところで私達は家に戻った。先にお母さん、お父さんと中に入り、最後に私が後ろ手にドアを閉める。そのまま自分の部屋に行こうかなと思ったけれど、さっき思ったことをリビングに戻るお父さんに訊いてみた。

「あのさあ、お父さん……」

「なんだい?」

「さっきの子ってさあ……」

 何て訊こうかなと口ごもる私に、リビングの入り口で振り返った父が「あー」と何故か納得顔を見せる。

(あーって、まさかやっぱり!?)

「……まだ何も言ってないけど、あーって何?」

 心の中では驚きつつも、顔は眉根を寄せて訳が解らないという表情を作った。自分でも器用なことしてるなあと本当に思う。

「結菜が言いたいのは、あんな美少女と友達第一号になれて嬉しいってことだろう?」

 良かったな結菜!と晴れやかに言うお父さん。

(全く違う。)

 溜め息を吐きたいのを必死に我慢する。お父さんは先に相手の言葉を予想して返事をする癖があるけど、私は今まで話が噛み合ったとこを一回も見たことがない。

 次こそ止めなよとは言おうと思っていたけれど、それよりも今は別のことに引っ掛かっていた。

「ええっと、あの子って、琴音ちゃんだっけ? って美少女・・だった?」

「……はあ? 少女だったろう?」

 お父さんはおかしなことを言っているな、というような顔をした。失礼な。けれど私はそれを気にする余裕などない。

(子供の身体でも本職プロの言ってるんだから……。あー、私の気のせい、かあ……)

 そーだよねえ、漫画のような展開が実際にあるわけがないよねえ、と一人心の中で大きく頷く。無理矢理だったけど。

 私がそう一人で納得している間お父さんは「あんな美少女は滅多に拝めないな。私が後10年若かったらヤバかっただろうなあ……」とかなんとか変態ロリコン発言をしていた。……その後すぐにお母さんが満面の笑みでやって来てリビングへと引きずられて行ってしまったが。

(たまに残念な父親だよね……)

 と私は晴れ晴れとした気持ちで意気揚々と自分の部屋へと向かった。



 しかし。

 これから数日も経たないうちに勘違いだと思い直したことが事実だったと分かり、それ故に胃の痛みや気苦労の絶えない日々を送るようになるのだが、この時の私はまだ知らない――――



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