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開幕前話


=====政府広報=====

ここは「ルカ王国」


鳥が歌い、緑が溢れる大地の上に成る国。


流れる風は心地よく、清らかな水に満ちた国。


女神の祝福を受けた女王と、その王配が収める国。


平民たちは飢えることなく、恐れることなく生きる国。


どんな種族にも平等で、どんな者にも機会が与えられる国。


あなたも、この国で暮らしてみませんか。

ご興味のある方は下記の連絡先までご連絡を。


ルカ王国移民局移住課 xxx-xxxx


===========









「--みませんかっと。課長!書き終わりましたよー。」


「ええ、でしたら貼り紙を各国大使館に送りつけておいてください。それぞれの国で貼っておいてもらえるよう説得済みです。」


スーツのような同じ服装をした二人の男性のやり取りから一人は部下であり、もう一人はその上司であることが伺える。

仕事をこなし、指示を受けて送るための手はずを整えた部下は多少不満そうに机についている。


「なにか気に入りませんか?」

上司が部下に尋ねると


「いやあ、たしかに二昔前はこんな感じの国でしたがねえ。

ちょっと前までは、

鳥が食われ、緑が枯れて行く国。

流れる風は魔素を含み、赤茶けた水を濾して飲む。

女神の祝福を受けた女王は討たれ、その王配が処刑された国。

平民たちは官僚に怨嗟の声を上げ、貴族の台頭を待ち望む。

全ての種族は官僚たちに虐げられ、等しく苦しみ生きていく。


な~んて、絶望に溢れた国だったじゃあないですか。

まあ、貴族と軍のクーデターのお陰で持ち直しそうではありますが、

どっちかってーとゼロからスタートみたいなもんですから『来たれ!開拓者よ!!』ってした方がいい気がしますよ?」


部下はどうにも自分が書いたものが実態とかけ離れていることに気が咎める様で、

自分の給料が下がらない程度に不満を上司へとこぼす。


上司の男は部下の不満に小さくため息を吐きながら、

「確かに君の言うことは正しいですが、うちの国は歴史だけは2千年と長いせいか世間体を気にしているんですよ。上の方からはあくまでも『来たかったらどうぞ』というスタンスでいろ命令されているからね、こういう風にするしかないのさ。」


上司は上司で葛藤はあるらしく、右手でこめかみを揉みながら部下の不満に答えを返した。


「う~、まあしょうがないですかねえ。また女王様が決まれば数年で元通りって考えれば長い眼でいえば嘘じゃないですもんね。」

部下は上司も大変だと思いながら、自分自身を納得させられる理由が見つかったことで、ひとまず溜飲を下げることにした。


「ええ、早ければ来月にも新しい女王様と王配が決まりますからね。そうすれば女神の加護はもどり、昔のように楽ができるというものです。」

上司も部下が気付いたことに自分自身も思い至り、頭痛の種ももう少しで消えると希望を見出した。


「そういえば、君も王配に成るには丁度良い年頃でしたね?やっぱり期待したりするものですか?」

上司はそういえばといった感じで部下に話題をふってみると

「いや~、自分はそういうの柄じゃあないですから、いくら資格があっても、まず選ばれないですって。それにあれは貴族様でなきゃそうそう選ばれないでしょう?」

部下はまずありえないと軽く返す。


「いえ、こればかりはわかりませんよ。建国の女王の王配は農夫であったと言われていますから、可能性が無いわけではありませんよ。っと、さあ雑談は終わり。お仕事ですよ。」


上司は入り口から人が入ってくることに気付き、部下を促した。


「承知しましたっと。


ようこそ移民局移住課へ、本日はどのようなご用件でしょうか。」


雑談を終え、仕事に戻る部下。さっきまでの軽い空気は失われ、

仕事の時間といった適度な緊張感のある空気に変わる。


その職場の職員も、今は言ってきた客人も、皆が皆、

初夏のような暖かい日にも関わらず、皆手袋をはめていた。




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