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今日もほうきで空を飛ぶ 〜罪と魔法の都市リグロス〜  作者: 月宮


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2/2

病院にて


私は都市の郊外のアパートの一室で、一人暮らしをしている。だから、栄えている地域に行くまで、ほうきで数十分飛ばさなきゃいけない。


ほうきに乗って住宅街の上空を進んでいくと、遠くに高い建物群が見えてきた。あそこがいわゆる経済の中心地。私たちが住む「魔法都市リグロス」のもっとも栄えてる場所だ。


中心地に近づくにつれ、空の人通りも多くなってきた。ほうきや絨毯に乗って移動する人、空飛ぶ車でものすごいスピードを出す人…等々、多種多様な移動手段で、人々が動いている。


高層ビルの合間を抜けていくと、病院が見えてきた。

私の母は…病気を患っていて、今は都市でいくつかあるうちの、3番目に大きい病院で入院している。




病院の受付カウンターに行くと、いかつい顔をした女性スタッフーーマレーノさんが待ち構えていた。

病院で診察を受けたり、面会をしたりするには、彼女に手続きしてもらわなきゃいけない。「ゲートガーディアン」との異名を持つ彼女は、別に悪い人じゃないんだけど、雰囲気とか言葉の節々にマジで威圧感があって、尻込みする人が続出している。今は慣れたけど、私も最初は怖かった。


「すみません、あの、本日11時から面会予定のソルシエなんですけれど…」


私はそう言い、ポケットから()()のカードを出して、彼女に見せる。


「ああ、あんたかい。まああんたなら別に照合は必要ないかもしれんが、念のためだ。カード貸しな。」


マレーノさんはそういうと、私からカードを受け取り、横にある機械の上にかざす。


画面には「verified 」の文字。本物って意味だ。


「すまんね。疑ってるってわけじゃないんだが…。近頃は、カードを偽装して検問を通ろうとする輩も多いそうじゃないか。治安が悪いったらありゃしない。」 


「いや、良いんです。」


カードを私に返しながら、そう愚痴るマレーノさん。受け取ったカードの青色が、光に反射して鮮やかに輝く。


……個人識別カード。政府公認で発行されてる身分証明証だ。カードには顔写真、名前、生年月日、有効期限…等々、各々の個人情報が書いてある。


ただ一つだけ面白い要素があって…それはカードの色。私たちのような、このリグロスで生まれ育った原住民は青色。そして、リグロスの外のからやってきた、いわゆる「転生者」は赤色。


原住民も転生者も人間だから、混ざってしまえばどっちがどっちか分からない。だから、原住民か転生者が見分けたかったら、カードの色を見るのが一番早かったりする。


マレーノさんの言った通り、カードを偽装する人もいる。自分がどの属性の人間かというのを知られたくない人もいるし、原住民しか入れないエリア、みたいなものもあったりするから。

でも、カードの光沢にはすごく希少な鉱物が使われてるらしいから、完全な複製はほとんど不可能みたい。


「じゃあ、面会時間は2時間だ。大事に使いな。」


マレーノさんにそう言われ、私は頷いて踵を返そうとした。その瞬間、


「ソルシエ君、お久しぶりだね。」


ふと、自分の名前呼ばれ、後ろを振り返る。そこには眼鏡をきらりと輝かせる初老の医師…ルードフ先生がいた。私のお母さんの かかりつけ医だ。


「ああ、ルードフ先生。びっくりした。お久しぶりです。」


「うむ。ところで、君のお母様のことで…少々よろしいかな。」


「…え、」


神妙な顔つきで 私に話しかける先生。まさか…お母さんに何かあった…?


「いや、お母様は無事だよ。だが、少し君に伝えなきゃいけないことがあってね。」


私の心情を察してか、言葉を付け加える先生。無事という言葉にひとまず安堵する。…でも、伝えなきゃいけない事って何だろう…。


「なんだ、先生。珍しいな、いつも医務室にこもりきりのあんたが受付まで来るなんて。何か大事でもあったのかい?」


カウンターから身を乗り出して聞いてくる マレーノさん。


「いつもこもりきりなんてとんでもない。私とて、担当の患者にいつも寄り添っているよ。今日はたまたま受付でソルシエ君に会ったが、患者に面会が来る日にはいつも同席しているさ。…さて、ソルシエ君。私の医務室までいいかね?」


それくらいしかできることがないからね、と謙遜混じりの苦笑で、先生はそう話した。




「お母様の病気の原因に関してだが…化学物質による影響だという話になった。河川に流れたそのような有害物質による公害が年々広がっているからね。」


ルードフ先生の医務室。椅子に座ってカルテを眺めながら、先生は私にそう告げてきた。先生が私に見せてきた画面には、お母さんの体の皮膚の写真や、骨のレントゲン写真が映っている。肌の写真は、いたるところに赤黒い斑点模様が映っていた。


「そうですか…。」


「心苦しいが…前にもお伝えしたように、お母様の病気の治療法は見つかっていない。だから、私たちにできることは、鎮痛剤を投与して、少しでもお母様の苦しみを緩和することだけだ。」


辛そうに、しかし淡々を事実を告げるルードフ先生。専門的なことは全然わからないけど、お医者さんが治せないっていうんだから、私もその言葉を飲み込むほかない。


「放っておくと、死に至る可能性もある。私たちもなんとか症状を緩和させようと努力しているが、回復する保証はできない。万が一のことがあっても後悔しないように、君もお母様にできることをやってあげなさい。」



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