二話
「ひかる〜はやく行くぞ!」
声の主は城崎伊織。光の親友の一人である。
「わかってるって。ちょっと祝福の果実がどんなものかなって考えてただけだよ。」
「そっか。だけど考えるより試したほうがはやいだろ。」
「ただ効果を試すだけじゃつまらないだろ。まぁ、そろそろ時間だし行くとするか。」
「おう!」
軽く会話を交わした後、2人は外へ移動した。
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「さて、それでは祝福の果実の効果を体験してみよう。安全確認はしているから問題はないぞ。最初に試したいやつはいるか?」
降谷先生が問いかけるが真っ先に立候補するものはいない。それもそうだろう。名前や効果を少し知っているだけでは、未知そのものだ。未知への恐怖は計り知れないものなのだから。
(仕方ないな。このまま授業が進まないのも面白くない。俺が行くか。)
光が心の中でそう考え、立候補しようとする。
「「俺がやります!」」
奇しくも声が揃う。1人は光だがもう1人は…
「やっぱり伊織か。」
そう。もう1人の声の主は伊織だった。
「まぁ、こういうとき真っ先にやりそうなのは俺以外にはお前しかいないよな、光!」
「いや、俺は最初じゃなくていいよ。伊織、お前が先にやれ。」
「いいのか?ありがとな!じゃあお言葉に甘えて俺からやります、先生!」
「決まったか。それでは城崎からやるとしよう。これが今からお前に試してもらう祝福の果実、エネルギー出力小上昇だ。」
そう言って、降谷先生は黄色のブドウのような物を取り出した。
「さあ城崎、一粒食べてみろ。」
伊織はそう言われて、房から一粒取り口に入れた。
「……!なんだ、これ。めっちゃうめぇ!」
「神に祝福されし大地で採れるのだから、味は期待できるだろう。色の種類と濃度で大まかな効果が分かるのだが、興味があるものは調べてみるといい。ちなみに黄色はエネルギー出力上昇だが、これは霊力、魔力、神力など、全ての力の源に影響するから、どの世界でも有用だな。色が薄いから効果は小さいというわけだ。」
降谷先生が軽く解説してくれている。しかし、生徒は皆特別な力を持つ者たち。それだけで満足できるわけもなく。
「先生、説明は分かったから、効果を見せてくれよ。」
「そうだね、早く伊織君に実演してほしいわ。」
「先生!俺もそろそろ力を試してみたいです!」
生徒たちの好奇心はもう破裂寸前だ。
「そうだな。それじゃあ城崎、霊力を限界までためて球状にし、あの方向に放て。ちなみに先日の実技テストでは飛距離は17mだったからそれを超えるはずだ。頑張れ!」
先生に言われ、城崎が霊力を集め始めた。