出会い
カキーン
そんな軽快な音が冬の澄んだ青空の中で響く。
その後には、オーッ!という歓声が続いた。
うるさい。
そう思い、安田里緒はベッドからゆっくり起き出した。
「もぉ...朝っぱらからなんなのよぉ...」
ぶつぶつ文句を言いながら、里緒はカーテンを開けた。
すると気持ちの良い朝日が差し込んできた。
慣れない目にはその日差しは強すぎて一瞬視界が真っ白になった。
けれど、慣れるとその日差しは気持ちがよくまた瞼が閉じてしまう。
カキーン
夢の世界に行きそうになった瞬間また軽快な音が響いた。
里緒はその音が気になり、窓を開けた。
すると日差しとは裏腹に冷たく鋭い風が吹いていた。
「あ...野球の試合だ」
里緒の家の目の前は市民グラウンドがある。
休日になると野球、サッカー、ホッケーなどが試合や練習をしている。
今日は野球の試合のようだった。
「こんな寒いのに、元気だなぁ...」
里緒は寒いのが苦手なのである。
だから冬になると部屋にひきこもってばかりだった。
ピッチャーマウンドには背がスラリと高い少年がいた。
その少年はキャッチャーのサインにコクリと頷き、一瞬目を瞑った。
里緒は昔から目がよかった。
けれど、目がよくてもそんないいことはない。
けれど今日、初めて目がよくてよかった、と思った。
だってここからでも見えたから。
少年が。
「あのピッチャーの人...かっこいいかも」
少年はまるで光を纏っているようにきらきらしていた。
¨この場所は俺のものだ¨
そう言っているような気がする。
きっと少年は野球というものを心から愛し、慈しんでいるのだろう。
そして楽しいと思っているのだろう。
「輝いてるなぁ...」
思わず口に出してしまうぐらい里緒には少年が輝いて見えた。
あとで思い返してみれば、それはただ少年に恋したからだったのかもしれない。
ボォーっと少年を見つめているとその少年がこっちを見た...気がする。
思い込みかもしれないが少年がこっちを見た気がしたのだ。
¨逢いたい¨
そう感じた。
初めてだった。
けれど、なぜが逢いたくなった。
里緒はパジャマを脱ぎ捨て、適当にその辺にあるものを着た。
そして階段をかけおり外へ飛び出した。
そう、これがあたしの苦しい苦しい恋のはじまりだったんだ。