88 反則スタート
結菜にドライブスルーの指示が出ました。彼女は何かレギュレーション違反をしたようですけど……
teamSHOWGOの結菜にドライブスルーの指示が出ています。
「美郷さん、これは……」
小林さんは、こういうのは初めてかな……
「何か、レギュレーション違反をしたみたいね」
「そうですか……」
「まあ、これで小山内も4位だし、前を追って行けるだろう」
そう言うのは深田GMです。その時、結菜がピットロードを通過して行きました。
「本多君、ボックス!」
そうだ、タイヤ交換をしないといけません。結菜のレギュレーション違反があって忘れるとこでした。
『了解』
「杏香も16LAPにボックス!」
『了解、結菜に先を越されたからちょっと差が開いたかな』
杏香はレギュレーション違反があった事を知らないようです。
「杏香、まだ前半戦だから大丈夫よ!」
なんたって、結菜はもう一度タイヤ交換の為ピットインしないといけませんからね!
「本多ピットイン!」
本多君はこのレース余裕なのかな、ヘルメット越しに見える表情も笑顔で満ち溢れてるようです。
その後、本多君は7秒くらいでタイヤ交換を終えピットアウトです。暫定順位7位です。
しかし、本多君の前を走っているのは、タイヤ交換を済ませていない面々なので、実質トップです。
結菜も今現在は、本多君の後方9番手にいますけど、彼女はタイヤ交換をしないといけません。
ペナルティが重くのしかかっています。今回の入賞は無理かな……
「小山内ピットイン!」
杏香のタイヤ交換は8秒くらいでピットアウトしました。
暫定順位は、本多君と結菜の間、8位です。
今、トップの二台松島と中森が同時にピットインです。
これで本多君が5位、杏香が6位、7位の結菜がここでタイヤ交換の為ピットインです。
『あれ、結菜がまたピットに入ったけど、マシーンの調子が悪いのかな……』
杏香が無線でそう言ってますけど……
「杏香違うのよ! 結菜は最初にペナルティでピットに入って、今がタイヤ交換なの」
「ふーん、それはお気の毒に……」
杏香はそう言っているけど、明日は我が身だからね!
そう言っている時でした。
「えっ、そうなんですか? 解りました」
GMに何か連絡がありましたけど、不吉です……
「美郷さん、小山内にレギュレーション違反があったから、ドライブスルーの指示をしてくれ!」
えっ、杏香にも…… ペナルティって何をやらかしたのかしら?
コース内の掲示板に今度は『D068』の表示です。
「杏香、ドライブスルーの指示が出てるから、すぐにピットロードへ入って!」
『えっ、なに? ドライブスルーって? バーガーを買うとかじゃないよね』
何言ってるのこの娘は! そのドライブスルーじゃないわよ、まったく……
「杏香、ピットロードへ入りなさい! そして、速度を落としたまま通過してコースへ戻りなさい」
『うん、解ったけど…… なんで?』
まあ、そうだよね…… 私も理解してないから杏香も解らないよね。
「あなたはなんらかのレギュレーション違反をしたのよ! だから指示通りにして、そうじゃなきゃ失格よ!」
『りょ、了解」
杏香は意味が解らないようだけど、パナソニックコーナーを過ぎメインストレート手前からピットロードへ入りました。
そのまま速度を落としてteamKAEDEのピットを通り過ぎてからコースへ戻って行きました。
杏香がコースへ出た時『D068』の表示は消えましたけど…… レギュレーション違反ってなに?
「GM、杏香の違反ってなんだったんですか?」
私がそう訊いたら、GMは顔を顰めて頭を振りながら……
「反則スタートがあったようだ」
「反則スタート? それって……」
「フォーメーションラップをしてグリッドへ戻った時、表示されているグリッドのラインからフロントノーズが飛び出していたようなんだ」
まあ要するに、よーいドンでスタートする時に片足がスタートラインからはみ出していたみたいな事ね。
「ふーっ、ちょっとした事でペナルティを貰って、今日はもう駄目だな……」
源さんも複雑な心境のようです。
でも杏香は、諦める事なく走ってますからね!
「小林さん、杏香の順位は?」
小林さんはモニターを確認して……
「えっと、15位です…… ちなみに木村は14位です」
うーん、結菜よりひとつ下なんだね、でも、よりによって杏香も結菜もペナルティをもらうなんて……
そう思っている時、杏香が結菜を第1コーナーからコカコーラコーナーまでの緩やかなストレートでオーバーテイクをして上位を目指します。
私達スタッフはもう駄目だと諦めているのに……
杏香に触発されたのか結菜も杏香を追い掛けます。
残り10LAP、入賞圏内に入れれば良いんだけど……
一方、本多君は相変わらずトップを守っています。
2番手に中森が追って来てますけど、本多君と中森の差は1秒くらいあります。
3番手に松島なので、本多君の独走状態です。
「美郷さん、小山内さんが11位まで来ました」
「えっ!」
杏香、あと一台抜けば入賞圏内だけど……
「本多、優勝まであと一周だ!」
山口君は、本多君の久々の優勝が嬉しいようです。
しかし、杏香はなかなか10位まではいけないようです。
そして、本多君が最終パナソニックコーナーを周ってメインストレートに入って来ました。
「決まったな……」
源さんはちょっと複雑な心境ですね。
本多君は右手を高々と挙げ、今、ゴールしました。今季3勝目です。
結局杏香は入賞圏内には届かず11位、結菜は12位で終わりました。
第7戦はペナルティをもらってしまったので杏香も結菜も入賞圏内に届きませんでした。でも、本多君が優勝しました。




