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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第四章 移籍
80/133

80 ウイングとタイヤとグリップと……

ウイングのフラップをねかせてダウンフォースを緩くしました。それで午前のフリー走行でスピンをした杏香でしたが……

 午前のフリー走行が終わり、お食事タイムです。杏香(きょうか)はレースアンバサダーの柚月(ゆづき)さんと木村結菜(きむらゆいな)の三人で食事をしています。


 あれ、もう一人のレースアンバサダー斎藤彩女(さいとうあやめ)さんは?


「彩女さん、こっち!」


 彼女を呼ぶ声の先には本多(ほんだ)君がいました。あの二人も良い感じなんだよね。


 はあ…… 私は…… どうなっちゃうんだろう……


 来シーズン、もし杏香がF2へ行く事になったら、私も一緒に行く事になるのかな……


 でも、杏香がステップアップしたら新しいドライバーだって来るだろうし…… 私はチームディレクターなんだからそんな事は言ってられない……


 でも、私はいつになったらあいつのところに行けるのかな……


 そんな事を考えてしまいました。まだどうなるかも解らないのに……




 午後からのフリーは、何事もなく無事に終了する事が出来ました。


 ウイングのフラップについても、杏香が完璧な走りをしたので、一応このままという事になりました。


 杏香はコツを掴んだとは言ってたけど、本当に何かを感じたのかな……


 タイム的にも良い感じだったので明日の予選と決勝ではファステストも出るかも知れません。




 翌日、予選が始まります。車検も問題なく終わりましたけど、七月のレースなので気温も高く路面温度も高いです。タイヤに厳しいレースになりそうです。


「あーっ、あちーっ!」


 杏香はそう言いながら上半身のレーシングスーツを脱ぎ両袖をウエストの位置で巻き付けTシャツ姿で、ウロウロした後ミネラルウォーター片手にパドックに避難して来ました。日陰だから少しは違うんですよね。


「杏香、カメラ小僧もいるんだから注意しなさいよ」


「大丈夫だよ! 別に透けてないから」


 まあ、透けてないなら良いか、胸は大きくないから目立たないしね……


「小山内さん、今日は予選から路面温度が高いからタイヤに気をつけてね!」


 山口(やまぐち)君からそう指示がありました。


「えっ、どういう事ですか?」


「うん、スーパーフォーミュラでは柔らかめのソフトタイヤを使うからタイヤのグリップ力は強いんだけど、今日みたいに路面温度が高いとあまり長く持たないんだ」


「えっ、それって大丈夫なの?」


「だから、あまり無理のない走りを頼むよ! 明日もあるからね」


 杏香も色々思うところがあるのかな、でも今までもやって来たでしょう……


「うーん、無理のない走りか…… でも、明日の分は支給されるんでしょう」


「うん、そうなんだけど、なるべく温存したいから」


 タイヤもマシーン一台につき3セット支給、3セット持ち越しの6セットで1レースを走らなければなりません。しかもタイヤにはグリーンの塗色がありますのでそれ以外は使えないのです。


「まあ、でも今まで通りQ1とQ2はタイヤを1セット、決勝では2セット使うから、ニュータイヤでスタートした後いつも通り15LAP越えたくらいでタイヤ交換をする予定だから、なるべくタイヤに負担を掛けないようにね」


「うーん、でもグリップが強いとタイムに影響しないですか? 折角ウイングを調整してるのに」


 杏香はそう訊いてますけど……


「そこは大丈夫だよ! 他のチームも同じようなものだから、それに小山内さんはウイングの角度の件もあるからタイヤのグリップ力は余計に大事なんだよ」


 まあ、山口君もソフトタイヤでグリップ力が強いから、ウイングの件は了承したんだと思います。


 これがミディアムタイヤだとそうはいかなかったでしょう。


「それじゃQ1予選、杏香頑張ってよ!」


「うん、行ってくる……」


 杏香は今回くじでまたもやA組だったので、ちょっとやる気が起きてません。しかもこの暑さじゃ、スーツを着てるだけで参ってしまいます。


 でも、マシーンでコースに出れば、すぐにスイッチが入るかな……


 その時本多君は、ピットでマシーンに乗ったまま瞑想中です。


「よし杏香、頑張って来いよ!」


 やる気の無い杏香に水上君が声を掛け、ピットレーンへ送り出しました。


 杏香がコースへ出た時、丁度カーナンバー70番のマシーンが杏香を抜いて行きました。あれは確か……


 杏香は、いきなり抜かれた事でスイッチが入ったのか、カーナンバー70番を追いかけます。


 もう、まだ予選なんだけどね……


「あーっ、あまりタイヤに負担を……」


 杏香の走りを見て山口君がポツリと愚痴をこぼします。


「チーフ、あいつはそんな事考えていないから、それに今日3セット使っても、明日の分は支給されるから」


 確かにそうだけど、夏のレースではなるべくタイヤを温存しないと……


「杏香、聞こえる!」


 私は無線で、彼女に呼び掛けました。


美郷(みさと)さん、どうかしたの?』


 この娘は、タイヤの事を完全に忘れているようね……


「もう、山口君からタイヤの件は訊いてるよね」


『うん、でも明日のレースの分は支給されるんでしょう』


 それはそうなんだけど……


「そうかもしれないけど、スピードを上げるのはタイムアタックの時だけにしときなさいよ!」


『はーい』


 気怠い返事が杏香から返って来ました。まあ、一応忠告はしましたよ。山口君も源さんも苦笑してしまいましたけど……


「杏香、Q2もそのタイヤで走るんだからね!」


 大事な事だから杏香にもう一度忠告しました。


『もう、判ったから!』


 杏香はそう言ってマシーンのスピードを落としました。


 杏香のアタック一回目1分22秒785です。他のマシーンが1分23秒台なのに……


「美郷さん、あと一回アタックしたらボックスで良いんじゃないかな」


 山口君からそう言われました。


 確かに、二位とのタイム差を考えても問題無いと思います。取り敢えずQ1は6位までに入ればQ2に行けますからね。

杏香のQ1は一人だけ1分22秒台だったので、早めにボックスにしました。取り敢えずQ2へ行ければ良い訳だから……

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