8 家族の反応
彼女と契約するため、彼女のご両親に了承してもらわなければならない。しかし、彼女の母親は問題ありのようだけど…… 彼女はなにをしでかしたのか……?
彼女はスマホでお母さんと話をしているんだよね……
「とにかく、一度うちに行くから!」
彼女がそう言った後も、スマホからは大きな声が聞こえているようだけど……
「何かあったの?」
「いえ、大丈夫です」
そう言いながら彼女はスマホのスイッチを切ってるような……
その後、私達は朝食を食べるためレストランの中へ入りました。そこには、美味しそうな物が並んでいます。スクランブルエッグにベーコン、ウインナー、オムレツ、揚げ物などがあります。私、こういうの好きなんですよね! あっ、焼魚にサラダバーもあります。主食にはご飯とパンが選べて、それに合わせてお味噌汁とコンソメスープもあるようです。
「さあ、何から食べようかな♪」
私はクロワッサンを三つとスクランブルエッグ、カリカリに焼いたベーコンと山盛りのサラダ、そしてグレープフルーツジュースをトレイに乗せてテーブルへ戻って来ました。小山内さんはご飯とお味噌汁、鯖の塩焼きに目玉焼きです。
「小山内さんは和食派なんだ」
私がそう訊くと……
「いえ、今日は和食の気分なだけです」
「そうなんだ」
「美郷さんは洋食派ですか?」
そう訊かれて、そう言えばどっちという事もないかな…… パンとお味噌汁を持って来たりするもんね。
「そう言えば、私もその時の気分かな」
「お互い気分屋なんですね」
そう言って二人で笑ってしまいました。
食事も終わり、チェックアウトした私達はタクシーで一度サーキット場へ戻ります。
「これから私の家に行くんですよね」
「うん、でも、車をサーキット場の駐車場に止めてるから戻らないと」
私がそう言うと……
「美郷さんはどんな車に乗っているんですか?」
「私のはNSXだけど」
「ホンダの車なんですね」
「まあ、チームでもホンダエンジンだし、スポンサーでもあるからね」
「そういうのって、やっぱりあるんですね」
まあ、そりゃそうよ! 強制はされてないけど……
「まあ、お世話になっているんだからそれくらいはね」
「何かメリットはあるんですか?」
「まあ、そうね…… レースをやってるとそれなりにね!」
「ふーん」
まあ、彼女はレーサーだから判らないかな。
「これが私の車よ!」
「凄い! 真っ赤なんですね」
「うん、ワイン系なんだけどね……」
彼女にそう言われて、私の顔も少し真っ赤になってるような……
その後、私達は高速道路を使って彼女の家へ向かいます。
「美郷さん、飛ばし過ぎですよ!」
えっ、彼女レーサーのくせに怖いとかじゃないよね!
「大丈夫よ! いつもこんな感じだから」
「捕まっても知りませんよ!」
彼女にそう言われ、私は140kmを指していたメーターを110kmまで下げました。
「それくらいが適正ですよ」
年下の彼女に言われてしまいました。でも、スピードを出すとスッキリするんですけどね……
私達は、高速道路を降りて彼女の家の前まで来ました。
「ここなの?」
「はい、そこの空き地に車を停めてください」
私達が車を降りたその時でした。
「あんたがうちの娘を唆しよっとね!」
そう言いながらその女性は私の側に来ました。
「あ、あの……」
「お母さん、やめてくれる! 私は唆されたりしてないから」
えっ、彼女のお母さん? これは、どういう事でしょう……
「お母さん、私、レースは辞めないからね!」
彼女のお母さんは娘に言われてタジタジのようですけど、この言葉は、何を意味しているんだろう。
「辞めないか! 外で大声を上げて、みっともない」
今度は、男性が外に出て来ました。彼は申し訳なさそうに……
「すみません…… 中へどうぞ」
男性にそう言われ、私は彼女の家に入りました。
「MAX SPEEDの人も心配で昨日家まで来てたんだよ」
男性が彼女にそう言いますけど、彼女は……
「お父さん、MAX SPEEDにはもう戻れないの……」
さっきの男性は父親だったみたいです。
「それで、杏香はどうしたいんだい」
彼女は父親を見て、その後私を見てから……
「私は美郷さんのチームでスーパーフォーミュラに乗る」
それを聞いた父親はちょっと頭を抱えているけど……
「杏香、何を言ってるの! あなたはこの間のレースで死にかけたのよ!」
「お母さん、オーバーだよ! スリップしてコースアウトしただけだから」
まあ、ご両親が心配するのは解るけど……
「あなたは反対なのよね!」
母親は父親に同意を求めているようだけど……
「杏香がやるって言うなら、俺達は見守ってやるしか無いだろう」
「あなた!」
「何でもかんでも反対すれば良いと言うものじゃ無いだろう。杏香のやりたい事を応援するだけだ」
「お父さん、ありがとう」
彼女はそう言って笑顔で喜んでいますけど……
「あなたはそれで満足でしょうね、娘が同じような事をやるんだから……」
母親の言う事はちょっと解りません。でも、父親の方は少しは話が解るようです。
「あの、それで契約書に親の承諾が必要何ですけど」
私がそう話すと…… 母親は黙ったままです。
「解りました。私が承諾します」
「ありがとうございます」
そういう事で、何とか契約出来ましたけど、母親は納得出来ていないようです。
「小山内さん、私はこれで失礼するから…… あっ、それから十二月二日にマシンのテストをオートポリスでやるからよろしくね」
私がそう話すと彼女は不安そうに……
「オートポリスへは、私一人で行くんですか」
それは、一人は嫌だから迎えに来い! って私に言っているんだよね……
「解ったわ! それじゃ、迎えに来るから一緒に行きましょう」
「はい! ありがとうございます」
彼女はそう言ってニッコリと微笑みました。
それを見て私はちょっと安心しました。あとは、親子で話し合ってもらいましょう。そう思って私は、ご両親に頭を下げた後、彼女の家を出ました。
彼女の母親からは、あらぬ言いがかりを受けました。父親は少し話がわかるようで承諾もいただきました。これで、うちのチームに来てくれるんだよね……




