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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第四章 移籍
79/133

79 ウイング

F2のテストから戻って来た杏香は、SFのスピードが遅く感じるようです。それで、ウイングのフラップを操作してスピードアップをしましたけど、スピンしてしまいました……

 杏香(きょうか)がプリウスコーナーでスピンして、コースアウトしています。まだ決勝はおろか予選だって始まって無いっていうのに……


『おい小山内(おさない)、大丈夫か!』


 無線で本多(ほんだ)君が声を掛けます。


『うーん、大丈夫です。エンジンも生きてるから自力でピットに戻れます』


 そういう事で本多君はその場を離れました。


 杏香も進行方向と180度逆向きに止まっていたので、一旦コースへ戻りスピンターンを決めて最終コーナーまで戻って来た後、メインストレートの手前からピットロードへ入って行きました。


「杏香、調子に乗るからそうなる!」


 (げん)さんの一言目がそれです。でも、私は……


「杏香、痛いとこはない?」


 私もマシーンの側まで行って訊きました。


 すると彼女はマシーンから飛び降りて、背伸びをします。


「うーん、大丈夫!」


 そう言ってニコッと笑いました。


「もう、びっくりさせないでよ!」


 私がそう言っている時、メカニック総出で杏香のマシーンを点検しています。


「別に壊れたりしてないから」


 杏香はそう言うけど……


「そういう事言わないの! みんな一生懸命に杏香のマシーンを整備しているんだから」


「それは解っているんだけど、ぶつけたりしてないから……」


「それで、何故スリップしたの?」


「……」


 まあ、杏香自身は原因が解っているんだろうけど……


「わざとじゃないんだよ…… ただ、もう少しスピードを落とした方が……」


 もう最後の方はなんて言っているのか解らないくらいフェードアウトしています。要するに源さんの言う通り調子に乗ってオーバースピードでコーナーに入ったって事でしょう!


 まったく何やってんだか……


「やっぱりフラップは元に戻した方が良くないですか?」


 チーフメカニックとしては安全重視でレースをしたいと、山口(やまぐち)君はそう思ったんだと私は思います。


「うーん……」


 源さんは、スリップの原因が杏香の気の緩みから起きている事が解っているから何も言えずに唸っています。


「あの…… 出来ればこのまま午後のフリーまで様子を見てからでも……」


 私にしては、あまりにも過保護過ぎな発言だったかしら……


 でも、勝つためには少しでも速く走れる状態を作ってあげたい。私達がそう話をしている時……


「あれ、どうかしたの?」


 何食わぬ顔をした杏香がドリンク片手にパドックからピットへ戻って来ました。


「おまえがスピンしたのはフラップを動かした事でダウンフォースが上手く機能していないのが原因だから元に戻そうと話していたんだ」


「えっ、大丈夫だよ! 折角コツを掴んだところなんだから……」


 上手い事言うわね、操作ミスでスピンしたくせにコツを掴んだなんて……


「いや、しかしだな、もしもの事があってからじゃ遅いんだよ」


 まあ、そういう事だよね…… マシーンを修理するのはメカニックなんだし、スペアカーだって使えないんだから。それに杏香にもしもの事があるのが一番怖い……


「大丈夫だよ!」


 杏香はそう言うけど……


「山口チーフ、悪いが午後からのフリーを走らせてから決めるという事にしないか」


 源さんとしては、スピンの原因も判っているし、上手くいけば上位だって狙えると思っているはず……


「山口君、私からもお願いしたいんだけど、駄目かな……」


 すると山口君は呆れた顔で……


「お二人がそう言うのなら従いますけど……」


「すまない山口チーフ」


 そういう事で、このまま午後のフリーで判断する事になりました。


「何かあったんですか?」


 午前のフリー走行が終わり本多君も戻って来て私に訊きます。


「うん、杏香のスピンでちょっとね……」


「マシーンに異常があった?」


 まあ、本多君のマシーンも同じセッティングだから、訊かれても仕方ないかな……


「うーうん、大丈夫よ!」


 私はそう言いましたけど……


「あれ、あいつのマシーン、ウイングの羽の角度が可笑しくないですか?」


 はあ、気づいたか……


「本多君、よく気付いたわね」


「そりゃ、解りますよ! 俺のマシーンと比べてウイングのロゴが読み難いから」


 まあ、そうだよね…… 本多君のはしっかりダウンフォースを取るためフラップを立ててるけど、杏香のマシーンは空力を使ってスピードが出るようにしてるからね。


「あんな事して、マシーンが浮き上がらないんですか?」


「あの程度なら問題無いみたい」


「ひょっとして午前のスピンはそれが原因なんじゃないですか?」


 本多君って意外と痛いところを突いてくるな……


「大丈夫だから、山口君と源さんがちゃんとやっているから」


 とは言ったけど……


「あれ、俺には無理ですよ!」


 本多君に真顔で言われてしまいました。


「あ、うん、杏香の希望だから……」


「はあ…… あいつは何を考えているのか……」


 まあ、本多君はそう言っているけど、ある程度の奇策を取らないと、中森(なかもり)松島(まつしま)に勝てないかもしれないから……

午前のフリー走行でスピンした杏香、しかし、午後のフリー走行は上手く走れました。本人曰く、コツを掴んだらしいけど…… この奇策が結果どう出るかです。

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