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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第四章 移籍
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76 ステップアップのお話

昨日の続きとばかりに杏香と川嶋君は一緒に走っています。しかし、ピットインの指示が出ました。指示をしたのはGMのリチャードのようですが、楓オーナーらしき人も、あの人は何をしているのか…… 本当に神出鬼没です。

 川嶋(かわしま)君と杏香(きょうか)が、フリー走行中にサラからボックスの指示が出ました。まだ、3周くらいしか走ってないと思うけど……


 でもサラの耳にはインカムが付いていて、実際に指示を出したのはGMの…… リチャード、だっけ?


 その時、川嶋君と杏香がピットへ戻って来ました。


[折角小山内(おさない)とレースを楽しんでいたんだぞ……]


 川嶋君がサラにそう言いますけど…… 彼女は自分の耳を指さします。


 川嶋君はそれで理解したみたいだけど……


「ねえ、どういう事? あのまま行けば、次の周回で抜けそうだったのに……


「おまえな、まだ、3秒差はあったはずだぞ! なんでそうなるんだよ」


 川嶋君と杏香がそう言い争っている時、パドックの方からGMのリチャード クロフォードと(かえで)オーナーがピットの方へ歩いて来ました。


「オーナー!」


「やあ、北島(きたじま)君ご苦労様」


 私は驚いてしまいました。


「イギリスに来る予定があったんですか?」


 私がオーナーにそう訊いた時、マシーンを降りた杏香がこっちへ走って来ました。


「オーナー!」


「やっ、小山内さんも元気そうだね」


 オーナーのこの言葉に杏香も呆気に取られたかな……


「オーナーも来るなら一緒に来て良かったじゃん」


 はあ…… 杏香、オーナーを友達みたいに言わないの……


「ハハハ、僕も出来れば一緒が良かったんだけどね、でも君達に気を遣わせるのも悪いと思ってね」


 ああ、確かにそうですね、それこそ何を話せば良いのか解らないですからね。


「オーナーお疲れ様です」


「なんだ、本多(ほんだ)も走っていたのか」


「はい」


 そりゃ、テストに来てるんだから走るよね……


「まあ、でも、小山内さんがダムスの育成ドライバーになれて良かった。これでステップアップの見通しもついたからね」


 それを聞いた杏香と本多君は、ちょっと驚いています。


「育成ドライバー……? ですか?」


「はい、そうです」


 杏香だって流石に驚くよね…… F2の育成ドライバーだもんね!


「小山内は凄いな……」


 本多君もそう言ってるけど……


「あの、育成ドライバーって何ですか?」


 えっ、意味が解って言ってたんじゃないの? 本多君も川嶋君も頭を抱えてます。


「ハハ、まあ早い話ダムスからF2へ成績次第ではステップアップさせてあげても良いよ! ってとこかな」


 まあ、確かにそんな感じの話だけど、取り敢えずF2のシート枠が開かないことにはね……


「小山内さんもその為には、SFで年間チャンピオンくらいは取らないと難しいかな……」


 まあ、そうなんだけど、いきなり言われてもね……


「あっ、でも本多さんが先ですよね!」


「おい、俺は……」


 まあ、杏香にしてみれば本多君は先輩だからね……


「うん、本多君にはそのうちWECに挑戦してもらう事になったから」


「えっ、WEC? それじゃ、昨日の話は本当なんですか?」


「昨日の話……?」


 あっ、そう言えばそんな話を本多君としてたかな……


「うん、本多君は元々スーパーGT500からSFへ来たんだけど、エンデュランスカーでルマンを走りたいみたいでね」


 杏香にとって、GT500とかエンデュランカーとか言われても解らないかな……


「ルマンですか……」


「杏香、ルマンは知ってるの?」


「はい、だってF1ドライバーになるには、大体ルマンを走るんですよね」


 えっ、そうなの? 私はそういうのを初めて訊きましたけど……


「あっ、小山内さんの話はちょっと古いかな……」


「えっ、違うんですか?」


 オーナーも知ってる事なのかな……


「昔のルマン24時間は、スポット参戦する事が出来たんだ。だからそれに参戦するドライバーは多くて、その中にはF1を目指すドライバーもいたんだ。まあ、本多君も知ってるとは思うけど、今ルマン24時間に出るにはWECに参戦しないと駄目なんだ」


「えっ、それじゃそれだけに出たいが為にWEC参戦を決めたの?」


「それだけじゃないけどな……」


「おまえも物好きだよな」


 川嶋君が言う事じゃないでしょう。でも、本多君らしいかな…… 杏香にしてみればちょっと複雑かも知れないけど……


「そんなに凄いレースなんですか?」


 杏香は本多君に訊いてますけど、本多君は……


「俺はルマンを走りたい」


「小山内さん、君だってF1ドライバーになりたいから頑張っているんだよね、本多君もそれと一緒なんだよ」


 オーナーがそう言ったことで本多君の気持ちも少しは落ち着いたようです。



 ロンドン最後の夜、私たちはパブへ繰り出しました。


 私達はお酒を飲めるけど、杏香はまだ飲めないし、アルコールにも弱いからね……


 パブならお酒だけじゃなく、美味しい物も沢山あるから杏香も楽しめそうです。


[小山内、何を食べてるの?]


 珍しくサラが杏香に声を掛けますが……


 言葉の通じない杏香は、ニッコリ笑ってサラを見ます。


「えっと……」


「杏香は何を食べてるの?」


 私が通訳しました。


「あっ、白身魚のフライとポテト! あとハンバーガー」


 杏香が答えたけど、今度はサラに通じてないかな……


 でも、テーブルに乗ってるもので理解したみたい。


 そんな二人だったけど、終盤は楽しそうに英語と日本語と身振り手振りで楽しそうでした。


「サラのあんな楽しそうな笑顔は初めて見たかな」


 川嶋君がそう言ってます。


「サラさんはあまり笑わないもんね」


「サラも、笑顔が出ると可愛く見えるんだけどな、あんな感じだけど小山内よりひとつ年上なんだけどな……」


「えっ、サラって二十歳なの?」


「ああ、おまえより大人だろう」


 余計なお世話よ!


 そんな感じで、私達のF2テスト走行の旅は終わりました。日本に帰ったらすぐに富士でのダブルヘッダーです。

最終日のテスト走行が終わりました。最後の夜はロンドンのパブで美味しい物食べる事に、杏香とサラは言葉は解らないけど身振り手振りで言葉の壁を克服したようです。

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