55 サバイバル
オートポリスの予選Q2が終わり、本多君が2位、杏香が4位でした。悪天候でスケジュールが変更され、この後午後一時半から決勝がスタートします。
第3戦オートポリスの決勝がまもなくスタートします。天気は相変わらずの雨模様です。コースも勿論ウエット、路面温度も五月の中旬にしては低めです
「本多さん、そろそろ行きますよ!」
珍しく杏香がそう言ってます。予選の時とは逆ですね。
「おおう、先に行ってくれ」
本多君、どうかしたのかな?
「耕太回して!」
杏香がそう言って、水上君がエンジンを掛けてくれました。杏香はエンジンの掛かったマシーンに乗り込んだ後……
「耕太、ありがとう」
ちょっと頬を赤くして杏香が言います。
「うん、おまえも頑張れよ!」
そう、水上君から聞いた杏香は……
「うん、頑張る!」
そう答えて嬉しそうに杏香はコースへ出て行きました。
そこへまた小林さんが水上君の側に近づいているので、私は彼女の手を引いてモニター前に連れ戻しました。
「ちょっと美郷さん!」
「邪魔しちゃ駄目よ!」
私がそう言うと…… 彼女は面白く無さそうな顔をしていました。まったくおばさんは駄目だね……
コースの方は、各マシーンがスターティンググリッドに着いています。まもなくフォーメーションラップが始まります。
「本多君、杏香準備OK?」
『うん、OKです』
『こっちもOKだ!』
うん、無線も問題無いようね。
今、グリーンフラッグ振られ、フォーメーションラップがスタートしました。この一周でマシーンコンディションを見たり、マシーンを蛇行させタイヤを温めたりします。
でも、今日はウエットなので主にコースコンディションのチェックかな、今日はタイヤ交換もないからね!
マシーンがスターティンググリッドに戻って来ました。今からスタートです。
マシーンがすべてグリッドに着いた後、レッドシグナルがひとつずつ点灯を始めました。この瞬間は、ドライバーじゃない私も緊張します。
ドライバーはエンジンをふかしながらスタートの瞬間を待ちます。今、五つ目のレッドシグナルが点灯し、ブラックアウト! 各マシーンが一斉にスタートして、我先にと第一コーナー目指して飛び込んで行きます。
トップは松島、2番手に本多君、3番手中森、4番手に杏香、5番手に谷山、そしてパンドラーです。順位に変動はないみたい。あっ、結菜さんが8番手に順位を上げたみたいです。
今日は雨のレースなので、序盤は各ドライバーとも様子見のようです。
しかし、この雨の中1周4674メートルを41周します。ドライの時より過酷だろうな……
一周目、トップは松島1分27秒759、2番手に本多君1分27秒807です。3番手中森が1分27秒928で杏香が……
えっ、杏香が中森にスリップストリームの状態でメインストレートから第一コーナーへ向かって行きました。
そして、杏香はオーバーテイクを使って中森を抜き第一コーナーに飛び込みました。
「これで、杏香が3位だね!」
私は口走ってしまいました。
「なにも序盤に無理しなくて良いのにな」
源さんです。
「えっ、でも、少しでも上位にいた方が良いんじゃないですか? それに天候の事もありますから」
「まあそうだけど、霧が出て中断したらセーフティかーを入れ再スタートした場合、各車のマージンはほとんど無くなるからな……」
まあ、源さんの言う事も解るけど…… このレースどうなるのかは天候次第ですからね……
杏香が3位になったけど、抜かれた中森は杏香の背後で、チャンスを狙っているように見えます。
まあ、元F1ドライバーが抜かれて黙っている訳がないですけどね!
レースは10LAP目です。順位は松島トップで変わりません。しかし、雨が強くなって来た為、水飛沫が酷く上がります。視界が悪いだろうな……
「第12コーナーでイエロー!」
イエローフラッグ! 誰かがスピンしたのかな……
「カーナンバー12番がスローです」
えっ、11番じゃないの?
「カーナンバー12番はTOYOMURA GRAND PRIXだな」
深田GMです。
「TOYOMURA GRAND PRIXは予選Q1でもスローダウンしてなかったかな」
山口君もGMと二人でそう話しています。
電気系統のトラブル…… 私の脳裏にその心配が……
カーナンバー12は、さよりんブリッジ手前で止まってしまったようです。
その後、14LAPを走った時トップの松島がピットインです!
「えっ、松島はどうしたのかしら……」
しかし、これで本多君がトップ、杏香が2位になりました。
「このまま行けばワンツーだな!」
GMはそう言うけど、まだまだ判らないですよ! ようやく中盤ですからね。
その後も雨脚が強く順位に変動も無く、レースも後半戦です。ピットインした松島もそのままリタイアしたようです。
「この雨じゃ、レッドフラッグが出るかもな……」
そうなると、レース再スタートした後に勝負という事か……
『小山内、聞こえるか』
本多君から無線です。
『本多さん、どうかしたんですか?』
『俺もあと2〜3周で止まるかも知れないから俺を抜いていけ』
えっ、トラブル?
『えっ、でも……』
杏香も不安そうな声です。
『心配するな、おまえに抜かれた後、俺が中森をブロックするから……』
「本多君、もう無理なの?」
私も心配のあまり無線で話します。
『うん、アクセルベタ踏みしてるけど、思うようにスピードが出ない』
そう話している時、杏香が本多君をパスして行きました。その後から中森も抜こうとしますが、本多君が上手くブロックしています。
はたしてこれが、どこまで通用するかな……
雨の決勝、マシーンが次々とリタイアしていきます。この過酷なレースはどうなるのか……




