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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第三章 チームとドライバー
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41 化学反応

いきなりの合同練習、しかも結菜さんのマシーンを背後から煽って欲しいと鈴木翔吾さんから注文を受けましたけど……

 Team Aoi(チームあおい)との合同練習が始まりました。


 フリー走行で4LAPくらい走ったところで元F1ドライバーで木村結菜の叔父、鈴木翔吾(すずきしょうご)さんから注文がありました。


 杏香(きょうか)に結菜さんの相手をして欲しいという事ですけど……


美郷(みさと)さん、カーナンバー52に追い付きました』


「OK! それじゃ指示通りに」


『はーい』


 いや、そこは了解でしょう! 可愛く返事しなくて良いから…… と言いたいけど、杏香も気が抜けちゃったのかな……


「うん、いや彼女上手いな」


 杏香が結菜さんを煽っているのを見て鈴木さんがそんな事を……


小山内(おさない)さん、うちのチームに来てくれないかな」


 えっ! その話を聞いて私はムッとしました。ちょっと、なんて事を言うの! しかもチームディレクターの私の目の前で!


「ちょっと鈴木さん!」


 私は鈴木さんを睨んで言いました。


「ハハ、冗談ですよ!」


「はあ、冗談ね……」


 確かに杏香は上手いです。結菜さんも後方から突かれる事で、少しスピードを上げたかな……


「うん、良い感じだ! これで化学反応が起きてくれれば良いんだけどな……」


 鈴木さんの思惑は、杏香が彼女を煽るなどの行為をして彼女にやる気を出させるという事なんだろうか?


「化学反応ですか?」


「はい、僕が思うに結菜はジノックスF2000の頃はチームメイト以外のライバルともよく話をしたりしてコミュニケーションをとっていたと思うんです。でも、スーパーフォーミュラでは、それがないから……」


 確かに、チームメイトとは話をするけど他のドライバーと話す事は少ないかな……


 杏香の場合は、まだ私がいるからだけど、結菜さんが所属しているTeam Aoiは男性ばかりのチームだから、それにチームメイトのパンドラーとは話が合わないだろうな……


 その時、パドックに凄まじい声が聞こえた。


「KAEDEオーナー、うちのマシーンを煽るのは辞めてもらえないか、彼女が委縮したらどうするんだ!」


 Aoiオーナーが隣のパドックからクレームを言いに来ました。それを聞いたKAEDEのスタッフは何事かと言うような顔でAoiオーナーを見ています。


「あっ、Aoiオーナー、それは僕からの注文なんです」


「えっ、翔吾君…… どういう事だ!」


 うちのスタッフは、鈴木さんの言葉を聞いてホッとしたような、自分の仕事に戻ります。


「Aoiオーナー、そう言うのはどうでも良いでしょう! 結菜は来シーズンからうちのチームへ移籍する訳だから、だからこそ今シーズン中に結菜を本気にさせないと……」


 まあ、鈴木さんにしてみれば結菜さんがこうなってしまったのはTeam Aoiに原因があると思っているようです。


 その時、杏香が結菜さんを抜き去って行きました。


 ちょっと、やめちゃ駄目でしょう。私はそう思いましたけど、杏香はもう飽きちゃったのかな……


 しかし! 結菜さんは杏香に遅れないようにスピードを上げ追って来ます。これは…… 鈴木さんが言っていた化学反応でしょうか。


「うん、少しは彼女のやる気に火が着いたかな」


 杏香は、彼女を引き離そうとスピードを上げますけど……


 その差、約1秒です。離されもせず、追い越しも出来ないスピードです。


『美郷さん、結菜さんが私の後を追って来ます。かなり速くなったみたい! でも、もう引き離して良い?』


 杏香から、そう無線が入りました。杏香はまだ全開じゃなかったのね! でも、ここで引き離して大丈夫かな……


「北島さん、もう普通に走ってもらって良いですよ!」


 えっ、良いの? 結菜さんの変化に鈴木さんも納得したのかな……


「あっ、はい……」


 私はそう返事をしましたけど……


「杏香ありがとう、もう自由に走って良いわよ」


『了解』


 そう杏香に伝えた時、私はとても不安な気持ちになりました。本当に良いのかな……


 すると杏香はスピードを上げて引き離しに掛かりますけど……


 結菜さんも、負けてません。またスピードを上げたようです。


「あっ、戻って来ましたね」


 杏香と結菜さんが、二台揃ってメインストレートを通過して行きました。その差は1秒も無いんじゃないかな……


 二台はこのまま走り続けフリー走行は終了しました。


「杏香、おかえり!」


 私がそう言って杏香を迎えます。源さんも杏香の姿を見てこっちへ来ました。


「杏香、大変な事になったな」


「えっ、何が?」


 源さんはそれだけ言ってピットへ戻って行きました。


「ねえ美郷さん、なんのこと?」


「さあね!」


 杏香は、本当に気付いていないのかな? 結菜さんは何かが吹っ切れたようです。


「ねえ小山内さん、お昼ごはん食べよう!」


 結菜さんがそう言いながら、またうちのパドックへ来ています。まったく懲りないな……


「えっ、うん! 食べよう」


 でも、結菜さんうちのパドックにいて大丈夫なのかな、Aoiのスタッフから変に思われていないかな……


 杏香と結菜さんは、一度レーシングスーツを脱いでからレストランへ行くようです。


「叔父さんも行くでしょう!」


 結菜さんは鈴木さんを誘っています。


「うん、そうだな! 北島さんも一緒にどうですか?」


 えっ、私も……


「あっ、はい」


 なんだか、結菜さんはうちのチームになったような錯覚をしてしまいました。


「あっ、もう終わったんですか!」


 月刊フォーミュラの神田(かんだ)さんです。


「どうかしたんですか?」


「いや、Team KAEDEとTeam Aoiの合同練習を(かえで)さんに聞いて、急いで来たんですけど……」


「あっ、それなら午後もありますよ!」


 そう一言鈴木さんが言いました。


「えっ、あなたは鈴木翔吾さん!」


「はい、ご無沙汰してます神田さん」


 流石に鈴木さんも神田さんのことは知ってるか。


「でも、今日の合同練習の事はまだ、記事にしないでくださいね! もう少し後にスクープを提供しますから」


 鈴木さんは人差し指を口元に当てながら神田さんに言いました。


「はい…… 承知しました」


 大丈夫かな……

結菜さんは杏香に煽られた事で何かが吹っ切れたのか、杏香のスピードに着いて来れるくらい走れるようになりました。しかも、昨日とは違って、笑顔です。

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