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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第三章 チームとドライバー
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36 二人だけの決勝

タイムアタック勝負は杏香が勝ちました。でも、次は模擬的な決勝レースを二人でやります。結果は……

 今、私達は大分県のオートポリスサーキット場に来ています。スーパーフォーミュラ第3戦九州大会に向けての練習走行です。


 本多(ほんだ)君と杏香(きょうか)のタイムアタック勝負は三セット中ニセット杏香が取りました。それで、今度は模擬決勝で勝負をする事になったんですけど……


美郷(みさと)さん、ちょっと待ってくれ!」


 慌てて山口(やまぐち)君が私に言いました。


「どうかしたの?」


「さっきまでタイムアタックをして、今度は模擬決勝じゃピットの準備が出来ません!」


 あっ、そうか…… 私は二人の事ばかり考えてやっていました。


「ごめん山口君、それじゃお昼休憩をしてからなら大丈夫?」


「えっと、それなら行けますけど……」


 そうだよね…… うちは他所のチームに比べてピットクルーが少ないからね……


「それじゃ、お昼休憩にしましょう! 模擬決勝は14時半スタートにします」


「えーっ、そんな……」


 杏香はあんなに走っていて疲れないのかな……


「杏香も、ずっと走りっぱなしなんだから疲れているでしょう!」


「ううん、大丈夫だよ、まだ若いから!」


 うっ、今の一言は、ちょっと気になる…… まあ、私だって杏香とは五つくらいしか離れてないんだから若いんだけどね……


「でも、休む時は休みなさい! あと、ピットの事も考えてあげてね」


「はーい…… じゃあ何食べます?」


 杏香はレストランで食べるつもりなのかな…… 私はもうお弁当で済ませようかと思ったけど……


小山内(おさない)さんはレストランに行くの?」


 小林(こばやし)さんがそう訊きました。


「えっ、ひょっとしてレストランお休みとかじゃないですよね!」


 まあ、それはないでしょう。一般のお客さんもいる訳だから。


「いや、営業してるとは思うけど、一般のお客さんもいるんだからね!」


「はあ、そりゃいるでしょうね」


 杏香は何も思わないのかな……


「行くのならレーシングスーツを脱いでからが良いわね」


「えーっ、また着なきゃいけないのに……」


 やっぱり解ってないわ……


「杏香、そのままレストランへ行ったら落ち着いて食事出来ないぞ!」


 今度は(げん)さんです。


「えっ、お父さんまでそんな事言うの!」


「おまえはそこそこ人気のあるレーサーなんだよ!」


 そこそこ……?


「あっ!」


 やっと杏香も解ったようです。レーシングスーツだとすぐに解りますから、サインとか握手とかの話になりますからね!


「杏香、弁当にしときなさい」


「あっ、はーい……」


 流石は源さん、杏香も父親には逆らえないかな……




 食事が終わった後、ミーティングをしました。杏香は時々フラッグを勘違いしているから困ったものです…… この間の鈴鹿でも、黄色とオレンジの縦縞を見て追い越し禁止だと思っていたみたいだし、オイル旗を間違えちゃ駄目でしょう!


「よし、それじゃ模擬決勝を始めます。PP(ポールポジション)は杏香ね!」


「えっ、そうなんだ!」


 本多君は、ちょっと不服そうだけど……


「本多君はタイムアタックで負けたからね!」


「あっ、はい……」


 それじゃ、こっちの準備はOKかな。


「山口君、準備OK?」


 私が訊くと……


「はい、燃料は、お互い満タンです。タイヤもニュータイヤにしています」


「OK、それじゃウォーミングアップをしてグリットに着いて」


「はい!」


 そう返事をした二人はピットレーンを通ってコースへ出て行きました。


「すみません! お邪魔していいですか?」


 えっと、いつぞやの…… そうそう、月刊フォーミュラの……


「あっ、神田(かんだ)さん良いですよ! でも、この間の約束は守ってくださいよ」


深田(ふかだ)さん、取材させてもらえるのなら約束は守りますよ」


「それじゃ、俺はスターターをやって来る!」


 そう言って、GMはチェッカーフラッグとブルーフラッグを持って行きました。


「美郷さん、(ひで)ちゃんはどうしたの?」


「あっ、今日はうちの貸切だからシグナルが付かないんですよ! それでスタートの合図をお願いしたんです」


「ふーん、ジェネラルマネージャーも大変だ」


 まあ、本当は私が行っても良かったんですけど、危ないからの理由でGMにお願いしましたけど、本当はGMがやりたかったんだと思います。ゴールのチェッカーは私がやろうかな……


「こんにちは……」


「あっ、あなたは……」


 源さんは神田さんと面識があるのかな……


「あっ神田さん、ご無沙汰してます。取材の許可をもらえたんですね」


「はいお陰様で、小山内さんもまたメカニック出来るようになったんですね!」


「はい」


 そうか、月刊フォーミュラのあの方、取材許可が出たんですね。でも、小山内さんとお知り合いだったとは…… でもまあ許可がもらえて良かったですね。


 一方杏香達は…… ウォーミングラップを終えて、一番グリッドに杏香と二番のグリッドに本多君が着きました。GMはまず、グリーンフラッグを振ります。すると二台のマシーンはエンジン音を上げて準備万端です。うん、ミーティング通りちゃんと出来てるようね! そして……


 チェッカーフラッグが振られ、今、模擬決勝レースがスタートしました。二台のマシーンは我先にとスタート後、第一コーナーへと消えて行きました。


「うーん、本番さながらだな」


 編集者の神田さんはそう言いながら目視で第一コーナーを見ています。


「あの、モニターもありますよ」


 私がそう言うと……


「あっ、すみません」


 そう言って私の隣でモニターを見ています。


北島(きたじま)さんでしたっけ……」


「は、はい」


「鈴鹿では失礼しました」


「あっ、いえ……」


 はあ…… 何故私が気不味い思いをしないといけないのか……

模擬決勝レースがスタートしました。今度は本多君に有利なはず、 結果は……

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