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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第三章 チームとドライバー
32/132

32 練習走行

鈴鹿のレースは、残念でした…… 原因は電気系統のトラブルだった。ウエットレースで毎回このような事がおこると大変です…… 原因究明は急務です。

 第3戦九州大会は、大分のオートポリスサーキット場で行われます。


 今年も五月の中旬の土日にありますけど、この時期のオートポリスは雨が多いんですよね…… それに第2戦の電気系統のトラブルの件もこれといった対策は無いです。取り敢えず水が入らないように養生はしていますけど、今年のレースは去年みたいにならないと良いんですけどね……


 私達は、大会十日前平日の三日間サーキット場を貸切、練習走行をするため、早めに大分入りしました。


「私、オートポリスは二回目です」


 そう話ながら、杏香(きょうか)は熊本空港到着ロビーに出て来ました。


「SFではそうかも知れないけど、F4では何度か来てるでしょう」


 すかさず私は、そう言いましたけど……


「まあ、そうだけど…… 私にとっては特別だから」


 まあ、杏香のSFデビューはここからだったもんね!


 私達はここからチャーターしていたバスに乗って、まず宿泊先の阿蘇白水館へ行きます。その後、オートポリスへ行って、一日目の練習走行です。


美郷(みさと)さん、あの白い建物が白水館?」


「そうよ、チェックインをしてくるから皆んなはバスに乗っていてね!」


「えっ、部屋に行けないの?」


 なに、この娘はホテルでゆっくりするつもりなの?


「早く行って走りたいでしょう!」


「うん!」


 全く何言ってるんだか、しかも、目が輝いているよ。


 その後私達は、ホテルを出て四十分くらいでオートポリスに到着しました。


「あっ、マシーンがもう来てますよ!」


 杏香は張り切ってるね。もう、早く乗りたくて仕方ないんでしょうけど……


「杏香、慌てなくても今日は一日好きなだけ乗って良いからね!」


「本当に、やった!」


 この娘は、本当にフォーミュラカーに乗るのが好きだね…… 私は呆れて何も言えないわ。


「美郷さん、いつも娘がお世話になってます」


 (げん)さんから改まってそう言われましたけど……


「あっ、いえ、私も充分楽しませてもらってますから。それに……」


「それに?」


 源さんはその続きが聞きたいようです。


「あっ、その…… 彼女なら私をF1に連れて行ってくれるかな…… って」


 でも源さんは、少し呆れたように……


「美郷さん、F1には女性ドライバーはいないんですよ!」


「ええ、知っています。でも、彼女ならって…… 期待してしまうんですよ」


「まあ、あの娘も昔からそんな事は言ってますけど、難しいでしょう! 男ならともかく」


 源さんは一言そう言ってマシーン整備に取り掛かりました。自分の娘でも信じられないのかな……


「お待たせ!」


 杏香は一番乗りでレーシングスーツに身を包みヘルメット片手にパドックへ来ました。


 ていうか、誰も待ってないけど…… でも、誰も何も言わないのに気付いた彼女は……


「えっ、もう乗れるんでしょう?」


 不安気に彼女は訊いてます。


「杏香、もう少し待ちなさい!」


 源さんがコクピット内の整備をしながら厳しい表情で言いました。


「あっ、はい……」


 杏香も源さんにそう言われ、今まで私達に見せたことの無い硬い表情で返事をしました。


 やっぱり、娘にとって父親というのは怖い存在なのかな……


「杏香、ウエスを持って来なさい」


 杏香は源さんに言われるまま、指示に従います。


「いいかい、マシーンに乗る時はオイル等の汚れがないかチェックするんだよ」


「それって、私がやるの?」


「そう、マシーンに乗ってレースをするのはドライバーだ! メカニックが気付かずに着けたオイルで滑ったりすると危ないから自分の目で確かめる」


 要するに何でもかんでも人任せは良くないという事でしょう。


「よし、チェックが終わったら良いよ! 今、エンジンを掛けるから」


 源さんがそう言った時……


「俺がエンジンを掛けます」


 そう言ってエアスターターの準備を水上(みなかみ)君がやってます。


「そうか、君が杏香のマシーン担当か」


「あっ、そういう訳じゃないですけど……」


 源さんは、ニコッと笑ったあと……


「じゃあ、頼んだ!」


 源さんにOKをもらった水上君はマシーンの後方からエアスターターを突っ込み圧縮ガスを吹き込みます。


『ブォン、ブォン』


「かかったぞ、行ってこい!」


 そう水上君に言われた時、杏香は何か彼と話していたようだけど…… その後杏香は、ピットレーンからコースへ出て行きました。


「今日も小山内(おさない)さん調子良さそうですね!」


 小林(こばやし)さんはそう言って、私の横で杏香の走りを見守ってます。


「うん、まあまあだな」


 源さんから見た杏香はまあまあな評価のようです。


青木(あおき)、水上タイヤの準備!」


 山口(やまぐち)君から指示が出ました。メカニックって忙しいのね。


「チーフ、燃料は?」


「あっ、燃料補給は休憩の時にします」


 その時、遅れてという訳でもないけど、本多君がパドックに来ました。


「あれ、もう走ってるんだ……」


 まあ、本多(ほんだ)君が普通に準備をしてパドックに来てるのに杏香が早すぎた為、本多君が遅刻したみたいになっています。


「本多さん、エンジン掛けましたのでいつでも良いですよ」


 青木君がマシーンの準備をしたようです。青木君が本多君の担当? なのかな……


「1分28秒437です」


 小林さんが最初に杏香のタイムを測りました。


「まあまあね」


「あいつは朝から元気だな……」


 ちょっと、ドライバーが何言ってるの?


「ひょっとして具合でも悪いの?」


「いや、バスで山道を走ったからか少し酔ったのかも……」


 まったく、何やってんだか……


「本多君はバスの最後尾に乗ってたよな」


 源さんからそう訊かれてますけど……


「あっ、はい……」


「あそこは一番酔いやすいんだよ!」


 源さんは一言そう言いました。


「ハハハ、早く言って下さいよ」


「いや、常識でしょう」


 私もつい、言ってしまいました。本多君はこのレース黄色信号かな……

杏香は一番乗りでマシーンに乗っています。でも、本多君はバスで酔って体調不充分です。本番じゃ無いから良いけど、何やってんだか……

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