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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第二章 シーズン開幕
30/134

30 コミュニケーション不足

予選の内容が良かっただけに鈴鹿のレースは残念な結果でした。マシーンの不具合もあって不安材料を残したレースになってしまった。


 第2戦鈴鹿サーキットの決勝レースが終わりました。


 一時はワンツー体制でフィニッシュ出来ると思っていたレースでしたけど……


 終わってみれば、ロバートハンドラーがポールツーウインで優勝、2位に松島祐希(まつしまゆうき)、3位に中森勝利(なかもりしょうり)、そしてマシーントラブルに見舞われながらも本多(ほんだ)君が4位入賞しました。しかし、杏香(きょうか)は同じくマシーントラブルでゴールまであと少しのシケインの手前で力尽きリタイヤになりました。


「おい、山口(やまぐち)! どうなってるんだよ」


 いきなり本多君は山口君の胸ぐらを掴んで怒り出しました。


「本多さん済まない…… パワーユニットから雨水が浸透したと思うんだ」


「ちゃんと見てなかったのかよ!」


 本多君は山口君の胸ぐらを掴んだまま事情を訊いています。


「見てましたよ!」


「本多、よさないか! わざとやった訳じゃないんだから」


 本多君はようやく手を離しましたが、皆んな黙り込んでしまい沈黙状態です。


 私も、この状態には、萎縮して固まってしまいました。男性同士の喧嘩は物凄いです……


「ただいま戻りました」


 その時、杏香が何も知らずに戻って来ました。でも周りの雰囲気が悪い事に気付いたみたい。


「どうかしたんですか?」


「小山内さん、済まなかった!」


 山口君はそう言って、杏香にも頭を下げますけど……


「えっ、何がですか?」


 杏香は何事かというような顔をしています。


「どうしたって、パワーユニットの不具合でマシーンが……」


 山口君は杏香の反応に少し戸惑ったようだけど……


「あっ、しょうがないですよ! そんなのは判らないでしょう」


 杏香はそう言ってドリンク片手に椅子に座りました。


「いや、そうかも知れないけど……」


「杏香!」


 えっ、スポンサーの男性が何故杏香の事を……


「えっ、お父さん?」


 えっ、お父さん? どういう事!


「どうしてここにいるの?」


 杏香も驚きのあまり目をパチクリしています。


「いや、また楓さんのとこでお世話になる事になったから」


「えっ、どういう事?」


「メカニックを頼まれたんだ」


「えーっ!」


 それを聞いてオーナーとGM以外は皆んな驚いています。


「オーナー、どういう事ですか?」


 私は驚きのあまりオーナーに訊きました。


 オーナーはちょっと頭を掻きながら……


「いや、小山内と深田は昔チームメイトでレースをやってたんだ! それでだな……」


 オーナーの話では、オーナーはドライバーで深田GMはチームディレクター、そして小山内さん、つまり杏香のお父さんはメカニック担当だったようです。要は昔からこの三人は連んでいたんですね。


「山口君って言ったかな」


「はい」


「メカニックでも、どうにもならないトラブルはある。そういうところをどうするのかを考える事じゃないかな」


「はい」


「本多君だっけ、ドライバーとメカニックは、信頼関係でレースをやっているんだ。マシーンが壊れたくらいで騒がないで欲しい。マシーンが壊れるのはメカニックの所為だけじゃない、いつも乗っているドライバーも異変に気付かなかった事にも問題はある」


 まあ、確かにメカニックの点検やメンテナンスだけでは難しいと思う。でも、ドライバーにその異変が解るのかな……


「ねえ、お母さんは?」


 すると杏香のお父さんはちょっと下を向きました。


「あっ、いや……」


「お母さん、まだ私の事許してないんだね……」


「杏香、おまえだけじゃない。父さんがメカニックをやる事にも反対なんだ」


「どうして!」


 杏香のお父さんは黙ってしまいました。でも、次に出た言葉は……


「杏香、母さんとは別れたんだ……」


 その言葉を聞いた杏香はちょっと下を向きました。


「でも、おまえが母さんに会いに行く事は出来るから……」


「今、どこにいるの?」


「茅ヶ崎に帰ったよ」


「そうなんだ……」


 レースにも負けて、家族との別れまで訊いてしまった杏香は辛いだろうな……


「小山内、今日はおまえの歓迎会だ! 来るだろう」


 オーナーがそう言ったら行かない訳にはいけないでしょう。


「山口、いつものところ予約してるんだろう!」


 そこで山口君はニッコリ笑って……


「あっ、はい! それはバッチリです」


 はあ…… 好きだね…… 整備の方もそれくらいきちんとやっていたら……


 まあ今回の件は、調べてみないと判らないけど、メカニックの責任ではないと思います。


「山口、蛍亭だよな!」


「あっ、そうですけど…… まだ、マシーン撤去が出来てなくて」


 そうだよね、マシーン撤去場所に無いもんね! 一台はメインストリートゴールラインの先と、杏香のマシーンは西側ストレート先のシケイン手前でコースアウトしているんだから、でもあれってどうやって運ぶの?


 私はちょっと心配で山口君達の後を追ってマシーン撤去場所へ行ったら…… うちのマシーンは戻って来てました。どうやって戻したんだろう?


「あっ美郷さん、先に蛍亭に行ってください。もうすぐ僕達も行きますから」


 はあ…… 心配する事なかったみたい。いつもの山口君に戻っていました。

レース終了後、ちょっとしたゴタゴタはありました…… でも、一番驚いたのはスポンサーだと思っていた男性が杏香のお父さん! しかもうちのチームのメカニック? どうなることやら……

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