表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第二章 シーズン開幕
26/132

26 杏香の憂鬱

思うように走れなかった杏香、山口君がタイヤの内圧を調整してくれた事で、ある程度マシーンをコントロール出来るようになったようです。

 フリー走行がまもなく終了します。杏香(きょうか)のマシーンは、タイヤ内圧を調整する事で良くなったようですけど……


「えっ、うそ…… 小山内(おさない)さんのタイムが……!」


 小林(こばやし)さんはちょっと驚いてストップウォッチを見つめながら固まっています。


「小林さん、どうしたの!」


「小山内さんのタイム、1分37秒028です」


 えっ、杏香が1秒も縮めて来たの。やっぱりあの娘は凄いわ!


「うん、上手くいったかな」


 山口(やまぐち)君は想定内の結果だったようですけど……


「杏香、もう戻って良いわよ!」


『はい、戻ります』


 そう言った後、杏香はピットに戻って来ました。


「山口さん凄いです。あの後凄く走りやすくなったんですよ! あっ小林さん、タイムを教えて!」


 杏香はもう興奮状態です。戻るなり山口君とマシーンの話をしたと思ったら、小林さんにもタイムを訊いています。


「1分37秒028よ」


「やった! これで、予選も良いタイムが出せそう」


「良かったな!」


 山口君も一安心のようです。


「山口さん、マシーンに何かしたんですか?」


 杏香は何も覚えてないのかな…… まあ、ピットに戻った時の彼女は別人みたいに暗く落ち込んでいたからね……


「ただ、タイヤの空気を少し抜いただけだよ」


「えっ、たったそれだけ?」


 杏香もちょっと驚いています。


「君なら上手くコントロール出来ると思っていたからね」


 杏香はベンチに座り、何だか考えているような……


「杏香、フリー走行も終わったから食事にでも行こうか」


 私は杏香を誘いましたけど、今の彼女はそれどころではないようです。


美郷(みさと)さん、タイヤの空気を抜いただけであんなに走りやすくなるもんですか?」


 いや、そういうのは私に訊かれても……


「杏香、タイヤの空気圧をちょっと抜くだけで路面との設置面が多くなるからそれでグリップ力が強くなったんじゃない」


「なるほど! 美郷さんもマシーンの事詳しいんですね」


 いや、それは山口君の受け売りなんだけどね。でも、前後の動きがどうのこうの言ってたみたいだけど…… まあ、良いか!


「山口さん、俺のも空気圧を抜いてもらっても良いかな!」


 本多(ほんだ)君までそんな事を……


「いや、君はそのままで良いと思うよ! タイムも良いしね」


「そんなもんか……」


 本多君はちょっと残念そうです。今よりも速く走れると思ったのかな……


「まあ、人には向き不向きというものがあるんですよ」


 なんだか山口君、格好良いな!


 この後は、イベントが予定されています。SFの予選は午後2時からなので、早めの昼食をしてミーティングをして予選に挑みます。


 雨は、小雨模様ですが止む気配はないようです。


「あーあっ、予選もウェットですね!」


 フリー走行も良い感じに走れたのに……?


「あのタイムなら問題無いでしょう」


「あっ、そうじゃなくて、憂鬱なだけです。あと、レース中の水飛沫も凄いんですよね……」


 そう、雨のレースは水飛沫が凄いので視界が悪いです。あんな状態でよく走れるなと私は思っていたんですけど……


「あれって前は見えてるの?」


「もちろんある程度は、あとはテールランプが頼りですね」


 そうか、ウェットレースだとテールを点灯するよね。


「美郷さん、明日の決勝はウェットの場合はタイヤ交換はないんですよね!」


 杏香も少しはレギュレーションを勉強してるみたいね! でも……


「ウェットの場合はね! でも明日は晴れそうよ」


「ふーん…… 本当に晴れれば良いけどな……」


 杏香は何か気になるのかな……




 午後2時になりました。今から予選Q1が始まります。まずはA組本多君です。


「はあ、やっぱり雨は憂鬱だ……」


「また、それ!」


 杏香はそう言いながらA組の走りを見ています。


「杏香、その思考はやめなさい! レースに影響するわよ」


「だって……」


 まったく、駄々っ子か……


「本多君、1分36秒786です」


「やっぱり、ウェットだとタイムが伸びないね」


 私がそう独り言のように言ってしまった。


「トップが36秒519ですからね」


 何気に小林さんも、私の独り言に付き合ってくれてるような…… でも、本多君は、最後に1分36秒504を出しA組をトップで通過しました。


 次は杏香です。


「それじゃ美郷さん行って来ます」


「うん…… あんまり無理しないようにね」


 私はそんな事をつい言ってしまった。でも、彼女はマシーンに向かったまま右手だけを挙げた。その仕草はあいつによく似てる…… 真似してる訳じゃないよね! はあ、また思い出してしまった……


「杏香、いけるからな!」


 水上君、良いところで声を掛けるな……


「うん、ありがとう」


 やっぱり杏香と水上君は良い関係みたい、付き合っているのかな……


 杏香のQ1B組が始まりました。彼女は積極的に最初から飛ばしています。大丈夫かな…… 今、逆バンクのところを滑りながら走り去って行きました。マシーンに乗るまでは凄く消極的だったのにマシーンに乗るとこれだ! 本当よく解らない。


「小山内さん、1分36秒681です」


「3位! だよね……」


「はい……」


 やっぱり解らない…… 本当は雨のレースは得意なんじゃないのかな……


 何事もなく、無事に予選Q1が終わりました。本多君がA組トップで杏香はB組3位で通過する事が出来ました。このレースひょっとしたらひょっとするかも……

予選Q1が終わりました。A組トップが本多君、B組3位に杏香です。ウェットレースだけど、今回は上位を狙えそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ