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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第二章 シーズン開幕
25/132

25 雨のフリー走行

鈴鹿に来てからの杏香は変です。まあ、マシーンに乗れてない事が不安なのかも知れないけど……

 土曜日、第2戦鈴鹿サーキットです。今日はフリー走行と予選Q1とQ2が行われます。


 気になっていた天気は早朝から雨です。小雨程度ですが、路面は濡れていてウェットです。これだとフリー走行もウェットタイヤになりそうです。


「はあ…… やっぱり降っちゃったね」


 杏香(きょうか)は、憂鬱そうです。


「予報で土曜日は雨だって言ってたじゃない。それに鈴鹿の雨は何度も経験済みなんでしょう」


「うん、そうだけど…… 逆バンクがね……」


 ポツリと杏香は言った……


「逆バンクって、2コーナーを過ぎた……」


「違う! S字コーナー先の右カーブ、結構左にGが掛かるからスピードが落ちるんだよね」


「でも、右カーブでGが掛かるならバンクだってあるでしょう」


 そう、バンクとはカーブの外側から内側に傾斜が作られており外側へ流れたり、スピンにならないような構造になっています。


「あそこは、S字からの右カーブだからバンクは無く、フラットなんだよ! それで、普通に走っていたら予想以上に左にGが掛かって逆にバンクが付いているような感じがするから逆バンクの名前がついているの」


 杏香は平然とそういうけど、普通に走るってどれくらいのスピードで走るのか……


「でも、そういうとこなら減速するしか無いんじゃない。スピンしたり、コースアウトしたら終わりだよ」


「うん、そうなんだけど……」


 なんだか歯切れが悪い返事だけど、それをずっと調べていたのかな……


「おーい、そろそろフリー走行が始まるぞ」


 本多(ほんだ)君にそう言われ、杏香はカーナンバー68番のコックピットに収まりステアリングを取り付けています。


 なんのかんの言っている割にレースは好きなんじゃない!


「それじゃエンジン掛けるよ、杏香!」


「うん」


 えっ、『杏香』って…… 水上(みなかみ)君とはいつからそんなに仲良くなったの? まあ、仲が良いのは良い事だけど……


「それじゃ、行って来るね!」


 杏香は水上君にそう言ってピットロードへ出て行きました。


「へえー、結構仲が良いじゃない!」


 小林(こばやし)さんが水上君を揶揄っています。


「そんなんじゃ無いですよ!」


「でも、かなり良い感じに見えたけど」


 もう、小林さんもやめなさい! ああいうのを見るとお姉さんとしては気になっちゃうんだよね……


「小林さん、タイムよろしくね」


 私がそう言うと……


「はい、はい」


 そう返事が返って来た。まったくもう……


 そう言ってるうちに、ほとんどのマシーンが一周目を終わらせ二周目に入っていき、徐々にスピードを上げて行きます。


「本多君と杏香は良い感じに走ってるね」


「はい、でも、逆バンクはちょっと滑りやすいみたいですね」


 うん、杏香が気にしていたポイントだね……


「本多君もそうなの?」


「えっ……」


「いや、逆バンクのとこなんだけど本多君もそうなのかなって……」


「いえ、うちのドライバーだけじゃなくて、全体的に通常より遅いですよ」


 あっ、そういう事か…… 杏香が気にしていたから、うちのドライバーだけかと思ってました。


 そう話ているうちに、あの二人は本気モードで走っています。


「本多君ですけど1分37秒263です」


 やっぱり、雨の所為でドライからすると1秒くらい遅いかな……


「小山内さん1分38秒005です」


 うーん、ちょっと遅いな…… このままだどQ2へ行けないんじゃないかな……


「美郷さん、小山内さんをボックス指示して!」


「どうしたの?」


 山口君が、何かに気付いたみたいだけど…… 杏香は今、130Rを通過したところです。


「杏香、ボックス!」


「了解」


 杏香も、良いタイムが出ないのを気にしてるようです。


 ピットに杏香が戻って来ました。意気消沈の杏香です。


「小山内さん大丈夫?」


 山口君が優しい言葉を掛けています。


「うん、大丈夫……」


 杏香自身レース結果に納得出来てないようね……


「タイヤ内圧を0.2bar低くして!」


 山口君はタイヤの空気を少し抜くみたいだけど……


「山口君、それでタイヤは大丈夫なの!」


「はい、タイヤの内圧を低くする事でグリップ力が向上します」


「確かにタイヤの設置面は大きくなるけど……」


「そもそも、スーパーフォーミュラは前後に働く力と横に働く力があります。タイヤ内圧を低くする事で横に働く力は低下するけど、前後の力はさほど問題無い」


「でも、横の力が低下するのは……」


「レースでは前後の力が重視されます。彼女の場合これで上手くコントロール出来ると思います」


「解ったわ!」


 まあ、山口君がそう言うのならやってみても良いけどね。


「GO!」


 杏香はタイヤ内圧の調整だけでコースに戻りました。すると杏香の走りが良くなったよう見えました。


「美郷さん、本多君1分36秒875です」


「うん、それじゃ戻そうか」


「はい」


 本多君は問題無くフリー走行を終える事が出来ました。でも、杏香は……


「えっ、うそ!」


 そう言って小林さんはストップウォッチを見ながら固まっています。


「どうしたの?」


「小山内さんのタイムが…… 1分37秒028です」


「えっ、 どうして!」


 私も小林さんもちょっと驚いてしまいました。


「うん、上手くいったかな」


 どうやら、山口君は想定内の結果だったようです。


 でも、タイヤ内圧を調整する事でタイムを1秒くらい縮める事が出来るなんて…… でもこれで、予選もなんとかなりそうです。

雨のフリー走行で、思うようにタイムが出ない杏香だけど、山口がタイヤ内圧を調整する事でタイムが速くなった。

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