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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第二章 シーズン開幕
20/132

20 それぞれの心境

決勝前のフリー走行です。ここでは二人ともコンディション良好のようです。

 本多(ほんだ)君も杏香(きょうか)もコンディションは完璧のようです。私はまだ、昨日の事を引きずっていますけど…… でも、いい加減吹っ切らないとね。


小山内(おさない)さんのタイムが良いね」


 GMがそう言ってます。


美郷(みさと)さん、今日は小山内さんを先に出しますか?」


「えっ、それは駄目よ! 本多君がファーストなんだから彼に優勝してもらわないと」


 私はそう言いましたけど、チーフメカニックの山口(やまぐち)君の意見はちょっと違うようです。


「でも、速いタイムの方を優先するべきじゃ……」


「そこは、決勝が始まってからでも良いんじゃないか」


 最終的にGMがそう言ったので決勝が始まってから調子の良い方をと言う事になりました。


 午前のフリー走行も終わり、あとは午後三時からの決勝です。そこで、ちょっとしたミーティングをする事になりました。


「美郷さん、俺の方から提案があります」


 ミーティングが始まって早々に本多君がそう言います。


「提案って!」


「申し訳ないんだけど、今日の俺は、今ひとつ乗り切れていない。それで、今日は小山内に先に走ってもらって俺が後続をブロックするのはどうだろう」


「おい、開幕戦早々に何言ってるんだよ!」


 山口君が血相を変えてそう言っています。


 気持ちは解ります。それは私達が判断する事でレーサー自身が言う事では無いと思いますので、でも山口君、さっき言ってた事と話が違うよね……


「まあ、さっきの話もある事だし良いんじゃないか」


 GMは、そもそもそのつもりだったからね、でも、調子が悪いのを見透かしていたのかな……


「す、すみません……」


「本多、今日は仕方ないにしてもだ、おまえもう少しファーストドライバーとしての自覚を持ってもらわないと困る」


「はい……」


 GMから小言を言われても仕方がないわね……


「えっ、それって私が前に出て走るって事ですか!」


「まあ、そう言う事になるわね」


 まあ、杏香は不安だろうね…… 初めてのSF開幕戦でいきなり前を走る事になる訳だから。


 私の返事を聞いた彼女は、少しキリッとした表情の中に笑みを浮かべて……


「判りました! がんばります」


 そう言い切りました。


「えっ……」


 杏香は満面の笑みで、やる気満々のようです。私は驚いてしまいました。


 この娘はよく解らない。あいつだって、こんな事は言わないと思う。このやる気は一体どこから出て来るのか。


「解ったわ! それじゃ一周4.563kmを41周します。タイヤ交換なんだけど」


 私がそう言いかけた時、山口君が言いました。


「タイヤ交換は20周前後で良いと思います」


「それは、ちょっと遅くないか?」


 GMがそう言うのは判ります。私もGMと同じ意見です。


「確かにタイミング的にはそうですが、今日の気温や路面温度を見てもそれくらいがベストだと思います」


「うん、そうね! それだったら他のチームの出方も見れるかな」


「それじゃ、スタート直後に杏香は本多君の後ろに着いて! それでタイミングを見て本多君の前に出てもらって良いかな」


「はい」


「それで、オーバーテイクでトップに出れば良いですよね!」


「そ、そうね……」


 この娘の頭の中はどうなってるんだろう…… レースとなると考え方がついていけないわ…… それに、そんなに上手くはいかないと思うけど。


 そんなところでミーティングが終わり、いよいよ決勝レースのスタートです。本多君も杏香もコースに出て行きました。


 はあ、大丈夫かな…… 何だか、私が緊張して来ました。


「美郷さん、どうかした? まだ気分が悪いのなら取り敢えず椅子を持って来るけど」


 GMは、まだあの日だと思っているみたい。


「いえ、大丈夫です。なんだか私が緊張して来て」


「うん、僕達はやれる事はやった! あとは彼と彼女に任せよう」


 GMがまともな事を…… どうやら本気モードになったようです。


「はい、やりましょう!」


 杏香達は、ウォーミングラップ一周をした後、スターティンググリッドに着きました。いよいよスタートします。レッドシグナルがひとつずつ点灯して行きます。そして、緊張で、胸の鼓動が激しく鳴る中…… 今、すべてのレッドシグナルが消え決勝がスタートしました。所々でタイヤを路面に擦り付けたために白い煙をあげながら、メインストレートから第一コーナーへ飛び込んで行きます。


 その時、杏香は本多君の背後ではなく、彼を抜いて3番手にいました。スタート直後の混戦を潜り抜け6位から3位にジャンプアップです。


「まったく、どうしたらあんな曲芸みたいな事が出来るかな……」


「彼女はSF初めてなんだよね」


 私も、山口君も驚きを隠せません。


 その頃本多君は、杏香が前に出た為、順位をひとつ落として4位をキープしています。


「小山内さん、乗ってますね!」


 タイムキーパーの小林さんもワクワクしながら笑顔です。


「ええ、取り敢えずスタートは驚くほど成功ね」


「美郷さん、タイヤ準備OKです」


 タイヤウォーマーに包まれた2セットのタイヤが準備されました。ピットの方も準備万端です。


 これで何事もなく、周回を重ねて無事に終わると良いんだけど……


決勝レースがスタートしました。ミーティング通り最高のスタートを切ることが出来ましたけど……

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