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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第二章 シーズン開幕
18/92

18 決勝前夜

決勝前夜、今日は日本レースプロモーション主催の懇親会があります。よりによって何故このタイミングなのか…… レース主催者の懇親会なので行かないという選択肢は無いんですけどね……

 開幕戦の予選が終わりました。明日の決勝PP(ポールポジション)はYAMAGUCHI Racingの中森勝利(なかもりしょうり)です。2位には team(チーム) panther(パンサー)松島祐希(まつしまゆうき)、3位にはうちのファーストドライバー、本多浩孝(ほんだひろたか)君が入りポイントも1ポイント獲得しました。スーパーフォーミュラは予選でも1位から3位までは3ポイント2ポイント1ポイントとポイント獲得が出来ます。


 うちのルーキー小山内杏香(おさないきょうか)は予選6位、3列目からのスタートです。まあ、デビュー戦でそこまで走れるとは思ってもみなかったので、GMも山口君も大はしゃぎです。これからが楽しみです。


「美郷さん、レストランに行きませんか? お腹がすきました」


 マシーンを降りてピットからパドックに戻って来た杏香の最初の一言です。


「杏香、レストランも良いけど午後6時から日本レースプロモーション主催のパーティがあるからね!」


「えっ、パーティですか? でも、6時からなら……」


 まだ時間があるし、それまで我慢出来そうも無いようね。


「まあそうだけど、主催者からのパーティというか懇親会のようなもので、他のチームも来るからね」


 杏香にはそう言ったものの私はあまり出席したくないです。なんとなく居場所が無いような感じなんですよね…… どこのチームも出席してくるし、みんな明日の決勝の事で情報を聞き出そうと話しかけて来るからね! まあ、それでもレース主催者がするパーティだから仕方なく出席ですけどね……




 午後6時、パーティが始まります。ホールの中央にご馳走を乗せたテーブルがあって、周りには沢山の人がいます。


「中森さん、ポールですね!」


 などと話し声が……


「ああ、たまたまだよ!」


「でも、優勝は僕が頂きます」


「生意気な!」


 挑発したような話し声、もしくは少しでも情報を得ようと話し掛けて来るものも……


「本多さんも一言言ってこなくて良いんですか?」


 杏香はまた、余計な事を…… 折角シャンパンを飲んで楽しんでいるのに。


「馬鹿野郎! 恐れ多くてそんな事言えるかよ」


 その時、本多君は話し掛けられました。


「よお、本多! シャンパン飲んで余裕か?」


「あっ、どうも……」


「おまえも3番手だったな!」


「あっ、はい……」


 何だか言われっぱなしだな……


「まあ、がんばれよ! 本多、そのうちおまえんとこのお嬢ちゃんに追い越されないようにしとけよ」


「そんな事は…… ないです」


 あーあっ、見透かされてるね、本多君! あれじゃ酔えないね……


「あっ、あの、本多さんはちょっと調子が悪かったんです! 明日はもっと速く走れますから」


 杏香はチームメイト思いだね! でも、本多君はちょっと意識しすぎているかな……


「ほう、そうかい! 本多、楽しみにしてるぞ! それにしてもお嬢さんはレーシングスーツよりドレス姿の方が似合ってるね」


 そう言って中森君は行ってしまった。


「はあ…… おまえな、余計なプレッシャーをかけるな! それに中森を本気にさせるような事言いやがって」


「えっと…… あっ、ローストビーフがある♪」


 そう言って杏香は本多君のそばを離れて行ってしまいました。上手い事逃げたわね……


「くそ、折角のシャンパンが不味くなる」


 まあ、ここは戦場、同じ仲間のようでライバルばかりのパーティ…… こんなんで懇親会とか出来ないわ…… でも、杏香は楽しそうね!


「ローストビーフにこれは、フォアグラじゃないかな」


 そう言って杏香がトングに手を伸ばした時……


「あっ!」


「あっ、ごめんなさい…… どうぞ!」


 同じ料理に手を伸ばしたその女性は……


「あなたは、小山内さんだよね……」


「えっ、そうだけど…… あなたは?」


「私は、木村結菜(きむらゆいな)明日は負けないわよ! って、もう負けてるか……」


 彼女は、ヨーロッパの方では成績優秀だったはずなのに、SFでは、まだ一度も勝ててない。それどころか上位にも入っていない。


「まだ、決勝前なのに何言ってるの?」


「負けてるよ、あなたは予選6位。私は17位だもん」


「そんなに……」


 杏香は何も言えなくなってるかな。


「あなたはF3からステップアップしたの?」


「えっ、私はヨーロッパのF3のチームに行く予定だったんだけど、F4で年間チャンピオンになれなかったから……」


「それで、スーパーフォーミュラってどう言うことよ! 私は、ヨーロッパでユーロフォーミュラオープンで優勝したし、ジノックスF2000では年間チャンピオンになったわ! それでようやくスーパーフォーミュラのシートを手にしたのに……」


「そんなのはよく解らないわ! 私はF4の最終戦前に、team KAEDEからオファーを受けただけなんだから」


「そ、そう…… ラッキーだったのね」


 そう、木村さんはヨーロッパの方で活躍してからここにいる訳だから、杏香の事は羨ましいのかもね! うちのチームは川嶋君の代わりのドライバーがどうしても欲しかったから、偶々F4に良いドライバーがいるのをオーナーが聞いて、私がオファーしたんだもんね! 他所のチームじゃあり得ないかもね。


「ねえ、それだけの実力があるのに何故、17位なの?」


 また杏香は余計な事を……


「さあ、解らないわ…… あなたみたいに軽快にスピードを出せれば良いんだけどね」


「怖いの?」


「まさか、そんな訳ないでしょう! ただ、次から次にコーナーが出て来るから対応してるとスピードが出せないのよ……」


 要するにコースに慣れていないんだね! ヨーロッパのコースと何か違うのかな?


「まあ、お互いがんばろう!」


 そう言って杏香は彼女から離れて、私のそばへ戻って来ました。


「何だか居心地の悪いパーティですね」


「まあ、みんな明日の事で頭がいっぱいなんだよ」


「折角のパーティなんだから、もっと楽しめば良いのに」


 まあ、杏香の言う通りなんだけど、人それぞれ考え方が違うからね……


 その後、私と杏香は美味しそうな料理を食べるだけ食べて、さっさと退散する事にしました。

決勝前夜の懇親会はあまり楽しめない感じです。こう言うのは、決勝が終わった後の方が良さそうですけど…… レースが終わった後は何処のチームも忙しいから無理かな。

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