141 偵察
鈴木オーナーや源さんからSFとF2の説明があったけど、あまり納得のいく話ではないです。まあSFは全日本の大会だし、世界を転戦する国際大会のF2とは違うのかな……
鈴鹿サーキットでテスト走行をしています。
初日の夕方にF2マシーンの整備が終わったので、結菜はSF、杏香はF2で走っていましたが、タイム的には結菜が杏香より4秒速いという結果に……
これはF2よりもSFの方が、マシーン的に速いからという事でしたけど……
私はちょっと飲み物を買うためにピットビルの方へ来ました。その時人影が…… 今日はうちの貸切だから誰もいないはずなのに、しかし自販機のところから男性がひとり現れました。あれって、私達の練習を見に来てるって事……?
「Excuse me Do you know team Showgo?」
えっ、この人誰? 何処かで見たような感じだけど……
私は、不審者でも見るような目で、この外国人を見ています。
「Do you understand English?」
えっ、英語解るかって! 関わりたくないから知らないって言っとこうかな……
「No,I don't understand English」
私は、面倒くさそうにそう言いました。すると……
「I understand that I don’t know, so I'm answering in Englsh」[知らないって? 解っているから英語で答えているんだよね]
はあ、失敗した…… 私は俯いてしまった。
「So, what do you want to ask?」[それで、何が訊きたいの?]
私は睨みつけるように外国人不審者に言いました。
「Do you know Kyouka Osanai」[Kyouka Osanaiを知ってるか?]
こ、こいつ、ドライバーなのか?
「Ha, which team's driver are you?」[はあ…… あなた、何処のドライバーなの?]
「I'm the one asking the question」[質問をしてるのは僕なんだけどね]
こいつ何を考えているんだろう。目的はなに?
「Let me tell you,Kyouka won'tlose to people like you」[言っとくけど、杏香はあなたみたいな人に負けないわよ]
「Huh, I'mlooking forward to it」[フッ、それは楽しみだ]
一体こいつは何者なの……
「So, who are you」[それで、あなたは誰なの?]
「I'm here to become the George McClay Series Champion」[僕はジョージ マクレー! シリーズチャンピオンになりに来たんだよ]
こいつがジョージマクレー、中森のチームメイトだよね…… こいつを倒さないと杏香のシリーズチャンピオンは無いという事か……
「Tell Miss Osanai ,I'm the one who wins. Ciao!」[小山内に言っといてくれ、勝つのは僕だってね、チャオ!」
ううう、気持ち悪い! チャオだって、月刊少女マンガじゃ無いつうの! なんなのよ、あいつ今シーズンルーキーで来たばかりなのに…… 杏香のライバルは中森と松島だけで充分なのに……
1日目のテスト走行が終わりました。
「オーナー、ジョージマクレーが偵察に来ていました」
私は、鈴木オーナーと岩崎チーフに話しました。
「えっ、マクレーが来てたのか!」
「はい」
鈴木オーナーは何だか嬉しそうに言ってますけど……
「しかし、その情報は何処から出ているのか、この事は公開してなかったと思いますけど」
確かに、テスト走行はするとは言っていたけど、いつ、何処でするかは公開してなかったと思います。
「観客席にいたんですか?」
「いえ、ピットビルへ飲み物を買いに行った時に話しかけられました」
しかし、何処でテスト走行の事を訊いたんだろう……
テスト二日目、今日も朝から杏香はF2で、結菜はSFで走ります。
「杏香、エンジン掛かったぞ!」
水上君がそう言った時……
「美郷さん、ジョージマクレーが来てたの?」
杏香にそう訊かれました。
「うん、昨日ピットビルにいたからテストも見られてたかもね」
「えっ、それって大丈夫なの?」
結菜も話に加わって来ました。
「問題無いわ! 別に隠してることなんて無いから」
私がそう話した時……
「あの、そろそろスタートしてくれない?」
水上君にそう言われ、杏香と結菜は慌ててピットを出て行きました。
「美郷さん、YAMAGUCHI Racing teamは小山内さんを正式にライバルにしてくれたみたいですね」
まあ、昨日偵察に来てたから岩崎チーフもそう考えたようです。
「うん、でも来たのは中森じゃなかったね」
「うん、彼はF1経験者でこれからのF1候補生を見守ってるんじゃないかな、マクレーもそのひとりだと思うよ」
そうかな…… 私はそういうふうには思えませんでした。
その時、杏香が急いでピットへ戻って来ました。
「ちょっと杏香、ピットレーンのスピードに気をつけなさい!」
私はそう注意しましたけど……
「メインスタンドに誰かいる!」
そう言って杏香は、ピットビルへ走って行きました。
「ちょっと杏香、待ちなさい!」
私も杏香を追って、走ってメインスタンドへやって来ました。
「ハア、ハア、ハア、ちょっと杏香、何やっているの!」
私は杏香にそう言ったんですけど……
「視力は良いようだな!」
そこにはYAMAGUCHI Racingの中森勝利がいました。
テスト初日のジョージマクレーには驚きましたけど、まさか次の日に中森勝利が来るとは…… いよいよ杏香は、正式にYAMAGUCHI Racingからライバルと認められたようです。




