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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第一章 teamKAEDE
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13 テスト最終日

まさか、彼が来るとは思わなかった。しかも、私に逢いに来たんじゃなく、小山内さんの走りを見に来ただなんて…… でも、あいつはあの娘の走りを見てどう思ったのかな…… 本当あいつのことは判らないわ!

 初日のフリー走行とミーティングが終わり、一日目のマシーンテストが終了しました。


「それで、川嶋(かわしま)君はどうするの?」


「俺は、折角だから温泉にでも行こうかな


 川嶋君は、呑気にそんな事を言ってるけど……


「ひょっとして、今から行くの?」


「どういう事だよ!」


「日田温泉まで車で八十分は掛かるよ」


 私がそう言うと……


「えっ、本気(まじ)か!」


「川嶋、宿は予約してるのか?」


 本多(ほんだ)君も心配してくれてるようです。


「いや、取ってない……」


「川嶋さん、キャンプでもするんですか?」


 あちゃ…… 小山内(おさない)さんからも突っ込まれているよ。頭が痛いな……


「もう、何やってるのよ! ロッジに空きが有るか訊いてあげるから待ってなさい」


 まったく、チームを辞めてからも世話が妬けるんだから……


「いや、温泉地までそんなに掛かるんだっけ? 一人だから何とかなると思ったんだけど……」


 ロッジには取り敢えず空きが有ったので、追加で使わせてもらう事にしました。


「あんれまあ、遅れて来られたんですか? お仕事大変ですね!」


 ロッジのおばさんからもそう声を掛けられる川嶋君はちょっと恥ずかしそうです。


「ハハ、いや…… そうなんですよ」


「まったく、有り難く思いなさいよ」


 私がボソッと言うと……


「これってチーム持ちって事じゃ……」


「ちゃんとあとで請求してあげるからご心配なく」


「あっ、そうだよな……」


 そういう事で一日目のテスト走行はとんだ珍客もあったけど、無事終了です。


 まあ、本当はテストは一日だけでも良かったんだけど、折角オートポリスまで来たし、小山内さんもある程度マシーンに慣れてもらった方が良いと思うからね!




 テストニ日目、フリー走行から始めます。


「彼女の調子はどうかな?」


 いつの間にかオーナーが私の隣に来ていました。いつパドックに来たの? しかも気付いた時には私の隣いるなんて……


「えっと、1分37秒から38秒くらいです」


 私が昨日からのタイムとテスト結果を簡単に説明しました。


「うん、何とか使えそうだな」


「はい」


「うん、あとは深田(ふかだ)君と君が上手く指導してくれれば、来シーズンも楽しめそうだな」


 はあ…… 楽しむだなんて、気楽で良いな……


「オーナー、もう少し見て行かれますか?」


 深田さんも余計な事を、早く帰ってもらえば楽なのに…… まったくドライバーは良いよね、こんな気遣いをしなくて良いから……


 でも、こんな事を思うなんて私、疲れているのかな……


「ああ、パドックで見るのはやっぱり良いね、昔を思い出すよ」


 えっ、昔って、オーナーもレースやってたの?


美郷(みさと)さん、そろそろボックスして休憩しようか」


「あっ、はい……」


 珍しく深田さんから声を掛けられたのでそうしました。


小林(こばやし)さん、何LAP走ったの?」


「えっと、26LAPです」


 ふーん、結構走っていたんだ。


「美郷さん、今日は早めに切り上げるんだよね!」


 チーフメカニックの山口(やまぐち)君です。マシーン撤去とかあるもんね。


「一応、二時くらいに終わろうと思ってたけど」


 私がそう言った時でした。


「今日はもう午前中でやめて良いんじゃないですか」


 オーナーがそう言いましたけど……


「折角だから日田で温泉にでも入って帰れば! 帰りのチケットはどうなってるの?」


 オーナーは引き続きそう訊きますけど……


「みんな、明日の昼前に福岡から飛行機で帰ります」


 GMの深田さんがそう説明しました。


「それじゃ、日田温泉の知り合いの旅館に言っておくからバスで行くと良い」


 はあ、まあオーナーがそう言うなら山口君達も楽だろうし、でも、そうなると久しぶりにゆっくり出来るかな…… 来週末はP&Rだし、良いかな。私はそう思いましたけど……


「あっ、でもレンタカーが……」


「美郷君、どこで借りたの?」


「えっと、熊本空港です」


「それじゃ、私が返しておくから君もバスでみんなと行きなさい」


「あっ、はい…… 有難う御座います」


 今日のオーナーは、何だか気前が良いな……


 そういう事で休憩の後、何周かアタックをして、フリーで数周走った後、ニューマシーンのテスト走行は終了という事になりました。


「それじゃ、マシーン撤去をするから水上(みなかみ)青木(あおき)こっちに来てくれ」


 山口君達は今から大変だ!


「あっ、そうそう、川嶋君も予定が無いなら一緒にどうだ?」


 オーナーからそう誘われていますけど……


「はい、ぜひよろしくお願いします」


 本当、調子の良い男、こんな奴だったっけ……


「あっ、本多さんと小山内さんもちょっと手伝ってくれる?」


 山口君がそう言うけど……


 どうやらマシーンをトラックに乗せるためコックピットに小山内さんを乗せマシーンを押してトラックに乗せるようです。


「あっ、浮いた!」


 小山内さんを乗せたマシーンがトラックの垂直ゲートの上に乗った時点でゲートが上がり、そのままマシーンを押して荷台に乗せました。同じように二台目も乗せてあとは動かないようにワイヤーを使って固定しています。


「こうやって乗せるんですね! でも、エンジンを掛けて乗せた方が早くないですか!」


 彼女はそう言うけど……


「マシーンの馬力が大きいから調整が難しいんだよ! トラックにぶつけたら大変だからね」


 山口君の説明で小山内さんも納得したのかな? これで撤去も終わりました。マシーンは明後日の夕方、名古屋のガレージに着くみたいです。この後私達は、オーナーのご好意で温泉でリフレッシュしました。

オートポリスでのテストは終わりました。ニューマシーンの仕上がりも、ドライバー二人の調子も良く、意義のあるテストでした。その後は、オーナーのご好意で温泉を楽しむ事が出来ました。でも、あいつからは何も無かったな……

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