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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第五章 teamSHOWGO
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121 結菜の苦悩

杏香がF2のマシーンで10周ほど走った後、結菜と交代です。結菜は川嶋君に説明を聞いてさっさとコースへ出て行きました。その後、川嶋君も走るとは思うけど、結菜はどこまで逃げる事が出来るかな……

 私達は富士スピードウェイにteamSHOWGOのテストに来てましたけど……


結菜(ゆいな)、速く走らないと川嶋(かわしま)さんが来るよ!」


 無線で杏香(きょうか)が言っていますけど…… そうです。私達は引き続きチームダムスのテスト走行に参加させてもらってます。


 今は、結菜が走っていますけど、半周遅れでスタートした川嶋君が、もう結菜のすぐ後方まで迫って来ました。


『嘘! 私の後ろにいるのは誰!』


 結菜は無線でそう騒いでいますけど……


「結菜、さっき一緒にいた川嶋さんだよ! 結菜がコースに出て半周遅れで出て行ったんだけど……」


『えーっ! なんでこんなに速いのよ』


 まあ、これが格の違いって事でしょう。杏香もイギリスでこの屈辱は味わったもんね…… 結菜もF2の洗練を受けましたね。


 二台のマシーンは1周目を終え、第1コーナーからコカコーラコーナーへ向かってますけど、結菜のテールにピッタリと川嶋君が着けています。


 でも、アドバンコーナーを回ってダンロップコーナーへ行く途中で結菜は抜かれてしまいました。


 その後も頑張って走っていた結菜ですけど……


『あーっ、もう見えなくなっちゃった!』


 そう、川嶋君は一気に結菜を抜いて引き離し、周回遅れを狙っているみたいです。


 3周目メインストレートを通過した結菜の後方に小さくマシーンが見えます。


『嘘! もう後方から来てるの』


 そう言った結菜は第1コーナーを回ってコカコーラコーナーへ向かっていますけど……


 川嶋君も第1コーナーを回りました。その時、結菜はアドバンコーナーを回ってダンロップコーナーへ向かっていますけど、川嶋君がもうすぐ後ろに迫っています。


 結菜も抜かれないようにブロックをしていますけど……


『あーっ、もうだめだ!』


 無線でそう叫んだ時、周回遅れにされてしまいました。


『もう、なんでよ!』


 そう言った結菜でしたけど、勝手にピットへ戻って来ました。


「結菜さん、まだ走って良いんだけど」


 私はそう言いましたけど…… 彼女は椅子に座ってヘルメットを被ったまま項垂れています。


 その後、川嶋君も一周回って戻って来ました。


「おい、誰が戻って良いって言ったよ!」


 川嶋君は、びっくりしてピットへ戻って来たんだろうけど…… 仕方ないです。半周早くコースに出た結菜が、たったの1周半で追い抜かれ、3週目で周回遅れになったんだから……


「ちょっと川嶋君やりすぎよ!」


「えっ、いや、小山内(おさない)だってシルバーストーンでは、俺に何度も周回遅れにされてるから……」


「彼女は、育成ドライバーじゃないでしょう!」


 私がそう言った時、結菜はパドックの奥へ走って行ってしまいました。


「結菜、泣いてたね……」


 杏香がそう言った後……


「あーあっ、川嶋君が女の子を泣かした!」


 私がそう言ってたのを聞いて杏香は楽しそうに川嶋君を見ていますけど、結菜は大丈夫かな……


「ねえ杏香、ちょっと見て来てよ!」


 私は杏香にそう言いましたけど……


「ほっといて良いんじゃない」


 杏香からは耳を疑うような一言が……


「ちょっと……」


「私、また走って来るね!」


 そう言った杏香は、結菜が降りて放置していたマシーンに乗り込み、コースへ出て行ってしまいました。


「もう、どうするのよ! もしこれで結菜がスーパーフォーミュラを辞めるなんて言い出したら秀樹(ひでき)の所為だからね」


 私は厳しい表情で彼を睨むように言いました。


「そん時は仕方ないんじゃないか!」


 川嶋君からも信じられない一言が……


「ちょっと、無責任なんじゃない!」


 私も反論しましたけど……


「モータースポーツはそんな甘いもんじゃないだろう。あれくらいで辞めるんだったら早い方が良い」


 そう言って川嶋君は、またコースへ戻りました。


「もう、どうなってるのよ!」


 私がそう言った時、サラもパドックから出て行きました。


 はあ…… どうしよう…… 翔吾(しょうご)さんになんて言おう…… このままだと来シーズンは杏香ひとりでスポット参戦になっちゃうじゃない!


 いや、それだけじゃ済まないかも…… もし彼女が辞めたら、(かえで)オーナーにも話は行く筈だから、私の首も飛ぶかも……


 はあ…… どうすんのよ…… もし、そうなったら秀樹に責任取ってもらわないと…… でも、それってあいつの側に行けるってこと……


「Hey misato」


 私がそんな妄想を思い浮かべていた時、私を呼ぶ声が……


「えっ……」


 そこには、サラと瞳が涙で濡れている結菜がいました。


「結菜さん、大丈夫?」


 私は彼女に訊きましたけど、彼女は黙ったままです。


「オイ、オマエ、オレタチカツツモリカ?」


 そう言って私達の前に立っているのはジェームズでした。


「私は、もう負けたくない……」


 結菜は絞り出すようにそう言いましたけど……


「オマエ、マケテモ、モンダイナイ、オレマケタラ、F2デキナイ」


 そう言ってジェームズは、またコースへ出て行きました。


 まあそうだよね、杏香も結菜も格上のドライバーに負けてもさほど問題ないけど、あの二人がスーパーフォーミュラのドライバーに負けたとあっては、F1なんて無理だもんね……

結菜は、川嶋君に3周で周回遅れにされた事が相当悔しかったみたい…… このまま辞めないと良いけど、美郷はかなり心配しています。

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