120 結菜の初体験
杏香のF2テストに見学に来た結菜ですけど、彼女もテストに参戦する事になりました。
でも、結菜はちょっと迷惑そうです。
teamSHOWGOのテストをするため富士スピードウェイに来ていた私達ですけど……
ただ、そこにはF2のチームダムスの姿もありました。
ダムスの育成ドライバーになっている杏香のためにジェームズがF2最終戦の後、日本でテストをする事を提案したみたいなんだけど、これって絶対一緒に走りたかっただけだよね……
「それじゃ小山内、準備が出来たらおまえからだ」
「えっ、私からってどういう事?」
杏香はF2マシーンに乗ったまま川嶋君に訊いています。
「おまえと一緒にいたお嬢さんも乗りたいと思ってな」
結菜が乗りたいかどうかは解らないけどチャンスだよね! F2マシーンに乗れるなんて滅多にない筈だから……
「ふーん、それじゃ私は先に走ってるね!」
そう言って杏香は、さっさとコースへ出て行きました。
「ねえ川嶋君、マシーンはもう一台余分にあるの?」
私はちょっと気になりましたので訊きました。
「いや、小山内が乗っているのは、あいつ用に準備したものだから、他には無いよ」
「そうだよね、スーパーフォーミュラでもF2でもレギュレーションで Tカーの使用は禁止だよね」
私はそう言いましたけど…… あいつ用!?
「ねえ、あいつ用ってどういう事?」
私はそう訊きましたけど……
「だから、あいつ専用って事だ」
「いや、だからF2にステップアップもしてないのに、何故専用車があるのよ!」
「知るかよ! オーナーが準備したんだから」
ちょっとキレ気味の川嶋君からそう言われてしまいました。
えっ、でもオーナーって、私がそう思った時でした……
「Misato,please!」
サラがそう言って私に無線を押し付けました。
「えっ、何、どうしたの?」
「I don't understand ,so please」
サラがそう言うので、私はサラから無線を受け取りましたけど……
『ねえサラ、聞いてる!』
無線からは杏香の声、何か言ってます。あっ、それでサラが判らなかったのか……
「杏香、どうしたの?」
『あれ、美郷さん?』
「もう、あなたが日本語で話すからサラが困ってたわよ!」
『あっ、そっか』
サラも私の横で頬を膨らませています。彼女もこういう仕草をするのね、意外と可愛いとこあるじゃない。
『ねえ美郷さん、結菜はいつコースへ出て来るの?』
「えっ、どういう事?」
『だって、結菜もF2マシーンに乗るんだよね』
あっ、杏香がコースに出る前に川嶋君が言ってたもんね。
「川嶋君、どうするの? 他にマシーンは無いんだよね!
私が彼にそう訊いたら…… 川嶋君は私から無線を取って杏香に言いました。
「おまえともう一人のお嬢さんは交代で乗ってもらうから、こっちからボックスの指示をするまで好きに走ってろ!」
そう川嶋君から無線で言われた杏香は、ジェームズおじさんとバトルを始めました。
「はあ…… それじゃ、私もレーシングスーツに着替えて来ます」
そう言って、あまりやる気のない結菜ではあったけど、着替えに行ってくれました。一応スーツは持って来てたんだ。
一方杏香は、後方からジェームズに突かれながらも走っています。
『美郷さん、ジェームズをなんとかしてよ!』
杏香は無線でそう言うけど…… ジェームズが私の言う事なんて聞く訳ないでしょう。
「無理よ! 自分でなんとかしなさい」
『えーっ!』
杏香はそう言って、無線越しに声を上げてますけど、仕方がないですね!
そして、杏香が苦戦しながらも10LAPくらい走った頃……
「小山内もジェームズもそろそろ疲れて来たかな」
川嶋君がそう言って……
「小山内、ジェームズ、ボックス!」
そういう事で、選手交代です。その時丁度、結菜がレーシングスーツに着替えて戻って来ました。
「結菜さん、交代だって!」
私がそう言ったら、結菜は苦笑していました。
「はーい……」
結菜が気のない返事をした時、杏香とジェームズがピットに戻って来ました。ここで杏香と交代した結菜がマシーンに乗り込みます。
「どうだ、シートの調整はいるかな?」
川嶋君が訊いてますけど……
「大丈夫です」
機嫌悪そうにツンとした表情で結菜は言いました。やっぱり、ちょっと怒ってるのかな、折角F2に乗れるのに……
「ボックスの指示があるまで走って良いんですよね」
「ああ、操作はさっき教えた通りだ」
「解りました」
そう言って結菜はコースへ出て行きました。
「いや、凄いね。ストールせずにマシーンを走らせたよ」
川嶋君はそう言うけど、それって普通じゃないの? 私はそう思いました。
「すみませんね、私は初めてF2に乗った時は、エンストしましたから」
杏香が怪訝そうにそう言いました。そう言えば、そんな事もあったね……
「おお、怖」
そう言って川嶋君も自分のマシーンでコースへ出て行きました。先にコースへ出た結菜はアドバンコーナーに差し掛かっているところです。さて、川嶋君が何処で結菜に追い付くかな……
「それにしてもジェームズは疲れてるんじゃない?」
杏香がそう言ってますけど…… ジェームズは杏香の方をジッと見ています。何か言われてるというのは解っているようです。
「What are you saying?」
ジェームズが杏香に言っています。
「James,aren't you tired?」
私がそう言うと…… ジェームズは静かに首を振るだけでした。
でも、顔は疲れてるように見えます。本当は疲れているんでしょう! 昨日はうちのチームのスタッフと一緒にかなりお酒を飲んでいたからね……
杏香が10周くらい走ったところでピットへ戻されました。ここで結菜と交代のようですけど、彼女は迷惑そうです。大丈夫かな……




