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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第一章 teamKAEDE
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12 来客

スーパーフォーミュラに始めて乗って、そこそこ良いタイムを出すなんて…… あの娘のレーシングスタイルは、あいつに似ているのかも!

 オートポリスでのテスト初日、タイムアタックを2LAPずつ終え休憩です。小山内(おさない)さんは休憩返上で走りたくてうずうずしてるみたいだけど……


山口(やまぐち)さん! サスペンションをもう少し硬めに出来るかな」


「えっ、結構ハードにしてたけど…… 本多(ほんだ)君は硬めが好きだから」


「うん、でも走っていて、微妙に揺れがあるんだけど」


「それじゃ、少しソフトにすれば解消すると思うけど、少し調整しようか?」


 ドライバーとメカニックの意見交換は重要だね!


「うーん、でもふわふわするのはあまり好きじゃないんだよな」


 でも、サスペンションってショックを吸収するんだからそんなもんじゃ……


「山口さん、オーバーテイクシステムも使ってみて良いですか?」


 おっ、彼女も一丁前に話してます。


「オーバーテイクシステムはフリー走行中にストレートで使ってみてよ」


「はい!」


「あっ、それとスタートボタンは通常はいらないから」


「あっ、だからスピードが出ちゃったんですね……」


 ピットロード爆走は操作ミス……? いやいや、それは無いでしょう。でも休憩中もこうやってスタッフと話をするのって良いよね!


 あれ、ロイヤルルームのカーテンが開いてるけど、オーナーが来てるのかな……


「ねえ深田(ふかだ)さん」


「なんだい」


「今日、オーナーも来るの?」


「あっ、お客さんと一緒に来るような事を言ってたと思うけど…… どうかした?」


「うん、ロイヤルルームのカーテンが開いていたから、ちょっと気になってね!」


「えっ、そうなのかい!」


 うーん…… お客さん? スポンサーさんでも来るのかな……


「よお、美郷(みさと)! 元気そうだな」


 えっ、誰…… そう思って顔を上げたら……


「えっ、なんでここにいるの?」


 そこにいたのはF2へステップアップするためにイギリスへ行ったはずの川嶋秀樹(かわしまひでき)だった。


「いや、新人の彼女がどういう走りをするのか見たくてね」


「でも、イギリスへ行かなくて良いの?」


「ああ、年が明けてから行けば良いから、だから今年いっぱいは暇だ!」


 それで、わざわざ暇つぶしに大分まで来たわけね! 本当暇人だね……


 でもこのテスト走行の事、誰に訊いたの? 今回の件は非公開のはずだけど……


「あれ川嶋、どうしたんだよ」


 本多君からも言われているよ!


「なんだよ、俺がいちゃ駄目なのかよ」


「いや、そんな事は無いけどな」


「よお、お嬢ちゃん、なかなか良いタイムで走っているじゃないか」


「はあ…… どうも……」


 彼女が川嶋君を見る目が、なんとなく可笑しいです。


「あの、川嶋さんですよね!」


「ああ、そうだけど……」


「川嶋さんタイトルを獲ったのに、何故私達のカーナンバーが1番2番じゃ無いんですか?」


 えっ、それを川嶋君に訊く……


「ちょっと小山内さん……」


 私がそう言った時、川嶋君が制止しました。


「お嬢ちゃん、それはだな、俺がteam KAEDEを辞めたから、いや、来シーズン俺はスーパーフォーミュラに参戦しないから、だから来年のカーナンバーは現行のままなんだよ」


「それじゃ、カーナンバー1番は、誰が付けるんですか?」


「カーナンバー1番は来シーズンは不在だ」


 そう、タイトルを獲ったドライバーが来シーズンいない時は、カーナンバー1番と2番は不在となるため、カーナンバーは3番から始まる事になる。


「さあ、それじゃ、フリー走行行ってみようか!」


 私がそう言うと小山内さんは待ってましたと言わんばかりに、カーナンバー68番のコックピットに治ります。


「早くエンジン掛けてよ!」


 もう、やっぱり早く走りたくて仕方がないようです。これこそ水を得た魚みたいだね。


「はい、はい」


 そう言っているのは若手のスタッフ水上(みなかみ)君です。彼はマシーン後方からエアスターターを突っ込み圧縮ガスを吹き込んでエンジンを回します。


『ブウォンブウォン』


「ヨシ回ったぞ、行ってこい!」


「はい」


 そう返事をした後、彼女はゆっくりとピットロードを走って行きました。まあ、あれだけ言った後だから流石に言いつけは守るよね。


「あれ、おまえはまだ行かないのか?」


 川嶋君が本多君に言ってますけど……


「うん、あいつの走りをちょっと見てみたくてな」


「そうか…… 相変わらず物好きだな」


「そうだな」


 そう言って二人は、小山内さんの走りをああでも無い、こうでも無いと言いながら見ています。あの二人は、本当は仲良しなんだね!


「まあ走りは良いが、まだまだ粗削りだな」


「ああ、そうだな」


「おまえが指導してやらないとな」


 川嶋君がそう言うけど……


「俺が指導したら、俺は彼女に抜かれてしまうかもな」


「ふん、そこは上手くやれよ!」


「ああ、解った」


 本多君はそう返事をした後……


「俺のマシーンも回してくれ」


 彼も出撃のようです。

テスト走行にまさか彼が現れるとは…… オーナーが誘ったのかな…… 彼は小山内さんの走りを見てどう思ったのかな…… 何はともあれP&Rが楽しみです。

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