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女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第一章 teamKAEDE
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11 レギュレーション違反

小山内さんのニューマシーンのセッティングが終わりました。いよいよ、テスト走行スタートです。

 私達はオートポリスにニューマシーンのテストに来てます。


 マシーンの調整も終わり、カーナンバー67番のエンジンが掛かりました。


本多(ほんだ)君、準備が出来たらウォーミングアップに出て良いよ」


 私がそう言うと、彼は手を挙げて……


「それじゃ、先に行くから」


 そう一言言い残して本多君はコースへ出て行きました。


「あっ、ズルい、私も行くから! ちょっと早くエンジン掛けてよ!」


 彼女がピットクルーのスタッフにそう言います。


「判ったから、ちょっと待て!」


 彼女は先を越されたのが余程気に食わなかったようです。でも、あなたはセカンドドライバーなんだからね!


『ブォン』


「ヨシ、掛かったぞ! 行ってこい」


「はい、えっとブレーキを踏んで左下のパドルでクラッチを切って、スタートボタン。右下で半クラッチ右上でギアをlowにして、あとは左下を離すだけ」


 彼女はぶつぶつ言ってますけど、マシーンが動き出しました。


「あっ、動いた!」


 そう言ってカーナンバー68を付けた彼女もコースへ出るためにピットロードを駆け抜けますが……


「あっ、あいつ早速ルールを破りやがった!」


 スタッフの一人がそう言いました。


「ありぁ、本番なら即刻ペナルティだな……」


 次にチーフメカニックの山口(やまぐち)君です。


 その頃彼女は、ピットロードを加速してコースへ出て行きました。測定はしてないけど、最終的に80km/h以上は出ていたと思います。


「はあ…… 小山内(おさない)さん、すぐにボックス!」


 私は無線でそう指示を出しました。


『えっ、まだ半周もしてないですけど……』


「いいから、戻りなさい!」


 その後、すぐに彼女は戻って来ましたが…… またもやピットロードを猛スピードで戻って来ました。


「あの、どうかしたんですか?」


 彼女のこの行動は頭が痛いです。


「あの、じゃない!」


 スタッフの一人がそう言いましたけど、私が制止しました。


「小山内さん、スピード違反です!」


「えっ、どう言う事ですか?」


「あなたF4でも、今みたいにピットロードを猛スピードで走っていたの?」


「あっ!」


 ようやく、彼女は自分の過ちに気付いたようです。


「ピットロードは制限速度50km/hなの! これが本番だったら間違いなくペナルティよ!」


「でも、テスト、なんですよね……」


「テストでもレース本番でも、普段からルールは守るように! そうしないとレース本番でも無意識にやらかすわよ、良いわね」


「はい……」


 まったく、テスト初日からこれじゃ話にならないわ!


 その後、彼女は適正速度でピットアウトしました。


美郷(みさと)さん、アップ出来たのでそろそろアタックして良いですか?』


 本多君から無線です。私からの指示がないから催促して来たようです。


「そうね、次のLAPから行こうか」


『はい、ところでなにかあったんですか? あいつ、出て来たと思ったらすぐに戻ったみたいですけど……』


「あっ、いきなりスピード違反したからね」


「あちゃ…… それはまずいね」


 まったくよ! 新人のくせに……


「小山内さん、本多君がアタックするからラインをあけてね」


『はい……』


 今の返事だと、少し落ち込んでいるかな…… でもこの後、アタックしたら少しは気も晴れるかな。


 その後、本多君はタイムアタックを二周して戻って来ました。


「小山内さん次のLAPからアタックして!」

『はい』


「本多は1分27秒前半か」


「うん、結構良いわね」


「それで、嬢ちゃんは?」


 GMの深田(ふかだ)さんがパドックに来て訊いています。


「今、アタックしています」


『ヴォーオン』


 今、メインストレートを通過しました。


「小山内さんもう一周続けてアタック!」


『はい』


「1分27秒562 まあまあってとこね」


 その後、もう一周アタックして戻って来ました。


「美郷さん、タイムは?」


 すると、タイムキーパーの小林(こばやし)さんが教えているみたいです。


「ベストタイムってどれくらいですか?」


 やっぱり、タイムは気になるみたいね。


「確か、1分26秒後半くらいよ!」


「えっ、それじゃまだ、1秒くらい遅いじゃん」


 まあ、流石ドライバーだね! でも、決勝をすべてそのタイムで走る訳じゃないからね。


「小山内さん、まだ序盤だから徐々にタイムを上げて行けば良いからね」


 タイムキーパーの小林さんは、そう言いますけど、彼女は少し考えているようです。


「小山内さん、今回はマシーンのテストだからエンジンの吹き上がりとか加速の具合とか走行中の不具合とかを重点的に見て欲しいんだけど」


 チーフメカニックの山口君はマシーンについてドライバーの意見を訊きたいみたいです。流石メカニックの鏡だね!


「よし、それじゃ休憩しようか! その後フリー走行という事で」


 そう私が言うと、スタッフのみんなはホッとしたように気持ちが休まったようです。


「えっ、私は疲れていませんから、もう一度アタックしたいんですけど……」


 小山内さんのやる気は判るけど……


「小山内さん、休憩を取るのも仕事のうちだからね! 休みなさい」


 私はそう言いましたけど……


「でも、このタイムは納得がいかないので!」


 本当、彼女はレースが好きなんだね! でも……


「小山内さん、レースはあなた一人でやっているんじゃ無いの! スタッフやメカニックがいて、初めて良い走りが出来るの! 判るわね」


 私がそう言うとなんとなく納得したみたいだけど…… でも、早く走りたくてしょうがないみたいです。


 はあ…… 若いな……

スーパーフォーミュラに乗って、最初から良いタイムを出すなんて、少しは期待出来るかな! どことなくあいつに似てるかな。

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