105 タイトルの行方
第9戦鈴鹿の決勝が始まりました。開始早々から中森と杏香のバトルが凄まじいです。タイトルを取るためには、本多と杏香のワンツーフィニッシュが必要ですけど……
第9戦鈴鹿での1大会2レース制のダブルヘッダーです。
今、決勝が行われていて、トップに中森、2位に杏香、3位に本多君、4位に松島、5位に谷山の順です。
結菜は、相変わらず7位です。レースは8周目で、もうしばらくするとタイヤ交換です。
うちのチームは15周目を目処にしていますので、タイヤの準備をして交換時期を待っているところです。
「変わらずトップは中森だな」
深田GMです。
「何処に行ってたんですか」
午前の予選が終わってからGMの姿がないとは思っていたけど……
「すまん! ちょっとオーナーからの呼び出しがあったから」
「どういう事ですか!」
「あっ、今日発表…… いや、明日のレースまで頑張ってくれとオーナーから」
GMが、言いかけた発表って…… はあ、オーナーはいつも大事な時にいなくなって、戻って来たら美味しいとこを持って行くんだよな……
「GM、それよりタイヤ交換ですけど」
「あっ、うん……」
その時、山口君が言いました。
「美郷さん、中森がピットインです」
「えっ、今何LAP目なの?」
「今、14LAPです」
という事は、杏香がトップだよね……
「次、杏香をボックス!」
「本多は?」
「杏香の後です」
そう指示を出した時、中森がピットアウトして行きました。杏香に遅れる事30秒くらいだと思います。杏香は今、デグナーカーブを回ってヘアピンカーブへ向かっています。
2番手の本多君もデグナーカーブを今、松島とほぼ同時に回りました。
次、杏香がピットアウトした時、中森の前に出れるかな……
私がそう思っている時……
「小山内ピットイン!」
杏香がタイヤ交換をしている時、メインストレートを本多君と松島が通過しました。トップが本多君、2番手に松島です。
「OK、GO!」
杏香がピットアウトですが、中森がメインストレートに入りました。
杏香がコースへ戻るのと、ほぼ同時のようですが…… 先に中森が通過したその直後、杏香がコースに戻りました。
「やっぱり間に合わなかった……」
山口君がそう言いますけど……
「でも、まだチャンスはあります! それより本多君が戻って来ますよ」
私がそう言って山口君達が準備を整えた時、本多君がピットロードに……
「フルコースイエローです」
「本多ピットイン!」
えっ、何があったの? 私は何がなんだか解らなくなりました。本多君がピットロードへ入った途端フルコースイエローって……
「OK、GO!」
タイヤ交換が終わり、本多君にGOサインが出ましたけど……
「何があった!」
本多君も気になるようだけど……
「本多、行け! 今がチャンスだ」
GMにそう言われて、本多君がコースに戻った後にセーフティカーが導入されました。コースは今、フルコースイエローなので、本多君は、時速80kmで走行します。
「美郷さん、イエローの原因が解った! 西側ストレートでクラッシュだ!」
源さんからそう聞いた時、ラッキーだと思いました。タイヤ交換を済ませた後に中森とのタイム差が開きません!
でも、同時に、後続のマシーンにも差をつけることが出来ません。
「クラッシュは酷いの?」
「ああ、マシーンはコースアウトして止まっているが、破片が飛び散っているから取り除かないと……」
なるほど、普通ならレッドフラッグが出ても可笑しく無いけど、コース上の破片だけだからセーフティカーなのか……
セーフティカー導入でフルコースイエローなので、ここぞという事で、ほとんどのマシーンがピットインです。
ピットロードは、大混雑です。
「でも、セーフティカー導入時って、ピットインはOKなんですか?」
私は、他のレースで制限があるのを聞いた事があったので訊きました。
「スーパーGTとかは制限があるみたいだけど、スーパーフォーミュラは問題無いですよ!」
とそう答えたのは、翔吾さんでした。今日はうちのパドックに来ないと思っていたのに……
「翔吾さん、こんな時にパドックに居なくて良いんですか?」
山口君も迷惑に思っているのかな……
「大丈夫ですよ! 結菜もこのゴタゴタで、タイヤ交換して行きましたから」
いや、そういう事では……
そういう事を言っている時、セーフティカーがピットロードへ入って行きました。まもなくフルコースイエローも解除になるでしょう。
「フルコースイエロー解除です」
『美郷さん、スピード出して良いの?』
杏香から当たり前すぎる質問が無線でされてます。
『おまえ、あたりまえだろう! イエローが解除されたんだから』
またもや本多君が無線で揶揄っています。
「杏香、フルスロットルで優勝しなさい!」
私がそう言ったら、ピットクルーとスタッフの皆さんからは惹かれてしまいました……
『了解、優勝しますよ!』
そういう事でレース再開です。
トップは中森、2番手に杏香、3番手に本多君ですけど…… 4番手は谷山……? 6番手に結菜で7番手に松島です。
どうやらセーフティカー導入時にピットインした後、追い越し禁止だった為順位を落としたみたいです。
その後、順調にレースは進んでいたと思ったんですが……
「カーナンバー7番がスピン! コースアウトです」
カーナンバー7番って……
「あっ!」
源さんも声を出しました。
「小山内スピン!」
「杏香!」
私が声を上げた時、杏香はすぐさまコースに戻りシケインに入るとこでした。
コースアウトをしたマシーンは、本多君と杏香に抜かれた後、コースに復帰しました。そのカーナンバー7番は中森です。
「でも、何故あんなところでスピンなの?」
私は思いましたけど……
「美郷さん、あそこはマシーンがクラッシュした近くです。まだ小さな破片が残っていたんでしょう」
そう源さんが説明してくれました。
「まあ、それで中森を交わせた訳ですね!」
「うん、杏香もスピンして本多に抜かれたけどな……」
こうして波乱のレースは終了しました。
今回のレースは、偶然やラッキーが重なってうちのワンツーフィニッシュでレースが終わりました。
なんとか、年間チャンピオンも首の皮一枚で繋がっているようです。
第9戦鈴鹿の前半戦が終わりました。今回は偶然やラッキーでワンツーフィニッシュで終了する事が出来ました。あとは明日の最終戦で1位本多、2位杏香のワンツーが必要ですが、タイトルを取る事が出来るでしょうか……




