102 予選トップ争い
teamSHOWGOのGMにお願いされたけど、お断りしました。これであの狸親父も解ってくれれば良いんだけど…… 取り敢えず今は予選Q1です。
第9戦鈴鹿のダブルヘッダー予選Q1がまもなく始まります。
「杏香!」
そう言ってピットへ来たのは斎藤さんと柚月さんです。
「小山内さん、私……」
彼女がそう言い掛けたとき……
「杏香、車買ったんだって!」
柚月さんが割り込んで話して来ました。
「えっ、あっ、うん、12月に納車なんだけどね」
あれ斎藤さん何か言いたい事があったんじゃないかな、何か言いかけたよね……
「ねえ、何買ったの?」
柚月さんは興味深々だけど、斎藤さんは……
「美姫行くよ」
「えっ、もう行くの?」
柚月さんは斎藤さんに引っ張られてうちのブースの方へ行ってしまいました。
「斎藤さん、杏香に言いたい事があったんじゃない?」
私は、そう訊きました。
「うん、そんな感じだったよね……」
杏香も気付いてはいたようだけど、柚月さんが割り込んで来たからね……
「小山内、もうすぐ予選Q1が始まるぞ!」
山口君に言われて、本多君と杏香はマシーンに乗り込みピットロードを通ってコースへ出て行きました。
あれ、杏香はB組じゃなかったかな、なんだかバタバタして出て言ったけど……
本多君は今、逆バンク付近を走行しています。杏香は左右にマシーンを蛇行させながらS字コーナー付近を走っています。
「あっ、そろそろ始まるな、美郷さん、小山内に戻るように言ってもらって良いですか」
「うん、杏香はB組だよね」
「はい」
「杏香、Q1A組が始まるからボックス」
『了解』
「ねえ、どうして杏香はコースに出たの?」
私が無線でそう訊いた時、杏香がピットへ戻って来ました。私の質問はスルーかい?
「小山内さんどうだった?」
「うん、大丈夫だと思います」
山口君と杏香は何を話しているのかな……
「ねえ、どうしてB組の杏香がコースへ出たの?」
私は、もう一度訊きました。さっきスルーされたからね!
「あっ、それはですね……」
山口君はなんだか気まずそうですけど……
「タイヤの空気圧を調整しただけだよ!」
杏香がそう答えました。なんだ、だからちょっと走ってみたのね!
「本多君1回目のアタック1分37秒701です」
本多君、もうアタックしたのね! タイムも良いとこ出てるかな。
「美郷さん、本多の調子は?」
GMです。彼の事が気になるのかな……
「1回目で37秒台ですのでまあまあでしょう」
「うん、あいつもこの週末で終わりだからな」
「はい、良い結果で見送ってあげたいですね」
「本多君2回目1分36秒826です」
Q1トップです。これは行けるかな。
ここでQ1A組が終わりました。トップは本多君、2番手に松島、3番手に谷山です。
この後Q1B組が始まります。
「小山内、最初2周は様子見で」
山口君がそう言ってますけど……
「大丈夫ですよ!」
杏香は何も問題ないと自信満々です。
「うん、まあ、0.2barくらいしか抜いてはいないけど……」
珍しく山口君が心配しています。
「おーい杏香、エンジン回しているから急げよ!」
「うん、今行く」
水上君も杏香のマシーン担当になって、もうすぐ一年だね。
杏香はこの一年目のシーズンで、かなり成長出来たかな。
「それじゃ、予選行ってくるね!」
うーん、成長は出来たけど楽天的な性格はそのままだね……
Q1B組が始まりました。杏香は積極的に最初からアタックしています。山口君の指示はスルーだね……
今は第2コーナーを回ってS字コーナーから逆バンクを通ってダンロップコーナーへ向かいます。
今のところ、杏香の前には邪魔なマシーンがいないので、良いタイムがでそうです。
今、シケインを通過した杏香は最終コーナーへ向かいます。タイムは1分32秒を過ぎたくらいです。
これは行ける! 私がそう思った時、杏香がメインストレートを通過して行きました。
『ピッ』
「小山内さん1分36秒687です」
この娘はまた、とんでもない事を、本多君さえ1分36秒826なのに……
この事を知ったのかどうかは解りませんが、中森のスピードが一段と速くなったような…… そう思ったのは私だけでしょうか……
『ピッ』
「中森1分36秒698です」
うーん、取り敢えず杏香がトップですけど、中森も残り時間ギリギリでもう一度アタック出来そうです。
杏香も今、時間的に最後のアタック中です。
まあ、Q1だからそこまでムキにならなくても6位までに入れれば問題ないのですが、杏香も中森もトップ通過にこだわっているみたいです。
杏香が130Rを通過してシケインまで戻って来ました。タイムも良い調子です。
今、最終コーナーを回ってメインストレートを通過しました。
『ピッ』という音と共にモニターにタイムと順位が更新されます。
「小山内さん1分36秒685です」
今のところ杏香がB組トップですけど、中森が最後のアタックをしています。今、最終コーナーを回ってメインストレートに戻ってきました。
『ピッ』
「中森1分36秒689です」
小林さんも嬉しそうです。B組トップは杏香、2番手に中森、3番手にパンドラーがはいりました。
これで本多君も杏香も予選Q1はトップで通過しました。これはワンツー行けるかもです。
予選Q1だと言うのに杏香と中森は予選トップ争いをしています。こういうのは決勝でやれば良いのにな……




