表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様はスピード狂  作者: 赤坂秀一
第一章 teamKAEDE
10/93

10 ややこしいシステム

小山内さん初のテスト走行をするためオートポリスに来ています。小山内さん仕様にマシーンのセッティングしないとだけど、シートもアクセル、ブレーキペダルもかなりの調整が必要です。しかし、クラッチペダルが無いとは……

 私達は、パドックから部屋へ戻って来ました。


美郷(みさと)さん、ニューマシーン凄かったですね!」


「うん、そうだね……」


「でも、クラッチペダルが無いのは美郷さん知ってましたか?」


「ううん」


 特殊だとは聞いていたけど……


 いや、それより何故、この()は私と同じ部屋なの? 本多(ほんだ)君は一部屋もらっていたと思うけど……


「ところで小山内(おさない)さん、レーシングスーツとヘルメットは?」


「あっ、持って来てますよ」


 彼女は、ちょっと大きめのバッグの中からピンク色のヘルメットと白っぽいスーツを出しました。


 この大きいバッグの中にあったのか……


「取り敢えず、ヘルメットだけでもスポンサーのステッカーを貼らないとね」


 私もスポンサーのステッカーをバッグの中から取り出しメットに合わせますけど……


「あれ、これだと斜めになっちゃうね、真っ直ぐにするとシワになっちゃいそう……」


「あっ、そういう貼り方も有りかもですよ!」


「いや、それは……」


 それは絶対に無いでしょう…… スポンサーさんに申し訳ないから…… うーん、本多君に訊いてみようかな、私は本多君に連絡しました。すると、貼りに来てくれるようです。


『コンコン』


 あっ、来たみたいです。私はドアを開けて対応しますけど……


「美郷さん! あの、入っても……」


 あれ、どうしたのかな? いつもはそんな他人行儀じゃないでしょう!


「いいよ、どうしたの?」


「いや、あの、服が、その……」


 あっ、私達は部屋着に着替えていたから…… でも、そんなに可笑しくないと思うけど……


「あっ、これ? 長袖のシャツにレギンスなんだけど、可愛いでしょう! お気に入りの部屋着なの」


「はあ…… 美郷さんの私服は見た事なかったから」


 でも、私服を見たからって、そんなに照れなくても……


「本多さん、これなんですけど」


 小山内さんもピンクのメットを両手で差し出しますが……


 彼女を見た本多君は、顔が赤いです。まあ、小山内の部屋着はモコふわのパーカーとモコふわのショートパンツなんだよね……


「あの、女性って部屋では、そんな気軽な格好なんですか!」


 本多君のその言葉を聞いて私も小山内さんも笑ってしまった。


「えっ、何が可笑しいんですか!」


「本多君って、意外と初心(うぶ)なのね」


「うっ、うん…… それで何をすれば良いんですか」


 ふふ、初心というより真面目と言うべきかな……


「だから、これにステッカーを貼って欲しいんです」


 小山内さんは、プーっと頬を膨らませ、もう一度ピンクのメットを両手で差し出します。


「ほら、バイザーの上のところにHONDAのステッカーを貼りたいんだけど、斜めになっちゃうんだよね……」


 私が彼女が言わんとする事を説明しました。すると本多君は……


「ああ、ハサミありますか?」


 えっ、ハサミ?


「あるけど、どうするの?」


 ちょっと不審に思いました。私、顔に出ていないかな……


「えっと、所々に切り目を入れる事で真っ直ぐ綺麗に貼れるんですよ」


 なるほど……


「でもAraiから新しいメットが来るんじゃなかったんですか」


 本多君のその言葉に小山内さんは反応しました。


「えっ、そうなんですか? それなら私はピンクが良いんですけど……」


 そこは、やっぱり女の子だね!


「あれって、色を選ばれたはずですよね」


 そうそう、川嶋君は黄色だったかオレンジだっけかな、本多君は黒だったと思うけど……


「うん、でも、ピンクとかあったかな?」


「でも、川嶋は好き勝手に色を塗ったりシールを貼ったりしてたようだけど……」


「まあそうね、川嶋君は特に色々とイジクッテたね!」


 本多君はそのままスポンサーのステッカーを貼ってたみたいだけど……


「本多さんはどうしていたんですか?」


「僕は黒のメットにしたんだけど、スポンサーのステッカーを貼るからメットの色は目立たなくなるんだよ」


「スポンサーって結構あるんですね」


 そんな話をしながら本多君はHONDAのステッカーとKAEDEホールディングスのステッカーを貼ってくれました。まあこれで、明日のテストは格好がつくかな。


 翌日、パドックではパワーユニットのチェックと小山内さんが乗るマシーンのコクピットの微調整をしています。


「小山内さん、アクセル、ブレーキの踏み心地はどうかな」


 山口君が小山内さんの相手をしてくれてるようです。


「うーん、もう少し手前に出来ますか?」


「それならステアリングの下にレバーがあるからそれで微調整出来るよ」


「本当だ! アクセルとブレーキが手前に来た」


「どう、アクセルもブレーキも大丈夫かな」


「はい、バッチリですけど…… クラッチはどうするんですか?」


「クラッチはステアリングの裏側にある四枚のパドルだ!」


 山口君の話では左下のパドルでクラッチを切る。右下のパドルが半クラッチで左右上のパドルでギアをチェンジするらしい。用はセミオートマチックに両手で動かすクラッチを取り付けた感じだ。


「これって左右上のパドルだけで良いんじゃないですか?」


「スタートとはどうするの?」


「あっ、だからクラッチを切った状態と半クラッチのパドルがいるのか!」


「そう、スタートの時は左下でクラッチを切ってスタートボタンを押して右上でギアをlowにして左足でブレーキ、右足でアクセル、スタートと同時に左下を離して動き出したら右下を離す」


「なんだか面倒ですね!」


「まあね、これでもう大丈夫かな?」


「あっ、それとステアリングに付いている赤いボタンは何ですか?」


 赤いボタン? そんなのあったかな…… 私は側で聞いていてちょっと気になりました。


「あっ、それはオーバーテイクシステムのボタンだよ」


「オーバーテイクシステム?」


 あっ、一定時間の加速装置ね!


「うん、それはボタンを押すと一定時間だけ加速することが出来るんだ。連続使用は無理だけど最大二百秒は使えるからね」


「一回でどれくらいの時間ですか?」


「そうだな、二十秒前後ってとこかな」


「ふーん、それじゃ十回くらいは使えるって事ですよね」


「えっと、へイローの上の方、緑色のレベルが出てるでしょう。これが無くなると使えないから」


 まあ、そんなに使うもんじゃないよね! でも最終戦の時は、川嶋君と本多君がスタート直後にカーナンバー7番の両サイドをオーバーテイクを使って駆け抜けたからちょっとヒャッとしたけどね。まあ、彼女はそんな事はしないと思うけどね。

シートの設定と調整も終わりました。いよいよ、テスト走行スタートです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ