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感動JAPAN

作者: 木こる

「皆様こんばんは、感動JAPANのお時間がやってまいりました

 当番組では毎週、お呼びするゲストの方々から

 心温まるエピソードを聞かせていただくという構成になっております

 司会進行はこの私、川崎光一が務めさせていただきます

 そして本日のゲストはこの方です

 50年もの長い年月を郵便配達に捧げ、

 地元の人々からは『ミスター親切さん』と呼ばれ慕われている、

 斉藤馳夫さんにお越しいただきました

 それでは斉藤さん、本日はよろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


「いやあ、それにしても50年ですか……すごいですね

 半世紀ですよ半世紀

 それだけの期間を1つの仕事に集中できるなんて、

 やはり職人の方々は尊敬しますよ」


「そんな、お恥ずかしい

 私としては、そんなに仕事に集中していたという実感はないですねえ

 若い頃にウォークマンを聴きながら運転して、子供を撥ねたことがあります」


「ええっ!?

 それは大変ですね……

 その時の詳細を話してもらっても?」


「話したくありませんねえ」


「そうですか……今の部分はカットさせてもらいますね

 ……では気を取り直して、本題に入りましょうか」


「ええ、人が死んだなんて暗い話題は番組の趣旨に反しますからね」


「やっぱりお聞かせ願います」


「それはできませんねえ

 遺族から口止めされていますので」


「では今のやり取りは全部カットの方向でよろしいですね?」


「はい、お願いします」


「……さて、では斉藤さんが郵便局員になった

 きっかけを教えていただけますか?」


「覚えてませんねえ

 なにせ50年も昔のことですから……

 たぶん、(ラク)そうだったからじゃないですか?

 当時は名前さえ書ければ誰でも公務員になれた時代ですから」


「今のやり取りもカットしますね」


「はい」


「斉藤さんには入社当初から親交のある方がいらっしゃるそうですね?

 その方に関するエピソードを話していただけますか?」


「話せませんねえ

 郵便局員には守秘義務がありますので……

 たとえ相手が警察官であっても、令状がなければ個人情報を明かせません」


「そうなんですね

 では、話せる範囲内で何かありませんか?」


「何もないですねえ

 配達員という職業柄、どうしても人と人との繋がりの話になってしまうので、

 そういったところから個人情報が特定される恐れがあるんです」


「そういった話をしてもらう番組なんですけどね

 ……では斉藤さんは何か趣味とかありますか?」


「特にありませんねえ

 数年前にウォーキングを試してみましたが、長続きしなかったんですよ」


「そうなんですかー

 ちなみに好きな食べ物はなんですか?」


「それは教えられませんねえ」


「斉藤さん

 本日は遠い所をわざわざご足労いただき、ありがとうございました」


「いえいえ」

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