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勇者、子供が産まれる

あれから、どのくらい経っただろうか……?

男達に捕まってから数ヶ月くらい経ったかもしれない。

来る日も来る日も何度も犯され、体液を中に出されてきた……

そして今、男達の隙を見て所々破れている自分の服を着て、なんとか逃げ出すことができた。

食事だけは与えては貰ってたけど、身体と心の方はもうガタガタでボロボロになってしまっていた……。

そして、私の身体には一つの変化が起きてしまっていた……。


「……。」


私はそっと、自分のお腹へと手を当てる……。

見た目ではまだ分からないけど、私は

妊娠してしまっていた……。

相手はあの男達の誰かということになる。


「取り敢えず、この町から出よう……。」


泣き出しそうになるのを必死に堪え、今はただこの町から離れ、どこかで一人静かに暮らすことを考えた。


(そして、この町を出たら思いっきり泣こう……。)


そう思いながら歩いていると……。


「リーナ……?リーナじゃないっ!急に姿が見えなくなったけど一体何があったのっ!?」


突然声を掛けられた。あの男達かと思い振り向くと、ティアお姉ちゃんの姿があった。


「お姉ちゃん……おねえちゃーーん……っ!!」


ティアお姉ちゃんの姿を見たら堪えていたものが一気に堰を切ったかのように込み上げ、止まらなくなっていた。

そして、今までの男達に捉えられ、散々身体を弄ばれ、犯されていたこと、そして妊娠してしまったことをティアお姉ちゃんに打ち明けた。


「そう……。それは酷い目に合ってたんだね……。」


何度も嗚咽を漏らし、子供のように泣きじゃくる私をティアお姉ちゃんは優しく抱きしめてくれた。

この暖かさが心に染み渡る……。私の目からは未だ涙が流れ続けていた。まるでこの暖かさを取り入れる代わりにこれまでの辛さを、悲しみを押し出すかのように……。


「それで、リーナはこの後どうするの?」


「私はもうこの町に居たくないからどこかで一人暮らそうと思う……。」


「そんな赤ちゃんのいる身体で無理をしたら大変なことになるわ……。」


ティアお姉ちゃんはそう言いながら顔に手を当て、何かを思案していた。


「そうだ。この町から少し離れたところに私が監理している小屋があるの。一先ず赤ちゃんが産まれるまでそこで暮らしてはどうかしら?」


「で、でも……。」


「それに、食べ物も必要でしょ?赤ちゃんの分の食事もいるのよ?それに誰もいないところで一人暮らしてたら何かあったときに本当に大変なことになるわ。」


「それはそうかもだけど……。」


「その点、私が監理している小屋なら食べ物くらい私が用意してあげれるし。」


「でも、私お金持ってないし……。」


お金はあるのはあったけど、装備も含め男達に殆ど取られ、売られてしまっていた……。

残ったのはこのボロボロに破れた服と魔王を倒した神剣のみ……。

どうやらこの神剣は勇者である私にしか持つことが出来ないらしく男達ではどうすることも出来なかった。


「お金は気にしなくていいから、ね♪」


「うん……分かった……。ありがとうティアお姉ちゃん……。」


お姉ちゃんの優しさに触れ、私の目からはまた涙がこぼれ落ちていた……。


「ほら、リーナ泣かないの。勇者なんでしょ?」


お姉ちゃんは優しく私の手を引きながらお姉ちゃんが管理しているという小屋へと案内してくれた。



「ここよ。ここが私の監理している小屋よ。」


町から出て少し言った所に小さめな小屋が建っていた。小屋の横には小さな井戸まで付いていた。

中に入ると一人で暮らすには十分な広さで、台所のほか、ベッドやお風呂も付いている。


「お姉ちゃん、本当にここを私が使ってもいいの……?」


「勿論よ。食べ物は定期的に持ってきてあげるね。」


「ありがとう……お姉ちゃん……。」


また泣きそうになってくる……。


「取り敢えず、私は今日の分の食べ物とあなたの服を持ってくるからリーナはこの小屋で待ってて。」


お姉ちゃんはそう言うと、町からへと戻り私の食べ物と服を取りに行ってくれた。



あれから月日が経ち、私のお腹は段々と大きくなってきた。

身の回りのことがしにくくなると、ティアお姉ちゃんが助けてくれていた。

時折お姉ちゃんは大きくなる私のお腹に手を当て、子供の誕生を待ち望んでくれているようだった。

私もこのお腹の子の父親が誰であろうと関係ない。ただ、私のところに来てくれたこの子が本当に愛おしかった。

そっと自分のお腹に手を当て撫でると時折子供がお腹を蹴っているのを感じ、より一層愛しさと嬉しさが込み上げてくる。

そして、ついに子供が産まれ、ティアお姉ちゃんはこの子の誕生を喜んでくれていた。




それから数ヶ月後……。


「それじゃ、私はきょうはこれで帰るけどリーナ本当に大丈夫……?」


「うん、今日もありがとうティアお姉ちゃん。」


「いえいえ。じゃあ、また明日来るね♪」


お姉ちゃんはそう言うと町へと戻っていった。


「それにしても、いつまでもお姉ちゃんに甘えている訳にはいかないよね……。」


子供が産まれてから数ヶ月経ち、体力も完全ではないけど戻ってきた。

もう少し体力が戻ってこの子が落ち着いてきたらこの小屋を出て、どこか人里離れたところでヒッソリとこの子と暮らそう……。

明日お姉ちゃんが来たら話してみようかな。また心配されるかも知れないけど、いつまでも甘えている訳にはいかないから……。

そう思いながら夜は更けていったのだった……。

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