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注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
最初、恋愛にしようと思ってたんですよ。
その名残が所々にあったり、なかったり。
「なぁ〜君。三緒殿の事は書かないのか?とゆか嫌いなのか?」
とある神社の長椅子に腰掛けて、私は膝下を見下ろした。ふわふわの短髪、ちょっとツリ目がちの童顔。男体化した三狐神様が、ご機嫌にも腿に頭を乗せている。
い……何時もの事。何時もの事。他意はない。目標決めたら一直線。人の言葉に耳を貸さず、ただ自らの信念だけを貫通させる。生まれも育ちも神な方々は基本そう。つまり、そうしたいからしている。
神々の交流を空想小説として残して居るのだが、どうやらその事について話しているらしい。頻繁に登場するのは三狐神様や梅香の君。そして九曜様。だがしかし、書かない、書けないお方もいらっしゃる。
脳裏に過ぎるのは、あの綺麗な顏の麗人。ずっと見続けると理性が飛びそうな程の美貌のお方。その上、割と昔から私に好意的なお方……。ではあるのだが……。
「き……嫌いな訳無いじゃ無いですか!! 私が向こうに居た時から陰ながら見守って下さったお方ですよ。その……ただ」
主祭神ばかりに目が行って、相殿である三緒様の存在に気がついたのはかなり後。あれから……三年? いや、四年? 初めて会った時も加算するともっと長いかも知れない……。そんな存在を蔑ろにしまくった私が、今からお願いするのって、相当虫が良すぎるのでは?
困惑を悟られ無いように、さり気なく三狐神様の髪を撫でる。気を良くした彼は苦しゅうない、と言う様に、顎下を擽る。あ、これ以上は不味いかも。私は撫でる手を止めて、目線を逸らした。
「彼は健気にも君の事を思っていると言うのに〜」
「それは……そうなんですけど。今日も夢に出て下さいましたし」
三緒様の存在を知って数ヶ月後。その事をお喜びになさっているらしい。時折、滑らかに光沢を放つ白蛇の姿で夢に出る。さり気なく横切る時もあれば、干渉して来る事もある。今日は体を触らせて戴いた。人型では無きにせよ、美しい事に変わりは無かった。
思い上がりでなければ、『出しても構わない』という事だろう。思い上がりでなければ。
「書くといいゾ!!」
三狐神様は突然起き上がって、首の後ろに手をかける。綺麗なご尊顔がキス出来そうな距離まで近付いた。硬直する私を揶揄う様に、ニヨニヨ笑っている。
「か……揶揄わ無いで下さい。直ぐに図に乗るので」
「半分は本気だぜ?」
もう!! 三狐神様は!!
と言う訳で、三緒様の元へ。白蛇が夢に出たら呼ばれたと思って、顔を出すようにしている。勿論大変歓迎にして下さる。優しく接して下さるのだが、目を覆いたくなる程のご尊顔を近付けられると、どうしようも無くなって、足早に去ってしまう。きっと、ご不快に思われている事だろう。
一礼も早々に、鳥居を潜ると彼はいらっしゃった。純白の髪を踝付近まで伸ばし、服から覗く白魚の肌を惜しみなく太陽に晒す。浅葱の双眸が此方を捉えると、にっこりと微笑んで歩み寄ってくれた。
「今日はお呼ばれした気がして来たんですよ。思い上がりだったら、失礼しますね」
「いや、嬉しいよ」
するすると頭を撫でた後、頬を滑る。親指の第一関節を使って、顎を上げられると嫌でも目が合う。綺麗な浅葱の双眸と陶器の肌が目を潰しにかかる。相変わらずの顏だった。耐えきれず目を瞑ると、話題を逸らす。
「あの、今日、三狐神様から……」
氷のような空気が肌を刺す。怒っていらっしゃる。不興を買ったのは明白であった。しかし心当たりが多過ぎて、何処から詫びて良いのか分からない。
主祭神ばかりに目を取られた事。何時も光の顏に耐えられずに後を去った事。今だって禄に目を合わせられ無い事。駄目だ。地雷が多過ぎる。
一人焦る私に対し、彼は呆れた様に溜息をつく。
「昔からそうだ。何時も私以外の祭神ばかりを崇めてばかりで。近寄ったら直ぐに逃げる。最近は会いたがって居たから、少し期待して居たのだけどね」
「あ、あの……」
「もっと私を見て欲しい。宙殿に相談したいのも分かる。三狐神殿に縋りたいのも分かる。君が救われたと思っている神々だから当然だ。でも、私も君を見ていたし、縁結びに力を貸して居たんだよ?」
目を開く。寂しげな双眸がじっと此方を見据えていて。居た堪れなくなった。私なんて矮小な生き物、伊吹一つで容易く殺せるのに。
「あの……」
「うん」
「次、次です。貴方様を描かせて下さいまし」
結局、出来る御礼なんて、たかが知れてる。貴方様方から戴いた挿話残して、誰かの記憶に留めて置くことしか出来ない。これが私が出来る最大の信仰だった。だから、思い上がりじゃないのならば。
「歓迎するよ」
三緒様は涼しげに笑うと、姿を溶かして消え去った。
三緒様 満を持して登場です。
モデルとなった神様がいらっしゃいます。故の敬称。
眉目秀麗で有名。
怒らせると、すげぇ怖い。
なお、この時期に怒らせては絶対いけないと思ってる作者。
主人公ちゃんが『遠くに居た時』から、相殿として見守って来た一神。
しかし、主人公ちゃんが主祭神しか見ていなかった為、
三緒様がそこまで強くアピールをしなかった為、
気が付かれなかった。
『こっちに来て』からは積極的に縁を結んで居るが、今度は相殿の方が注目されてしまった。
なお、その相殿とは色々あって主人公ちゃん疎遠。
その後は切られた縁を全力で自分と結んでいる。
でも気がついてくれないので、今度は夢に出ることにした。
姿が白蛇なのは、『蛇でも人でも美しい事に変わりない』と叫ばれてから。
(外見に靡かれただけじゃない……。とそわっとして欲しいです。あと考察するとしたら、『逃げない』から。ほら、『触らせて貰った』って描写があるじゃないですか)
少しでも興味を持ってくれると、推しの概念をさり気なく目に入るようにしてる。
こうした事に苦を覚えるような方ではないけれど、ずっと袖にされるとやっぱり傷つくだろうなぁと。
(好きな人が出来たら一生懸命、自ら通うタイプ。三狐神様は『惚れた。お前が来い。拒否権? ある訳無いだろうよ。完』というタイプ。全然違いますね〜)
近くに居るならずっと自分のことを見てて欲しいタイプだと思ってます。スマホ弄った瞬間に、ちょっかい掛けそうですね。
健気で一途。けれども報われない。まるで人魚姫。
※相殿とは
メインで祀られている神様を主祭神。
そのメインで祀られている神様に縁ある神様、土地に縁がある神様を共に祀る事があります。
これを相殿と言います。